表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

想曲・陸~夢~

 夢を、見ていた気がする。

 とても、懐かしい夢。とても、悲しい夢。

 十歳の時。二歳年上の姉が流行り病で亡くなった。遺体を前にして、親戚一同が泣いていた。

 自分には、それが不思議でならなかった。だって、姉はそこにいたから。たとえ、体は体温を失って二度と動かなかったとしても、大好きだった姉の姿は、そこにあったから。

――お前は、冷たい子だね。

 誰の言葉だったのだろう。死者を前にして悲しむ素振りを見せなかった自分に、突き立てられた言葉の刃。

 あぁ、あの頃からなのだ。

 生と死の境界線が、あやふやになったのは。

「…見慣れない天井」

 もう、随分前に瞼は上がっていた。夢から引きずってきた過去からようやく意識が現実へと舞い戻り、目の前の光景を脳が認識する。

 疲労を訴えてくる体に疑問を感じながらも、ゆっくりと体を起こす。何かが床に落ちる音に視線を落とせば、自分に掛けられていただろう毛布が視界に入った。

 立ち上がり、改めて自分が寝かされていたソファの部屋を見渡す。四方を高い本棚で囲まれた、暗い空間だ。天井近くまである高い本棚は整然と本が納められていて、洋書のものも目立った。

 ソファと本棚しかない殺風景な光景に溶け込むかのように、木製の扉はあった。取っ手に手を掛け、内側に開いていく。

「――起きたのか」

 薄闇に慣れてしまった目には、部屋を照らし出す陽光すら眩しく映る。数秒白く染まった視界がその姿を捉えるよりも早く、冷めた声音が耳朶を叩いた。

「あ…」

 現実に戻ったといっても何処か夢見心地であった彼は、返す言葉に迷う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ