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佐峨村  作者: peng
6/7

目撃者…杉田竜也


―何やってんだ、俺…。



side.竜也









…狭達、大丈夫かな。






―…ただ雅が危なかったから、何も考えず気付いたらあいつの前に飛び出していた。


もうこうなったらヤるしかない。

そいつの標的を俺に変えたら、後はもうひたすらに走った。後ろは振り向いてないけど、すぐ後ろから追いかけてきてるのが分かった。ものすごい速さで。


時々風に混じって笑い声が聞こえるのは気のせいであってほしい。


足には自信があった。

でもここの地理が分からない。行き止まりになんて突き当たったらそれこそ終わりだ。

変に動き回るよりここは…。



「……!」



めちゃくちゃに走ってたら目の前に大きな家が見えた。周りを塀で囲まれたその家は横にもの凄く長い。

確認できる入り口はこの道の突き当たり、目の前にある扉のみ。後ろは引き返せないし、遠回りした所で逃げ場があるか…。


いや…もう考えてる時間も無い、か。



体当たりしそうな勢いで扉に手をかけた。







――ガ、タガタッ…




「っ…の!開けよ!!」




が―…扉は開かない。


なんで開かないんだよ!!



「ふざけんなよ!早く開けって!!」



何度も引き戸であるその扉を引いてみるが、ガタガタと音を出すのみで開かない。



その間もどんどん近付いてくる足音。



すぐ後ろまで来てんだよっ!!




「…くそ!」




一か八か少し後ろに後退りして、もう一度隣の塀を見上げた。




「こんな所で、殺されてたまっかよ!!」




助走をつけて目の前の俺より身長の高いその塀に向かって、思いっきり飛んだ。


そしたら、途中塀を蹴ってギリギリで上の出っ張りを掴めた。


後はもう腕の力と足で蹴ってよじ登る。




「…っい!!」




よじ登れた瞬間、もの凄い勢いと力で足首を掴まれた。


痛みに思わず手を放しそうになったが、必死で堪える。



「てめぇ!離せよ!!」



もう片方の足で掴んでいる手を無我夢中で蹴った。


だが手は離れず、それどころか引き下ろそうとしてくる。



「離せって言って…ぅわ!!!」




…――ドサッ!!



また蹴ろうとした瞬間バランスを崩して、塀の向こう側に身体が傾いた。


ヤバ…落ちる!!



すぐに立て直せずに、俺はそのまま地面に向かって塀から落ちた。



塀から俺は落ちた。

でも頭からじゃなかったから良かった。


落ちる瞬間足首を掴んでた手は離された。


落ちたのはあいつがいる反対側。



「いって…」



いくら頭からじゃなくても、うった腕や膝が痛い。






――ガタガタッ!!!!




「……!!」


突然隣りの扉が激しく揺れた。壊れるんじゃないかってぐらいの勢いだ。


慌てて扉を抑えようと立ち上がり、改めて扉を見た。

あの扉開かなかったんだけど鍵でもかかってんのか?…だとしても、安全じゃない。


て…、つっかえ棒?


でも鍵なんかじゃなく、扉にはつっかえ棒らしき物が挟まっている。



つっかえ棒だからってなんだ。



この棒が安全とは限らない。






ガタガタとうるさいその扉を必死で抑えた。





諦めろよ…!






……






……





……






……?





…音が止んだ。


諦めたのか?



暫く待ってみたが扉が開く気配は無い。



また布を引きずるような音が聞こえたが、どんどん遠ざかっていく。






……た、




助かった…?




大きな息を吐いて、その場に尻餅をつく。

とりあえず、あいつはまけたみたいだ。










あれからまだ十分くらいその場にいたけど、戻ってくる気配もない。


ほんとに諦めた、て考えて良いんだよな?…て何考えてんだ俺。これじゃ狭や太田達も危ないじゃねぇか!せっかく俺に引きつけたのに…。

でも、さっきの間に皆逃げたん…だろうな。



これからどうする?



どうやらこの家は周りを塀に囲まれてるみたいだし。出入り口はあの扉…か裏口があったら裏口だろ。




立ち上がって改めて家を見渡した。




ここに朝まで隠れてた方が良いんじゃないか?

たぶん雅や狭達が駅のほうに帰って警察に通報してるだろうから、明日になってからのが安全だ。





あ、そういやここまでの地図って……俺は持ってない、か。


てことは雅が持ってるんだよな?









あいつら大丈夫、だよな。







ふと気になってとりあえず、家の中を歩いてみることにした。


使われていない村や家…にしては色々と物が散乱したままだ。本や服、毛布等どれも古く錆汚れたものばっかだけど、なんでこんな置きっぱなしなんだよ。


この大きな家は渡り廊下を挟んで、まだもう一つ家があるみたいだ。でっかい家だな。


襖を開ければ、大きな畳の部屋ばかりだ。



「……ん?」



泥や誇りで暗く黒い物ばかりの中、何か光る物が視界端にうつった。


「あ!あれって…」


懐中電灯の光をあてたら、そこにはまだ綺麗な黒縁の眼鏡が落ちていた。


見覚えのあるその形。

まだ誇りも被ってない綺麗な眼鏡。



「剛の…だよな、これ」



手にとって確かめてみても、予想通り。つい昨日見たことのあるこの眼鏡は、間違いなく剛の眼鏡だ。

確信はないけどこんな村に、こんな綺麗な最近使われてたような眼鏡。あるはずがない。



「…やっぱり剛、この村に来てるんだ」



そう信じて俺達はこの村に来たんだ。


そう、信じてたんだけど。


半信半疑だった。

この村に居てくれたら、て思う気持ちと居ない方が良いと思う気持ち。




脳裏に死んでる健一の死体の姿が過ぎった。





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