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クラスメイトの箱入りお嬢様が、私の百合ラノベのネタになるまで!  作者: 沢谷 暖日
第1章 月江梓という女の子

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第15話 正しい水族館デートの作り方(2)

 バスに揺られてマリン水族館に到着した私たちは、チケットを買い、少し薄暗いゲートをくぐる。そこはもう、日常とは切り離された青色の世界だった!


「わぁ……っ!」


 入口すぐにあるトンネル型の巨大水槽を見るなり、月江さんが小さな歓声を上げて駆け寄る。頭上をエイやサメが悠々と泳ぎ去り、床に落ちる波の影がゆらゆら揺れている。

 ……すごい。とっても幻想的だ。小学生の頃とは見える景色が違うみたい。


「来栖さん、見てください。あのエイ、顔が笑っているみたいです!」


 月江さんは子供みたいにはしゃいだ瞳で振り返る。

 ガラス越しに指さす先には、白いお腹を見せて愛嬌たっぷりに泳ぐエイの姿。


「おぉ……ほんとだ……」

「はい! とても可愛らしいですね!」


 たしかに可愛い。エイもだけど、やっぱり月江さん、可愛いな……。

 そりゃそうって感じなんだけど! 休日の月江さんはいつも以上に魅力的だ。

 クラスメイトのこんな可愛い美少女を、私が独り占めしてもいいのでしょうか。いや独り占めっていう考え方がそもそも間違ってはいるんだろうけど……。

 ともかく、もし月江さんが私の好きな人だったら、多分心臓は持たないだろうな……。私の中に作られた、月江さんに恋する女の子の人格である可乃子ちゃんはすでに限界を迎えている……!


「来栖さん、この先もいってみましょう!」

「……あ、うん!」


 呼ばれた私は、慌ててその横に肩を並べる。

 トンネルを抜けた先も、休日の水族館らしくかなりの混雑具合だ。

 家族連れやカップルの波に揉まれないようと、私たちの距離が自然と縮まる。

 そしてふと──互いの手の甲が、こつん、とぶつかった。


「あっ──」


 不意に触れた熱に、思わず声が漏れる。


「……? どうかしました?」


 月江さんが不思議そうに小首を傾げる。


「あ、いや、なんでも……」


 私は答えながら、熱くなった手をぎゅっと握りしめた。


 ──こういう時、好きな女の子とはどうするものなんだろう。


 私には、分からない。

 だって私は、誰かを好きになったことなんてないから。

 でも、もし私が、報われない片思いをしている可乃子ちゃんだったら。

 このデートはきっと、彼女にとって最初で最後の奇跡だと思っているかもしれない。だって月江さんは女の子で、私も女の子。そして住んでる世界も全く違う。

 だからきっと一生分の勇気を、ここで振り絞るんじゃないのかなって。


「あの。あのさ。人多いからさ」


 震えそうになる声を、必死に喉奥から振り絞る。


「手、繋いでいい?」

「えっと……いいですよ?」


 若干困惑したように、月江さんの手のひらが私の手をそっと包み込む。


「あ、ありがとう……」


 引かれてないかな……ちょっと不安だけど、わ……柔らかい。

 前も繋いだことあるけど、月江さんの手はマシュマロみたいだった。

 感動していると、隣から細々とした声が聞こえる。


「……少し、恥ずかしいです」


 月江さんが頬を掻いて、にへらと口元を緩める。

 その反応に、私の緊張も少しだけほぐれた気がした。


「でも初めて話した日、繋いだじゃん! ていうか繋ぐ以上のことしてきたじゃん!」


 照れ隠しで軽口を叩くと「あうっ」と小さな悲鳴が返ってくる。


「あ、あれは、その。憧れの方に会えた嬉しさで、タガが外れたといいますか!」

「あの日の月江さんは、とてもえっちな感じでしたからね!」

「えっ──! も、もう。あれは忘れてください!」


 月江さんは顔を真っ赤にして、繋いだ手をぶんぶんと振った。


「やだ。可愛いから忘れてあげない」

「なんで急にそんな意地悪を……!?」


 潤んだ瞳で恨めしげにこちらを覗いてくる。

 それもまた、とても可愛らしい……!


「まぁいこう! ていうか手繋ぐのきもくなかった? きもくないね! よしいこう!」

「まだなにも答えてません! きもくはないです! 繋ぎましょう!」


 私、熱に浮かされて変になってしまわないかな!

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