第7話
南原郁美に与えられた衣装には、クラスの誰もが驚いた。特に女子からは「着てみたい」という声が多々聞こえてきた。
「ホント、女子はああいうの好きだよな」
一緒に教室の隅で座り込んでいた浜口が、衣装を試着した南原と彼女を中心にして集まっている女子の輪を眺めながら言った。ちなみに浜口がいま着ている服は、学生服ではなく、今日ようやく渡された『TOKIO』のコスチュームだ。
「もうちょっとオレの衣装にも食いついていいと思うんだけどなァ」
豆電球を上半身のいたるところに巻き付けた浜口は悔しそうに言った。
滝は何も答えない。そういう服を着てサマになるのは沢田研二だけで、お前だとドリフにしか見えない。なんてことは、口が裂けても言えなかった。
「でもまァ、たしかにあの衣装はスゴイよな。ずいぶんな力作だぜ。そのせいか南原さんがいつもよりキレイに見えるぜ。なァ、滝もそう思うだろ?」
「……べつに」
素っ気なく答える。
と、すかさず浜口からのブーンイングが飛んできた。
「えー! 滝ぃ、お前、あの姿の南原さんにナンとも思わないは無いだろ。お前だって男の端くれならトキメイたりドキドキしたりしないのかよ、なぁ、滝、なぁってば――」
笑いながら、友人の文句を聞き流す。
知っている。
あの衣装が南原郁美よりも似合う人を、滝光一は知っている。
つい昨日見た、彼女の姿。
夕陽の赤に照らされた純白のドレス。
あの時の気持ちを、今でも思い出すことができる。
息が詰まるほどの可愛らしさを胸一杯に感じた。
それは、あの衣装を着ていたのが、他ならぬ彼女だったから。
――好きな人だったから。
少し離れた場所に、中村彩子の姿が見えた。
何気なく見つめていると、彼女のほうもこちらに視線を向けてきた。
目と目が合う。
そして自然と、お互いに、笑顔を浮かべた。
滝の瞳には、誰よりも彼女の姿が眩しく映っていた。




