12.死闘乱舞
遅くなりました!すみません!
色々と更新しましたので少しは見やすくなったと思います。
次の依頼は孤児院の子守りだ。
といっても顔見知りだから楽なのだが。
いつも通り一緒に遊んでれば大丈夫でしょ!
というわけで来ました教会。
ミリアいるかな~?
実はミリアとレイシスにパーティーを組んで欲しいと言われたが断った。
パーティーを組むと基本的に経験値や報酬は山分けとなる。
つまりランクが自分より低い冒険者と組んでも損になるだけなのだ。
なので大抵は同ランクで組むのがセオリーだ。
ミリアはCランクなので報酬が高い。
なのでお金を稼ぐという目的なら一人の方が効率的なのだ。
というのも理由の1つであるが、
ぶっちゃけ一人の方が気が楽で良いのだ。
もちろんそのうちパーティーは組むつもりだが、
学園を卒業してからで良いだろう。
もしかしたら学園で出会いがあるかもだし。
そんなことを考えながら子守りを始めて三時間。
12時の鐘がなる。
この世界には時計が存在する。
1日も24時間で地球と一緒だ。
月の数えかたは1の月、2の月、3の月・・・12の月がそれぞれそのまま1月、2月、3月・・・12月と同じである。
日にちは30日で数えかたは、1月1日なら1の月の1と数える。
鐘は朝の6時から六時間間隔でなる。
今はお昼の鐘だ。
おっと、シスターが来た。
「お疲れ様。いつもありがと」
「今日は依頼ですので」
「それでもありがとう」
シスターから依頼完了のサインと感謝を貰って僕は次の依頼へ向かう。
ミリアは居なかった。残念だ。
薬草採取しに森へやってきた。
ミリアと出会った思い出深い森だ。
名前はない。ただの森だ。
はい、しつこいね。ごめんなさい。
僕は鼻をスンスンさせて薬草独特の匂いをたぐる。
もちろん普通の人間には出来ない。
鼻の中のみを竜化させると簡単だけどね!
そんなこんなで100株くらい採取して木陰で休んでいると
(何か来るな)
気配感知に何かがひっかかり、それなりの速度でこちらに向かってくる。
それなりと感じるのはレイだけだが
そしてそれは現れた。
体長三メートルくらいの巨人と見間違えるほどの背丈、
丸太のように太く引き締まった四肢にその手に携えるのは同等の背丈ほどもあるデカイ鉄剣。
アルティメット・オーガ
Aランクモンスター、体長によってはSランクになるらしい。
(そういえばSランクの依頼にアルティメット・オーガ討伐があった気がする)
冒険者達もざわついてたっけ?よく覚えてないや!
「まぁここで会ったのも何かの縁、つーわけで」
初めてだな。こんな威圧感。
気を抜けばただではすまない。
まさに強敵。
緊張と興奮がすごい。
僕の技、試させてもらおうか!
「始めよう。命賭けの殺陣を!」
「GYAAAAAAAAA!!!!!!!」
最初に動いたのはオーガだった。
巨体に似合わない俊敏さで鉄剣を真っ直ぐ下ろしてきた。
僕は後方へとバックステップで避け、距離を取る。
鉄剣が地面へと降り下ろされ半径五メートルほどのクレーターができた。
(あいつ僕くらいSTRもってない!?)
そう。アルティメット・オーガは俗にいう脳筋だ。
全てのステータス値が高いが、中でもSTRはとんでもない。
それにレイが戦っている個体はその中でも別格の能力なのだ。
だからこそのSランクだ。
(これは油断すれば僕でも殺られる!)
改めて気を引き締め、剣聖技の縮地で距離を詰める。
オーガは驚くも、すぐに対応してくる。
僕が勢いそのまま掌打を腹目掛けて突き出すが剣を片手に持ち替えて左手で対応される。
掴まれると厄介なのですぐに引っ込め、次は相手の左腕を蹴り、上へと飛び上がった。
オーガの頭やや上で前宙し回転の勢いを乗せたまま踵を落とす!
が、オーガは蹴りによって弾かれた左腕を後ろに下げたまま片手で鉄剣を持ち上げ、頭上に構える。
(そんな無茶な体制で僕の打撃をとめられるかよ!)
踵が鉄剣に触れる瞬間、オーガがニヤリと笑った気がした。
レイは背中に悪寒が走り、足を引っ込めて距離を取ろうとしたが、
空中での姿勢はそう簡単には変えられず、そのまま降り下ろした。
オーガの全身と鉄剣を突如魔力が覆った。
(しまった!)
と思った時には遅かった。
ギャイン!と金属同士がぶつかり合ったような音がし、
レイは弾かれた。オーガは体制を整え、鉄剣で横殴りの一撃を打ってきた。
レイは咄嗟に腕を体の横で交差させ、魔力を纏わせた。
(重・・いっ!)
横に弾き飛ばされ、木に背中から激突する。
「かはっ!」
肺の空気が全て外に出た。
幸い吐血はしなかったが、咳が止まらなくなる。
なにも考えず、勘だけを頼りに転がる、
すぐ横をオーガの鉄の巨剣が降り下ろされていた。
すぐさま縮地で距離を取り、たまらず木にもたれかかった。
「ぐっ!?くっそ!」
どうやら左腕が折れていたようだ。
オーガはゆっくりとこちらを振り返る。
その顔は残虐な笑みをかたどっていた。
まるでいたぶるのを楽しんでるようだ。
(いや、事実そうだな)
オーガは完璧に楽しんでいる。
だが、
(その油断が命取りだよ!)
「確かに君は強い。だけど戦いを長引かせるのは感心しないなぁ」
「GYA??」
「だってほら」
僕は無事な片手を上げる。
天に向けて。
「奥の手とか使ってくるかもでしょ?」
今度は僕がニヤリと笑ってやった。
「こんな風にさ!」
レイの一言と共に周囲の魔力がざわめいた。
オーガはそれに熱を感じた気がした。
・・・いや、事実周囲の温度が急激に上がっていた。
レイは続ける。
『きたれ。地獄の剛火を纏いし魔剣よ!
その焔は時に癒し、時に焼き払う黒炎なり』
ようやくオーガは感じた。
あれはヤバイと。
全力で阻止しなければと本能が告げる。
魔力の出力を限界まで引き上げ一気に向かおうとするが、黒炎に行く手を阻まれる。
『魔剣』
一言一言に力を、魔力を籠めて創りだす。
そしてついに、
『創成!』
周囲の魔力が悲鳴を上げた。
黒炎が収縮し、現れたのは一振りの長剣。
柄から刀身まで、すべてが黒く、金属特有の輝きを放っている。
特別な意匠は何一つなく、シンプルな西洋剣がそこにあった。
ただし、一目で業物とわかるものだが。
「創成完了。魔剣レーヴァテイン!」
怪我が完治していく。
擦り傷も切り傷も骨折も、
すべて黒い炎がひとなめすれば元通りになった。
かつて『狡猾なロプトル』つまりロキによって鍛えられたと言われている剣。
世界樹の頂に座している雄鶏ヴィゾーヴニルを殺すことができる唯一の剣であり、ラグナロクの際にスルトルが振るったとされる。
その炎は世界を焼き尽くすとも云われており、その規格外な力は底が見えない。
レイはそれに手を加えさらに再生の力を取り入れたのだ。
レイは構えた。
オーガも逃げられないと悟ったのか構えた。
睨み合いの膠着状態。
沈黙を破ったのは・・・レイだった。
レイは魔剣をその場でゆっくりと天へ上げた。
一見隙だらけに見えるただずまいだがレイの眼はしっかりとオーガを捉えていた。
故にオーガは動けなかった。
それがアルティメット・オーガの運命を決めた。
『魔剣聖技・炎の型が一、』
剣に黒炎が集まってゆく。
やがてそれは五本に枝分かれし、
最終的に竜の爪のような形になった。
『飛爪一閃!』
言葉と共に降り下ろされた剣から黒炎の爪が地面を更地に変えながらオーガへ直進した。
その速度は音速に届く。
オーガは剣に全ての魔力を通し衝撃に備えることしか出来なかった。
レイの飛爪一閃がオーガの剣へと激突した。
轟音が鳴り響く。
オーガは全身に深い切り傷を、おいながらも耐えきった。
だが、
「せえぇやぁああ!!」
黒炎が宙に尾を引く。黒き流星となり両者はすれ違った。
ズドン!レイの着地音が響き、沈黙が場を支配する。
「GI・・・GYA」
声を上げたアルティメット・オーガの右鎖骨から左脇腹へ赤い線が走り、
鮮血を散らしながら崩れ落ちた。
レイは勝利した。
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