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佐峨村  作者: peng
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いざ…2

急いで隠れたから皆隠れた場所はバラバラだ。

だけどどこに隠れたかは、後ろ姿を見ていたから何となく分かる。


雅は健一が倒れてる近くの物置の中。

竜也も健一と雅の近くの廃屋の中。玄関の扉の後ろだろ。

岩瀬と太田は、廃屋と廃屋の間の隙間。

俺はその二人を見れる道を挟んで丁度向かい側の、倒れかけた大きな木の影に隠れた。



音はまだ断続的に聞こえる。



なんなんだよ!くそ。



息を殺して必死でその近付いてくる音の正体を待つ。


頼むから剛か土屋であってくれ!








そして、真っ暗ではあるが微かに何かが見えた。



黒い人型の物体が。








暗くて薄っすらとではあるが、目の前の道を健一のいる方へ向かって「何か」がゆっくりと歩いていく。


人?…だよな。って当たり前か。


頭から黒い布のような何かをすっぽりとかぶり、その布は地面にまでついている。その擦れる音が響いていたんだ。

だから、そいつが誰かなんて分からない。

ただ、そいつの右手に握られているのは鋭く光る鋭利な刃物であることはすぐに分かった。


隠れて良かった。





そいつはそのままゆっくり前へ歩いて行くと、健一の目の前で止まった。




その瞬間――…










ザシュ――…!!!


―…グサッ!!


…グチュ!――






耳を塞ぎたくなるような音が響いた。





な、何してんだよあいつ!!!!





そいつは健一の身体に向かって何度も何度も、その刃物を振りかざし始めた。


暗くて何をしてるかは分からないけど音で分かる。


あまりの光景に視線を逸らして、耳を塞ぐ。


もしかして竜也の言ってた連続殺人犯って奴か?隣りを見れば岩瀬達は二人抱き合って座り込んでいるのが何となく分かった。





今、音をだしたら確実に殺される――…!!!






皆、同じことを思ったに違いない。


ただ、今はそいつが立ち去ってくれるのを待つのみ。


そしたら急いでこんな村から逃げ出そう、そしてこの事を警察に言うんだ。流石に今度は警察も動くだろう。もう終電が無いとかどうでも良い、とりあえずこの村から出てさっきの駅前の村に出るんだ。そこにはちゃんと人が暮らしてた、その人達に匿って貰おう。


こいつはヤバすぎる…。




何度か刺した後、そいつはゆっくりと立ち上がった。


――このままどこかへ行ってくれ…!


だがそいつは、立ち上がってそのまま動かない。





時間が…長い。




ほんの数秒しかたってない筈なのに、もの凄く長い時間に感じる。汗の落ちる音でさえも…恐怖だ。


―たのむから、誰にも気付かず…









―…ガタッ――







っ……!!


物置の方で何かが落ちる音が響いた。



「…雅!」



確かあそこは雅が隠れてた場所だ!



その音を聞いて、そいつはその物置へと歩を進め始めた。




どうしよ…。

あいつ雅の所へ…、見つかったら殺されるっていうのに!

でも、じゃぁどうしたら良いんだ?このまま見てる訳にはいかないだろ。かと言って俺がここで飛び出して、あいつの気をひく。


じゃ…その後どうするんだ?


逃げる?こんな始めてきた村で山ばっかの真っ暗闇を?足が速いわけでもないし、もし捕まったら…。

でも、このまま黙ってるわけにはいかない…!


いかないんだけど…。



足が動かないし、そいつから視線が離せない。

くそ、友達が危ないってときに…!!








「おい!こっちだ!!」







突然竜也が道に飛び出して叫んだ。


竜也?嘘だろ…


その声を聞いて物置の扉に手をかけていたそいつは、振り返って竜也を見返す。

そして竜也は振り返ったのを確認したと同時に、俺達と反対方向へ走って行った。


その後を追うようにそいつは、さっきまでのゆっくりとした速さじゃなく、もの凄い速さで走っていく。


近くのバケツや木に身体が当たろうが、眼中にないみたいに。


二人はすぐに暗闇で見えなくなった。



「…竜也」



岩瀬の呟きにようやく俺の身体も動いた。


竜也の行動をただ見てるしかできなかった…。俺ってほんと情けないよな。


でも、とにかく今は…



「岩瀬、太田!逃げるぞ!!」



二人の元へ急いで駆け寄ると、座り込む二人の服を掴み力任せに立ち上がらせた。



「え、でも竜也が…!」

「とにかく今はあいつから逃げるしかねぇだろ!死ぬぞ」

「分かってる…分かってるけど」


「…雅は?」


普段の強気な岩瀬とは全く違う。当たり前だ、あんなもの目の前で見て。

動こうとしない岩瀬の腕を掴むと無理やり引けば、隣りの太田が不安そうに物置のある方を見ている。


物置の方を見れば、まだ扉は閉じたままだ。



雅…あいつ、あの殺人鬼がどっかいったの気付いてないのか?



「ねぇ、雅は!?雅も一緒に!」


太田が俺の胸元を叩きながら物置を指さす。


…置いてくわけはねぇだろ!!




でも、ここで大声をだすには気がひけるし。



「雅、呼んでくるから。先逃げろ!良いな!?」


太田の肩を軽く叩くと岩瀬に預けた。

岩瀬は何も言わず俺と視線を合わせると大きく頷く。




その返事を聞いて物置へと向かう。

背後で二人分の走る足音が聞こえた。



雅の野郎、さっさと出てこいよ!








――…ガラッ!!




「…雅!」



扉を開けて中にいる雅の名前を叫んだ。





「…あれ?」





でも、中には誰もいなかった。


物置の中は小さく、人一人二人入れるかってくらいの大きさだ。扉から奥まですぐに見渡せる。懐中電灯の光を奥まで向けるまでもない。


なのに雅の姿はない。

確かあいつここに隠れた…よな?そうだ、太田もここを指さしてたからそれは確かだろう。


どこ行ったんだ、あいつ…。










「…イヤアアァア!!!!」









仕方なく二人の元へ戻ろうと物置を出ようとした時に、背後から悲鳴が響いた。


「い…岩瀬!?太田!?」


なんなんだよさっきの悲鳴…!


岩瀬と太田の身になんかあったのか?





くそ…!女二人っきりにさせるべきじゃなかったか。






急いで二人の走っていったであろう後を追って走った。



「岩瀬!太田!」



たしか、この辺から聞こえたよな。


声の聞こえた辺りで、懐中電灯の光を道の先に当ててみる。

でも二人の姿は見えない。


走っていっちまったか?



何があったか分からないけど…上手く逃げてりゃ良いんだけど。


せめてこの村から出れたら…。

帰り道は雅か竜也しか知らないから、出た所で更に迷うかもしれない。連絡もとれないからな…。





…て!とにかく今は二人を見つけないと!

それに雅と竜也も。





まだあの殺人鬼(俺命名)がこの近くにいるかもしれないけど…。







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