オナ禁
◯ 座敷牢
歌麿、座敷牢の中に、画材一式を持って入る。
歌麿「しばらくの間、ここに閉じこもって絵の構想を練る。その間、一切手淫はしない」
女浮世絵師「手淫を禁止することで、童貞力を高めるのね。でも、耐えられるの…!?」
歌麿「耐えるしかないんだ!! だから、逃げられないよう座敷牢に入る!!」
女浮世絵師、座敷牢の鍵を閉める。
女浮世絵師「歌麿さん… 無理はしないで……」
歌麿「ああ……」
こうして、歌麿は迫り来る性欲と戦い続けた。だが手淫禁止は、しょせん人間の精神力で耐えられる苦行ではなかったのだ……
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◯ 座敷牢
歌麿、座敷牢の扉を力任せにドンドン叩く。異変に気づいて集まってきた浮世絵師たちが必死になだめるが、止まらない。
歌麿「あ、あけろっ… あけてくれぇっ!」
浮世絵師「歌麿さん、落ち着いて…」
歌麿「あけるんだ! 春画… 春画をくれぇっ…!!」
ついに、扉をぶっ壊して外に出てくる。
歌麿「しゅ……春画…!! 春画はどこだっ…… もう手淫禁止はやめだ……!!」
浮世絵師「たいへんだ、女浮世絵師さんに連絡しろっ!!」
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◯ 夜の街
歌麿、鬼の形相で夜の街を走る。
歌麿「春画… 春画… 春画~~~~~~!!」
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◯ 蔦重の店
歌麿、やっと蔦重の店に到着。凄まじい剣幕で蔦重に詰め寄る。
歌麿「春画をよこせ!! 触手モノだ!!」
蔦重「そ、それが春画はないんだ… さっき、女浮世絵師さんが全部買ってしまって……」
歌麿「な、なんだと……!? うっ……」
ふと気がつくと、背後に春画を大量に抱えた女浮世絵師が立っている。
女浮世絵師「歌麿さん… ごめんなさい」
女浮世絵師を見ながら、絶句する歌麿。
女浮世絵師「こうなるだろうということはわかっていました… でも、性的に飢えた状態をいきなり変態的な刺激で癒すと、変な方向に性癖が歪んでしまうから…」
女浮世絵師、目にいっぱい涙をためながら、一枚の春画を取り出す。
女浮世絵師「ここに、小坊主が住職さんにガン掘りされる春画があります… お使いなさい。そして、新たな性癖に目覚めるのです!!」
歌麿、ホモ春画を受け取って呆然と立ち尽くす。
歌麿「……女浮世絵師さん、そのお気持ちだけ… ありがたくいただきます…」
歌麿、春画をビリビリに破いてしまう。
女浮世絵師「ああっ……」
歌麿「もう少しでくじけるところだった。勝負はもう目と鼻の先に迫っているのに… でも、もう大丈夫…」
歌麿、再び座敷牢へと戻っていく。
歌麿「もう大丈夫… きっと、いい絵が描ける……」
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◯ 秘密会議の部屋 朝
歌麿が版木が彫り上げ終えたのは、萌え祭当日の朝になってしまった。いつもの秘密会議室に、歌麿の版木を持った女浮世絵師が来る。
女浮世絵師「みなさん、歌麿さんの版木が彫り上がりました!」
浮世絵師「当日かよ!! ギリギリだな!!」
浮世絵師「見せてくれ」
版木を見た一同から感嘆の声が上がる。
浮世絵師「……すげぇ。歌麿さんが言うところの『童貞力』が突き抜けた……」
女浮世絵師「手分けしてドンドン摺りましょう!」
浮世絵師「当の歌麿さんは?」
女浮世絵師「疲れ果てて寝てます。1~2刻眠らせたら起こして、萌え祭に連れていきます」
浮世絵師「どのくらい摺ればいいんだ?」
女浮世絵師「わかりません。200部か、300部か… とにかくでき次第持っていきます」
浮世絵師「蔦重さんところに摺ってもらえないのか?」
女浮世絵師「主催が片方に肩入れすることはできないと、断られました」
浮世絵師「蔦重さんはいいよな、どう転んでも損しないからさぁ…」
女浮世絵師、突然立ち上がる。
女浮世絵師「ごめんなさい、ちょっと用事があるので帰ります」
浮世絵師「あっ、逃げんな!!」
女浮世絵師、真剣な眼差しで浮世絵師たちを見つめつつ、ニコッと笑う。
女浮世絵師「勝つためです! あと、あなたも来て!!」
女浮世絵師、勝川春朗の腕を強引に引っ張っていく。
春朗「なっ、なにするんですか!?」
浮世絵師「おい、バックれる上、貴重な人員まで取っていくのか!?」