始まりは…相馬剛
始まりは…
side.剛
学校も終わった夕暮れ時。
商店街が立ち並ぶ建物の裏に小さな通りがある。その道を通って何度か曲がれば、建物に囲まれた薄暗いが少し場所に出る。
そこが俺達のよく集まる場所。隠れスポットとまでは言わないが、俺達以外あまり使われないから。汚いし。
特に何も言わなくても皆ここに集まって来てる。集まる人は日によってばらばらだけど。
で、今日はこの場に俺と竜也だけ居てだらっと時間潰してたら…
「健一の奴、莉央ちゃん連れてったぞ」
「……は?」
その小さな広場で壊れた椅子に座って携帯弄ってると、雅が走りながらやてきてそう大声で言った。
莉央とは俺の恋人だ。
「何言ってんだ、お前」
そんな雅を呆れ顔で見返せば、俺より先に隣にいた竜也が答えた。
「いやマジだって!昨日かな?駅前で二人で居るの見たぞ俺」
「莉央と健一がか?」
「うん」
「…で?それが何だよ」
莉央と健一が一緒に居るくらいはよくある。よく俺達と一緒に遊ぶからな。一緒にいるくらいは。
「なーんか気になって声かけたんだけど…」
「……?」
「そしたら健一が今から佐峨村?て所に二人で遊びに行くって」
「佐峨村?なんだそれ」
「聞いたことねぇな」
佐峨村?
そんな村この辺にあったか?
「で、莉央ちゃんもいるし冗談だと思ってその後別れたんだけど…」
「まぁ…莉央、俺に内緒で健一と二人で遊びに行く、なんてないからな…多分」
「…で、今日だ。二人共今日学校来てなかったよな?」
一瞬三人共無言になって沈黙が流れた。
「それ只の偶然だろ」
その沈黙を竜也が遮る。
偶然。
確かに今日は二人共休みだった。莉央が休みなんて珍しいな、て思ってたら健一も休みだって聞かされた。
あ、そういや俺昨日から莉央からのメールきてねぇな。特に話す事なかったし別によくあるけど。用事とかは学校で毎日話せるし。
お見舞メールもしたけど返信はまだきてない。風邪でもひいてしんどいんだろって思って。
普段から雅はチャラい事で有名だし、そもそもこいつが言ってる事自体信じがたいけど。
「でも実際あれから二人見てないんだよ。絶対二人で遊びに行って帰ってきてないんだって」
「んな訳あるか。あの莉央が」
「雅、お前大丈夫か?だいたい遊びに行ったとしても、帰ってこない訳がねぇだろ」
「だってあれから健一に連絡つかねーんだもん」
「…なんで?」
「なんでって、つかないもんはつかないよ」
「単にお前嫌われてんじゃね?」
「ちょバカ言うな!へこむぞ!」
雅の言うことが正しいなら健一も莉央も連絡がついてない。それに二人共姿もみてない、と。雅の言うとおりなら、ほんとに遊びに行って帰ってこないと?
「一応莉央に連絡してみるけど、嘘だったら明日の昼飯奢れよ」
「え!?何でだよ!てか嘘じゃないって!」
「じゃ、俺も一応健一に連絡してみる」
だんだん雅の焦り具合が気になって携帯を取り出す。その隣で竜也も携帯を取り出した。
待ち受けを見てみたらまだメールの返信は無い。ここはもういっそ電話した方が良いよな。それで雅も直ぐに諦めんだろ。
アドレスから莉央を選ぶとダイヤルした。
――
――……―
「あれ?…出ない」
「やっぱり!?な?やっぱりこれ事件だって!」
電話に莉央は出なかった。
おかしい。
だいたいこの時間帯は家に居る筈で、すぐに出るんだけどな。
「健一もでねぇぞ」
「だろ!?だから言ったろ?これめっちゃ怪しいよな?」
「雅うるさい。二人共風邪で寝てるだけだって」
「俺、一応帰り見舞いついでに莉央ん家寄ってみる」
…一応。
「じゃ、俺も暇だし健一ん家遊びに行くわ」
「俺の勘がなんか告げてるぜ!だって昨日健一なんかおかしかったしな」
「そうなのか?」
「うん、なんか変だった」
「とにかく、二人共ちゃんといたら…雅、一週間分昼飯奢りな」
「ごちになりまーす!明日普通に登校してくるに一票」
「俺は二人がいないに一票!」
佐峨村へ行くって行った二人はそのまま帰って来なかった…じゃ、話しにならない。
雅も雅で二人がいない、てことを確認した訳じゃない。なのにあの自信はいったいどこから来てるんだ?
それに…あいつはただ面白がってるともとれる。
事件とか事故とか争いごとが好きだからな。
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