第14話 正しい水族館デートの作り方(1)
駅前のロータリーには休日の朝らしい爽やかな喧騒があった。
私はどきどきしながら、時計を確認する。待ち合わせの五分前。
うぅ。いざ時間が近付くとやっぱり緊張してくるなぁ……。
冷静に考えて友達とのおでかけなんて、え? 小学生ぶりかも?
自分でもびっくりしながら、私はスマホのカメラ自分の前髪を確認する。
月江さんへの第一印象を良いものにするため、時間ぎりぎりまで前髪キープし続けよう! と思っていたんだけど──。
「来栖さん」
と。不意に名前を呼ばれ、心臓が跳ねる。
振り返ると人混みの中でも一際目を引く立ち姿の月江さんがいた。
「つ、月江さん!」
次に、可愛い! と思った。
今日の月江さん、制服姿の時とはまた違う可憐な雰囲気だ……。
白のブラウスに淡い水色のフレアスカート。そして何より目を奪われたのはその髪形。
いつもは下ろしている艶やかな黒髪が、今日は緩やかに巻かれハーフアップに纏められている。結び目にはスカートと同じ水色のリボンのついたバレッタが留められていて、ちらりとうなじが覗いている……!
……おしゃれもできるんだ。すごい。
え、私、どこも月江さんに勝ってるとこなくないか!?
「すみません、お待たせしまたか?」
「ううん、私も今着いたところ。やっぱりその服、すごい可愛い」
「そ、そうですか……? 昨日は選んでくれてありがとうございます」
月江さんはスカートの裾を摘んで、恥ずかしそうにはにかんだ。
「ていうか全部、可愛い。ほんとに、すごい。可愛い。可愛いよ、月江さん!」
「ちょっと褒めすぎです! それを言うなら、来栖さんも可愛い……ですよ?」
「うんそうだね月江さん可愛い!」
「あれ!?」
なんか褒められたような気がするけど、私が可愛いわけないので幻聴だろう。
私は可愛い彼女を見て、脳内の取材ノートを開くことすら忘れていた。
スイッチ切り替えて、取材モードに切り替えようと試みる。
「月江さん! 今日の私は『月江さんのことが気になっている一人のクラスメイト』の設定だからね! 月江さんは自然体でいてね!」
もっと細かく設定を言えば『入学当初から月江さんのこと気になってたけど、女の子同士だし、私と違って人気者だし、私なんかが月江さんとお近づきになるなんてむしろ申し訳ないというか……うーんでも、毎日目で追っているうちにこのままの関係でいるのもなんとなくもどかしい気持ちになるし、いつ月江さんに恋人ができるか分かんないから、ここは玉砕覚悟で休日に水族館デートに誘おう!』と決意した女の子という設定だ!
名前は可乃子だ! よろしく可乃子ちゃん、デートがんばろうね!
「わ、分かりました! よろしくお願いします」
「よし、じゃあ行こうか!」
空回りと紙一重のテンションで宣言すると、月江さんは笑って頷いた。
かくして、私たちの奇妙なデート、もとい取材が幕を開けたのだった。




