14.理不尽な運命
更新遅れてすみません。
最近バタバタしちゃってて
なかなか書けないんですよね~。
Side~Artemis~
眼を覚ますと、
そこは白い世界だった。
「ここはどこ?」
「ここは天界さ。」
目の前には顔が異常なほど整った男がいた。
「おめでとう新たな神として生を受けたものよ!」
年の頃は外見は二十歳くらいだが、
(私は知ってる。この人はとても永い時を過ごした神だ。)
理屈ではなく感覚でしっている。そう、この男は、
「初めまして最高神様」
「ああ!初めまして。どうやらちゃんと言語能力は機能してるみたいだね。」
最高神はこう続けた。
「今日から君の名前はアルテミスだ!よろしくアルテミス!」
「はい。よろしくお願いします」
こうしてアルテミスは誕生した。
あれからとても長い時間が過ぎた。
その間、私ことアルテミスはというと、
(暇過ぎて死にそうだわ)
と感じていた。
神というのは世界の管理が主な仕事だ。
中でも私は2つの世界の担当だった。
1つは科学が発達した『地球』という世界。
もう1つは魔法が発達した『ゼロ』という世界だ。
私の他にも複数の神々が担当しているが、基本的には私が管理している。
地球のゲームというのは面白いが、無限と大差無い時を生きる神はすぐに飽きてしまった。
ゼロの魔法も同様である。
(なにか面白い事起きないかしら?)
神は今日も退屈な日々を過ごしていた。
するとそこへ、
「やぁ!元気かいアルテミス!」
突然最高神が現れた。
その姿は私が生まれたときから何も変わっていなかった。
私は慌てて姿勢を正し、
「元気にございます。最高神様」
「それはよかった。ところで今日はアルテミスの退屈が紛れるかもしれないことを話しに来たよ」
なんだろうか。
「予言があったんだよ。それもこのボクにさ!」
「最高神様が予言?星が100個ほど消滅でもするのですか?」
神は階級によって予言のスケールが変わってくる。
なので最高神が予言など滅多にないことだ。
アルテミスがそう考えるのも無理のない話だ。
「それがね~違うみたいだよ!」
ではなんだろうか?
「君の世界、地球でこれより一人の人間が産まれる。
予言はその人間に関することなんだよ」
「……え?」
信じられないことだ。
地球は破滅するのだろうか?
最高神が予言した人間など想像したくない。
その存在は天変地異よりも厄介なものだ。
あるいは周りの星たちもろとも破滅させられるかもしれない。
そんなレベルだ。
「人間以外にさせることは出来ないのでしょうか?」
「やったさ。それでも人間以下の生物にすることは不可能だったよ。でもね、それ以上の存在にさせることはできるのさ。例えば精霊、例えば竜、例えば……」
最高神はそこで複雑な顔をしてこう言った。
「神……とかね。」
…………は?
「それはおかしいです!神とは人々の思いや信仰が強いと生まれるものです!
なのに神が先に生まれるなんて、そんな話聞いたこともありません!」
そうだ。神とは信仰によって生まれるもの。
それでは順序がおかしい。
「そんな例外は最初からいた神。最高神様くらいのもので……まさか!?」
「たぶん君が予想した通りだよ。その子が神になったとしたら……ボククラスだろうね」
ありえない。そんなことは絶対に。
この今ある世界全てを創った神と同等などと、
そんなことはあってはならない。
「さっきもいった通り、その子は人間以上の存在には全てなれるよ。
でもね、竜になったなら竜神、精霊になったなら精霊神、悪魔になったなら魔神、というかんじで全て語尾に神が入るのさ」
「本当ですか!?」
「本当だとも。ボクは消そうともしたんだよ?でも何故か消えないんだ。それほど霊格が高いんだよ」
私はそんな奴をどうすればいいのだろうか?
「君に頼みたいのはその子の監視だよ。この最高神であるボクからの理不尽な運命をもはね除けた子、『佐藤 黎』のだよ。どうだい?退屈はしないだろう?」
何を言ってるのだろう?
下手したら私よりも霊格が高いのだ。
監視なんて冗談じゃない。
けれど、そんな厄介者を果たしてほうっておいてよいのだろうか?
否、誰かがやらねばならない。
ならば管理者たる私がやるべきだろう。
やろう。
そうだ。イレギュラーは早々に排除してしまおう。
そうすれば心配もなくなる。
そうしよう。
「分かりました。必ずややり遂げてみせましょう」
「よろしくね。あっ。もちろん彼、『佐藤 黎』の力は封印するつもりだよ。
消すことは出来ないけど、封印くらいは出来るはずだから。もっとも、彼は結局天才にはなるだろうさ」
「ありがとうございます」
「ああ。よろしくお願いするよ」
そう言って最高神は姿を消した。
「申し訳ないけど、世界のために消えてもらうわよ」
アルテミスは面倒臭げにそう言った。
あれから数百年後。
地球から異常な霊圧を天界にいるアルテミスは感じとった。
「これは……ついにきたのね」
しばらくすると霊圧が感じられなくなった。
おそらく最高神様が封印を施したのだろう。
「さてと。監視を始めましょうか」
その日からアルテミスの『佐藤 黎』監視が始まった。
数日後。
「嘘……どうして?……」
アルテミスは驚愕していた。
何故なら、彼にかけたはずの呪いがすべて効かなかったからだ。
「天界でも上位の霊格をもつ私の呪いをすべて抵抗したっていうの!?」
天界の序列は
最高神>上位神>中位神>下位神>大天使>天使
となっている。
序列はその神がもつ霊格で決まり、霊格が高いものほど序列は高い。
呪いは霊格によってかけられる強さが変わり、霊格が高い者ほど
呪いに対する抵抗力と呪いをかける力が強くなる。
アルテミスは上位神であり、上位神の中でも霊格が高い方だ。
そのアルテミスの呪いを抵抗するなど、そんなことができるのは最高神と一部の上位神くらいだ。
悔しさが込み上げる。
だが諦めるしかない。
思えば最高神の理不尽な運命をもはね除けたのだ。
私が敵う相手ではなかった。
黎は穏やかに眠っていた。
あれから一年がたった。
彼は一歳になって、家族に誕生日を祝って……
……もらえなかった。
彼は今日までずっと生きるための最低限の食事と排泄の処理だけをされてこの日をむかえた。
食事を与える時の母親は無表情で、そこには一切の愛情が無いということは明らかだった。
食事や排泄以外に両親が彼の部屋を訪れることはなかった。
つまり彼は育児放棄されていた。
(私は人間のこういうところが嫌いなのよ!)
そこでアルテミスはふと気付いた。
(私だって彼を消そうとした。あの両親と同じではないか?)
アルテミスは自分が少し嫌になった。
黎は5歳になった。
相変わらず両親は愛情を注ぐことをしなかった。
それに加えて、虐待をし始めたのだ。
父親から腕にタバコを押し付けられ、腹を殴られ、顔を蹴られていた。
母親は何も無いかのようにテレビを見ている。
(なんてひどいことを!)
黎は泣き叫んでいなかった。
痛みにもう慣れてしまったのか、悲鳴すらあげず。瞳は焦点があっていないかのように虚ろだった。
致命傷になるところのみをガードしていた。
それがまた父親の気にさわったのか、
行為はだんだんとエスカレートしていった。
そしていつしか、父親は手加減をしなくなった。
腹を本気で殴った。顔を本気で蹴り飛ばし、腕を踏みつけた。
当然、5歳児がそれに耐えられる筈もなく、
ついに腕が折れると同時に、黎は絶叫した。
母親はテレビを見続けていた。
父親は満足したのか、部屋を出ていった。
満身創痍の黎は折れた腕をプラプラさせながら家を出たところで力尽きて倒れた。
通行人がそれを発見し救急車を呼び、黎は一命をとりとめた。
アルテミスは激怒した。
(こんな人間が私の星で生きることは許さない!)
アルテミスは黎の両親を呪った。
黎の両親はその日家を出ると雷が直撃して死んだ。
そして黎は両親の遺産を受け継ぎ、孤児院に引き取られた。
黎は15歳になった。
彼は感情が豊かな人物になった。
愛情を注がれず、あんなにも暴力をふるわれ、
理不尽に虐げられてきたにも関わらずだ。
彼はよく笑い、よくしゃべり、人の痛みがわかる優しい人間に育った。
あれだけのことをされたのに真っ直ぐに育ったのだ。
だからなのか、
(うふふ。彼の周りの人はみんな笑ってるわね)
そう、彼の周りの人は常に笑顔だ。
彼がそうさせている。
私さえも笑顔にさせてしまうのだ。
私は監視という任務をすっかり忘れ、
いつしか彼に惹かれていった。
神を惚れさせるほどの不思議な魅力が彼にはあった。
アルテミスは決意した。
(私が彼の生涯を見届けてやるわ!)
私は初めて人間に興味を持ち、初めて恋をした。
あれから5年。
彼は20歳になった。
そして2年前からスタントマンというのになって働いている。
これがなかなかおもしろい。
アルテミスは視点をどこにでも変更できるので、観客視点になることもできた。
今までゲーム以外の娯楽に興味を引かれなかったが、
いやはやまだまだ人間は捨てたものじゃないと思った。
(今日は何を見せてくれるのかしら?)
といつものように彼を見守っていると、
「やあ!久しぶりだね。アルテミス」
と背後から声が聞こえた。
振り返ると顔が異常に整った男が一人いた。
最高神だった。
「お久し振りです。最高神様」
「うんうん。監視の任務ご苦労様」
そして最高神はこう続けた。
「『佐藤 黎』についてのことだけど……」
嫌な予感がした。
「彼には死んでもらうことになった」
予感は的中した。
「なぜでしょうか?」
アルテミスは表面上、冷静に問うた。
内面は焦りすぎてとんでもないことになっているが。
すると最高神は
「彼の霊格に星が耐えらなくなってきている。このままだと星が潰れるからだよ」
気づいていた。彼の霊格がいまだに成長していることに。
霊格が高くなると、魔力が異常に高まる。
普通、霊格は成長しない。
だが、黎の霊格はいまだに成長をし続けている。
そして種族によっては霊格が収まらないこともある。
収まらない場合、魔力が制御できなくなり、常に魔力を放出し続けてしまう。
そして地球には魔力がない。
それは星が魔力に耐えられないからだ。
つまり、神レベルの魔力を受ければ耐性のない地球は重みで潰れてしまうのだ。
「でも彼は殺せません!現に最高神様の呪いをもはね除けました!」
そうだ。
黎の抵抗力は最高神様をも上回るのだ。
だから殺せない。
はずだった。
「ボクが直接出向くさ」
アルテミスはこの一言ですべてを理解した。
今回の最高神は本気だと。
彼が滅ぶのは避けられないのだと。
最高神は天界よりも自分の作り出した世界のほうが力が強まるのだ。
その霊格は今の黎を越えるが微々たるもので、黎に通用するかは分からない。
だが、ものを使うとなれば話はかわってくる。
つまり物理的に殺すのだ。
神様が創った武器がある。
そういった武器はものすごく強力で、そういったものは主に神同士の争いに使われる。
とくに最高神が創ったものなどは星が滅ぶほど強力だ。
それを使うということは、今まで積極的に黎を排除しようとしなかった最高神が本気を出すことを意味する。
「実行は明日。君にも協力してもらうよ」
最高神様は無慈悲に告げる。
「じゃあ明日ね」
最高神様は去ろうとする。
「待ってください!」
考えるより先に言葉が出ていた。
彼を失わせてなるものかと思って、
彼のことを想って、
そうだ私は決意したんだ。
彼の生涯を見届けてやると。
「なんだい?」
最高神様が聞いてくる。
私は思いきって言った。
「彼を『ゼロ』へ転生させてもよろしいでしょうか?」
最高神様は珍しく驚愕していた。
「……驚いたね。人に興味が無かったアルテミスがまさかそんなことを言うなんてね。
それほどまでに彼を気に入ったのかい?」
私は顔を赤らめて
「……はい」
と小さく返事をした。
「ぷっ……くっ……ふははははは!!そっかそっか!そこまでか!これは本気で驚いたね。長生きはするものだ!ふはは。」
最高神様は心から笑っているようだ。
ますます顔が赤くなる。
「良いよ!君がそこまで言うならね。ただし……」
一度最高神様は言葉を区切ってニヤッと笑った。
「幸せになりなよ!」
ボンッ!と音が聞こえそうなくらい顔が赤くなった。
「ふははは!また明日ね」
そういい残して最高神様は今度こそ消えた。
翌日、
私は幼い女の子を装って交差点に居た。
彼を殺すために。
罪悪感で胸が潰れそうだった。
そこへ、何も知らない彼がやって来た。
(ごめんね)
心の中で謝ると、私は歩きだした。
そこへ最高神様が創ったトラックがタイミングよく来た。
優しい彼は何も疑わずに私を突き飛ばし、助けようとした。
だが、
最高神の仕掛けにより、彼は何も無いところで躓き、私だけを突き飛ばしてトラックに引かれ、
この世を去った。
そして、私は天界に彼を誘い、
誰もいないと思っている彼に、
アルテミスは涙を拭きながら、
「居るわよここに」
と第一声を放った。
「そんなことより、あなたの勇気に私思わず感激してしまったわ!」
私は嘘をつく。
「まさかあそこで自分の身を顧みずに女の子を助けに行くなんてね。まぁあなたは死んでしまったけれども・・・。」
「やっぱ僕って死んじゃったんですか?」
「ええ。それはもう、トラックに激突して木っ端微塵に。あぁ女の子は無事だから安心して良いわよ♪」
「前半はあんまし聞きたくなかったですよ!?でもよかったぁ~無事で。」
やっぱり彼は優しい。
「うふふっ♪さてここからが本題よ!」
「本題?まさか!?」
彼には察しがついてるようだ。
(そういえばそういうのに憧れてたわね)
「うふふっ。そう!そのまさかよ!」
私は勿体ぶった言い方をした。
「あなたにご褒美として異世界転生の権利をあげるわ!!!」
「……」
あれ?彼の反応が無い。
もしかして変な目でみられてる!?
だったら訂正しないと!
すると、
「よっしゃああああァアアアっっ!!」
「異世界転生って剣と魔法の世界ですよね!そうですよね!てかそうでなきゃ!いやそうでしょう!ステータス機能とかありますか?食べ物は美味しいですか?文明はどの程度発達してますか?ダンジョンはありますか?あっ!かわいい女の子とかたくさんいますか?あとあと・・」
よかった。変に見られてなかった。
じゃなくて
「うるさいっ!!!」べしっ!
「痛ったああーーー。」
しまった!ついあたまを叩いてしまった。
軽くだったから大丈夫よね?
「まったく次から次へと質問ばかり。だいたい、質問する前に自己紹介がさきでしょう?」
「じゃあまずは私から自己紹介を始めるわよ。
初めまして。さっきも言ったけど私は神よ。
そして名前は・・・そうね、アルとでも呼んで頂戴。
あっそれと敬語とかいらないからね」
本当は初めましてじゃない。胸が痛い。
「あ~さっきはごめんなさい!いきなり質問責めは失礼でした…だったね。僕の名前は佐藤 黎。まぁそんなに特徴の無いいたって普通の20歳さ。強いて言えば特技があるけどね。」
彼は恥ずかしそうに言った。
何も恥ずかしがることなんてないのに。
むしろ誇っていいくらいだ。
あなたの優しさとひたむきさを。
「ええ。知ってるわよ」
そう。私はずっとずっと前から知っている。
愛しい愛しいあなたのことを。
下手したらあなたよりもあなたを知っている。
ずっと前から想っている。
色々な感情が爆発しそうだ。
愛しい、楽しい、緊張、興奮、罪悪感、
その他諸々。
しかし楽しい時間は過ぎ去っていく。
……途中寝てしまったが、
「はいはい。うふふっ。それじゃそろそろとばすわよ!」
もう時間か~。もっと話したかったわ。
「分かった!短い間だったけどアルには色々お世話になった!本当にありがとう!他の神々にもよろしく伝えておいて!」
こんな時にも感謝を忘れないなんて本当に良い子だわ。
「分かったわ!それじゃあレイ・サトウ!あなたの2度目の人生に幸多いことを私は天界より願っているわ。ゲートオープン!」
(本当に心から願っているわ……私の……)
「ありがとう!またね!」
(想い人。愛しているわ。いつまでも……。)
そう言い残してレイはゲートに飛び込んでいった。
「行っちゃったわね。」
短かったわね。楽しい時は。
「お主が寂しがるなどめずらしいのぅ。あの小僧を余程気に入ったのじゃな、アルテミスや?」
私と同じ上位神であるポセイドンが現れて言った。
「ええ。・・・・・」
(寂しいわね。)
しばらくポセイドンと雑談し、
「さて、私はまだ仕事が残ってるから。じゃあね」
「ああ!またの」
オリオンが消えると、私は彼の転生先の器を設定することにした。
「種族はランダムでいいわね。
性別はもちろん男の子。
女の子でも愛せないことはないけれど、
子供は欲しいもの。
顔は私好みの年上を悩殺する超美少年でいいわね。
これでよしっと!ステータスオープン」
転生先のステータスを開いた。
レイ・ヴァン・アイブリンガー(佐藤 黎) 半竜人
Lv. 1 男 ―歳
ボーナスポイント;100000
称号;元天才軽業師 最高神に封印されし者 月の女神の想い人 竜王の孫 転生者 剣聖の息子
職業;―
HP MP:500000/500000
STR
DEF
VIT
INT
DEX
AGI
スキル:
軽業Lv. 4
殺陣Lv. 3
片手剣術Lv. 2
両手剣術Lv.1
棒術Lv. 1
拳闘Lv. 3
バッシブスキル:
竜の成長補正
身体強化Lv.3
成長限界突破
ユニークスキル:
魔剣創成
水氷魔法
竜化
半竜人か。
いいわね。これでいきましょう!
それにしても、ボーナスポイントってその人の霊格で決まるのよ。
封印状態でこれってすごいわね!
100000 なんて私ですら80000よ!
それはともかく、
(最高神に封印されし者はまずいわね。消しておきましょう。)
『最高神に封印されし者』を消した。
そして、
「やっぱり私、お友達から始めたいわ!」
月の女神の想い人→月の女神の友に変更した。
変なところで律儀なアルテミスであった。
そして女神との不思議な邂逅は幕を閉じた。
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