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クラスメイトの箱入りお嬢様が、私の百合ラノベのネタになるまで!  作者: 沢谷 暖日
第1章 月江梓という女の子

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第12話 デート前日

『うん。いいね、わかちゃん!』


 スピーカーから聞こえる声は、いつになく弾んでいた。


『先日送ってくれたプロローグ、すごくよくなってる。前のテンプレお嬢様は正直お人形さんみたいだったけど、今度のはちゃんと血が通っているわ』

「本当ですか! よかったぁ……」


 私の何度も書き直したプロローグは、ついに伊織さんから褒められた!


『ええ。特にお嬢様のヒロインが、主人公に対してグイグイと距離を詰めてくるあたりの描写。ラノベらしいのに妙にリアリティがあっていい。よくこの短期間で方向性の違う良い話を書けたね、わかちゃん』

「あ、あはは。まぁ、想像力をフルに稼働させまして……!」


 私は乾いた笑いを漏らしながら冷汗が伝うのを感じた。

 リアリティも何も、実在する人物をそのまま投影しただけだからだ。まさか「モデルが実在して、実際にあんなことをされました」とは口が裂けても言えない!


『この熱量のまま続きもお願いね。で、次の展開はどうするの? プロットでは次に「デートで仲を深める」ってあるけど』

「あ、はい。そうですね。水族館デートにしようかなと」

『定番ね。今の調子なら面白くなりそうなんじゃない?』

「はい。それで実は明日、水族館に取材に行きます……!」

『取材? わかちゃんにしては珍しいこと言うね』

「そ、そうですかね?」


 私が問い返すと、伊織さんは「うん」ときっぱり言って、面白そうに笑った。


『まぁいいわね、取材。期待してるわ、先生。あとツイッターの更新も忘れずに!』


 ◆◆◆


 通話が切れた後、私はベッドにダイブして足をばたつかせた。


「はぁ……よかったぁ……!」


 伊織さんが褒めてくれた。

 スランプの暗いトンネルの先に、ようやく光が見えた気がする。

 これも全部、月江さんのおかげだ!

 この溢れんばかりの高揚感を、どこかに吐き出したい。

 私はスマホを手に取って、ツイッターの作家アカウントを開く。

 ちなみにフォロワーは数百人。

 細々とやってるアカウントだが喜びを共有するには十分。


『担当さんに新作褒められた! 最近良いものが書けなくて焦ってたけど、ようやくその段階を抜け出せそう! 今度は水族館に取材に行く!』


 勢いで文章を打ち込んで画像を一枚添付する。

 昨日の中庭でのランチの時に、何気なく撮った空の写真だ。

 雲一つない青空が、今の私の晴れやかな心境にぴったり!

 送信ボタンをタップすれば、すぐに反応がくる。


『新作楽しみです!』

『応援してます!』


 他にも私を褒めてくれるコメントがたくさん……。

 ……しあわせ。明日は月江さんとデートだし、原稿は順調だし。

 ツイッターのみんなは褒めてくれるしで、人生のピークきてるかもしれない。

 私はスマホを閉じ、原稿を書くため幸せな気持ちでパソコンに向かった。


 ◆◆◆


 ツイッターに投稿された画像には、右下にほんのわずかに茶色いレンガ調の壁が見切れていた。それには特徴的な模様がついており、我が校の物だと見る人によっては判断可能なくらいだ。そんな画像の一部を見てか、DMにこんなメッセージが届く。


『あれ、この写真。私の通う学校にそっくり』


 そのメッセージに気付くのは、まだ数日先のことである。


 ◆◆◆


 夜。明日の準備をしていた頃。

 ぽこん、とスマホが軽快な通知音を吐き出した。

 画面を見れば『月江梓』の文字。業務連絡だ。


「夜分遅くに失礼します。今、お時間よろしいですか?」


 数回、スマホで月江さんとやり取りして分かったことがある。

 普段直接話す月江さんはとても朗らかで明るく話してくれるが、文面のやり取りとなると普段の様子がまるで嘘のように文章が堅くなる。

 逆オタク(?)みたいな感じだ。


『うんいいよ! どうしたの?』


 対する私は純オタク(?)なので、現実では暗く文面では明るい。


『明日の現地調査ですが、私の服装について二つの案で迷っております。相応しい服装はどちらか、来栖さんの判断を仰ぎたく』


 次いで二枚の写真が送られてきた。

 大きな姿見の前で撮った自撮りだ。


「うわ……かわい……」


 思わず口に漏らす。

 月江さんの私服のセンスはとても素晴らしかった。

 一枚目に送られてきたのは、白のブラウスにフレアスカート。

 いつものお嬢様な月江さんのイメージそのもの。


 んで二枚目が、パーカーにデニムのショートパンツ。

 顔こそ隠しているが、髪をポニーテールにしている。

 活動的でスポーティ、新鮮すぎる……!


「どっちも可愛いな……」


 私はスマホを抱えて身悶えた。

 やはり二枚目のギャップは捨てがたい!

 捨てがたいけれど! 一枚目のこの完成された清楚の破壊力がすさまじい。

 水族館の青い照明の中に佇む、白い姿の美少女。絵になりすぎるだろ……。

 私は数分間悩み抜き、震える指で返信を打った。


『まず大前提、どっちもすごい可愛い! 二枚目はいつもと違う月江さんの感じですごい素敵! だけど今回は一つ目で! 水族館の雰囲気にもぴったりかなって思った!』


 送信。すぐに既読がつく。


『ありがとうございました。では一枚目で。おやすみなさい、来栖さん』


 と最後にお辞儀をするスタンプを送られて、以降彼女の返信は止んだ。


「はぁ、楽しみ」


 夜も遅いので、私もベッドに就く。

 天井を見上げて、目を閉じた。

 今日は伊織さんにも褒められた。

 デートの約束も、完璧。


 明日はあんな可愛い恰好の月江さんと二人きりなのか。

 想像するだけで眠れそうにない……。

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