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ツキノアメ

不定期に投稿いたします、


暖かい眼で見て下さい。





西の都”マルビロ”から

少し離れた街道の木陰では、

喧騒が聴こえる。


「いい、まず私達は、旅先でグランと会った。」


「フエンと私は異母姉妹。」


「メグラは、1人で村から出た冒険者。」


「カフエリもエルフの里から出た冒険者でいいわね。」


「メルは…森で行き倒れていたのをグランに助けられた。」


そう、マルビロのギルドマスターに会う前にユウを筆頭に

打ち合わせをしていた。


元奴隷だと気付かれると何も

できずに売り飛ばされるからである。


「なぁ、何でフエンとユウが

異母姉妹なんだよ?」


上半身が裸のメグラが口を

尖らせ不満そうに話す。


褐色の肌と鍛え上げられた肉体と裏腹に精神が幼い。


「それが一番よ。」


「メグラが臨機応変にフエンの代わりが出来るの?」


鋭い指摘にメグラはメルの方を見て助けを求める。


しかしメルは顔を横に降る。


「ねぇ、大体何でアーマーを脱いでるの?」


西の都付近の気候は暖かい。


重戦士の鉄鎧が、現在の主に

重くて暑いという理由で

放り投げられていた。


「うるせぇ。暑いんだよ!」


そう言うと地面に転がり

会議の参加を中断する。


カフエリはユウと今後について


議論をしていた。


「それでいいとして。」


「本当にギルドに登録するの?」


汗で張り付いた青い前髪を

気持ち悪そうに息で退かして

カフエリはユウに聞いた。


「その方が良いと思うの。」


「生きて行くにはお金が必要でしょ。」


「仕事があるとも思えないし…。」


「ギルドに入れば仕事には困らないわよ。」


暑い空気を少しでも冷やそうと

胸元と顔にめがけ、手で仰ぐ

ユウ。


薄紫色の細長い髪を後ろに

束ねた少女は、暑さと日差しにより白い肌が少し赤く焼けていた。


「……。、」小さく頷く。


先ほどまで黙っていたメグラは


「なぁ、リーダー決めねぇ!」


ここぞとばかりに会話に入る。


「そうね。」


ユウは初めてメグラの意見に

同調した。


合図でリーダーに向いているものを指差す。


そう決めて一時喧騒が静まる。


「じゃあ、いくよ、せーの!」


二人を除いて皆同じ人物を指差す。


フエンとユウとカフエリは


メルを指差す。


メルはユウを指差していた。


メグラは、聞くまでもなく

自分を指していた。


「リーダー?わからない。」


紅き眼を持つメルは、不安そうにカフエリ達を見詰める。


「大丈夫よ。ちゃんと補佐するから。」


ユウはメルの肩を強く叩き

元気付ける。


「何でメルなんだよ…。」


また不満そうにメグラが文句を言う。


カフエリ達はたった一言

「だって、一番強いから!」


メグラは、痛恨の一撃により

完全に戦意を喪失したのだった。


「しっかし、メルの手袋、マジ凄いよな!」


「完全に人間だわ。」


メルは、左側半分が人間と同じ作りだが…。


右側は化物である、ゴブリンの姿なのだ。


しかしグランから貰った

“変化の手袋”

見た目もそうだが

ゴブリン特有の瘴気も見事に

消していた。


そして人間の姿になったメルは

蒼く長い髪を後ろに流している。


やや白い肌には

似つかわしくない程の

腹直筋と上腕二頭筋が

妙な色気を出し

紅く鋭い眼光と合わない

慈愛が顔から滲み出る。


世間一般でいうと


美少年なのである。


「なぁ見た目じゃあ無いよな?」


メグラはまだリーダー選抜に

文句を洩らす。


フエンが小さき鉄槌をメグラ

に落としていた。


「じゃあ行くとしますか。」


メル達は西の都マルビロへと

歩き出す。


◆◆


煉瓦作りの重々しい城壁が


都を囲い兵士達が全方位に睨みを利かす。


西の都マルビロまたの名を


自由の国とも呼ばれている。


多種多様の種族を受け入れ

様々な考え方が存在する。


その中には”マレビト”と呼ばれる者達も含まれる。


その者達は皆、異世界から来たというのである。


城主の『カナレリア・マルビロ21世』は柔軟な思想の持ち主であった。


だが自由とはそれだけ危険とも


呼べるのである。


現にこの”マルビロ”は


人間族、獣人族、魔族、精霊族、


どれにも属さぬこの国は


常に狙われていた。


「止まりなさい!」


三人の兵士が鉄の槍で


門の前に立つ。


「ディアロからの使者である。」


「賢者グランからギルドマスター宛に手紙を預かっている。」


そう言うとユウはグランから


持たされていた王家の紋章が

印字されている手紙を兵士に

見せる。


(グラン!)


兵士達は動揺を見せ


手紙を見せろというので渡す。


兵士は詰所に手紙を


持っていくと更に


重々しい空気が張り詰める。



詰所から左目に深い傷を負った


兵士がこちらに向かって来る。


「グランの使者よ、すまない。」


「部下が失礼を働いた。」


フルプレートの重厚な装備を

着けた戦士が深々と頭を下げる。


彼はマルビロの守護者


『ソウガン』


その名を聞けば、あらゆる

強者が一度は戦ってみたい

と話す戦士である。


かつてたった1人で


迫り来る4万の獣人族を


追い払った。


その伝説は詩人達によく語られていた。


実はソウガンと

もう1人の人物がその偉業を

成し遂げたのだが…。


その人物は、表には出すなと

ソウガンに伝え消えたという。



真実はソウガンのみが知っている。


「門を開けよ!」


鉄の門が地面を擦りながら

ゆっくりと開く。


(以外とあっさり通れたわね。)


メル達は、マルビロへと入って行く。


獣人、エルフ、人間、魔族、


見渡す限り人と


賑やかな町並みに


メルとメグラは眼を輝かせ


驚いていた。


「なぁ、手紙を渡したら、町ん中見て回ってもいいだろ?」


メグラは田舎者丸出しで興奮していた。


それをユウは強くたしなめる。


するとほのかに小麦の焼ける

香ばしい匂いがカフエリ達の

お腹を鳴らす。


森の中ではずっと野草と木の実で過ごしていた。


当然の反応である。


するとベルの音が鳴る。


「今、焼きたてのパンが出来上がったよ!」


ユウは(仕方ないか…。)


香ばしい匂いのする方に行き

五つの大きいバターブレットを買ってカフエリ達に渡す。


ユウはカフエリ達の先頭を歩き

大きな噴水の前に座る。


「ここで少し休憩しましょ。」


そう言うとパンをちぎり口にする。


小麦の甘味が口の中に広がる。


頬がにやけてしまう。


カフエリ達も久し振りのご馳走だとパンにかぶりつく。


端からみていたらその光景は

肉を貪る魔物の様である。


「号外、号外、ディアロでは

大変な事が起きたよ!」


ユウは銅貨を三枚渡し


紙を手にする。


メルはそれが何かと聞くと


マレビトが普及した”シンブン”と呼ばれる情報誌だと話す。


「ふーん。ディアロ、で魔物が出たって。」


パンを口にしながらユウは

シンブンの内容を話す。


「被害は無いって。」


「何々…、紅き眼の勇者メルフォードが」


「2000体!イノセントウルフを討伐したって…。」


メルはそれを聞き驚く

イノセントウルフは群れで動く。


しかし2000体は異常な頭数である。


口からパン屑を溢しまた

シンブンの続きを読む。


「魔物科学者が言うには森が

震源地の大きな地震のせいだって。」


パンを食べ終えシンブンを

隅から隅まで読み終えると。


カフエリ達の様子を見ていた。


どうやら食べ終えたらしい。


「じゃあギルドマスターに会いに行くよ!」


そう言うとマルビロにある

ギルド『調和を愛する場所』に向かって行くのである。



◆◆


(へっへ…。)(ふざけんなよ!)


ガシャーン。


『調和を愛する場所』それは

皮肉なのか。


窓は割れ、酒瓶が転がり


如何わしい者達が彷徨く。


掃き溜め。


そう表現するのが正解だろう。


(!良い女だなぁ…。)


値踏みをするようにユウ達

女性陣を見ている。


メグラは目の前にある


岩を軽く殴ると粉砕する。


そして卑しい者達を睨みつける。


蜘蛛の子を散らす様に逃げて行く。


そこは流石である。


ユウはメグラの頭を軽く

撫で褒める。


メグラは照れていた。


頭を撫でる行為を

グランの時にはあれ程

怒っていたのに…。


ギルドの中に入るメル達は

受付に行く。


「ギルドマスターに会いたいのだけれど。」


そう言うとグランからの手紙を

受付の女の子に見せる。


「ハイ、聞いております!」


奥の部屋に通されるのである。


眼鏡をかけた女の子は

扉を三回ノックする。


そして部屋に入ると


黒いロープを纏い


独特の雰囲気を醸し出す男が

椅子にふんぞりかえっている。


「グランの使者だと!」


「あの馬鹿、今度は何の要件だ。」


そういうと手前にあるソファに座り直す。


そしてメル達に手招きをして

向かい側のソファに誘導した。


「まず手紙を見せてもらおうか。」


ユウから奪い取る様に

グランの手紙を読み始める。


(…!何、…またか…。)


手紙を読み終えた

ギルドマスターは、態度を一転させる。


「グランの使者様。」


「ご足労をありがとうございます。」


「あなた達の事は分かりました。」


「俺の名はリグルア。」


「何か困った事があれば俺に

言いなさい。」


そう言うとユウは

ギルドに登録したいと伝える。


「わかった…。後の事はマリに聞いてくれ。」


眼鏡の女の子が挨拶をする。


「では私の後をついて来て下さい。」


メル達はマリの後をついて歩く。


そして目的地まで歩く道中で

登録の流れを説明する。


まず能力の鑑定をする。


そしてギルド所属の戦士と

一対一の決闘をして登録完了となるらしい。


「はい着きました。」


「では、順番にこれに触れて下さい。」


目の前にある石に触れと話して

何かメモを書き始める。


最初にユウが石に触れる。


石が七つに増え赤くなる。


「はい炎属性ですね。」


「七つなので…。」


「聖騎士ですね、、聖騎士!」


マリは驚いていた。


聖騎士とは字の如く聖なる騎士である。


癒しと攻撃両方をこなす上級職である。


「では…、次の方。」


今度はメグラが石に触れる。


石は赤く燃え4つに割れる。


「また炎属性ですか。」


「燃えて4つに割れたので…。」


「バッ、バトルマスター!」


なんか強そうな職種にメグラは

ご機嫌になる。


バトルマスターとは

戦いにおいては達人なのである。


己の肉体のみを武器とし

あらゆる者を蹴散らす力を

持つ。


これもまた上級職の一つであった。


今度はカフエリが石に触れる


「あっ触っちゃた。」


マリの誘導を待たず

石に触れたので自分の仕事を

取られた気分であった。


石は赤くなり溶ける。


「炎属性ですね。」


「溶けちゃったから…。」


「魔法戦士…。」


魔法戦士と聞いてカフエリは

まぁいいか、とその場から離れる。


魔法戦士とは剣魔法を使用する。


この世界では魔法でしか倒せぬ魔物もいる。


しかし魔法戦士の剣魔法は

あらゆる生物に効果絶大の

威力がある。


これもまた上級職である。


マリはギルドの登録申請にて

初めての経験をしていた。


普通ならば初めての登録時は

初級職になるのが一般的なのである。


それを連続で上級職に

向いていると示され

どんな冒険をしてきた者達なのか。


その様な疑問がマリの中に渦巻く。


するとフエンが心配そうにマリの袖を掴む。


(やだ、この子可愛い。)


「怖く無いよ、この石に触れて。」


優しくフエンに石を渡す。


石が赤くなると浮かび

紫色に燃える。


「まぁ炎属性ですね。」


「浮かんで紫色に…。」


「ケ、ケ、賢者!」


賢者とは魔法のエキスパートである。


どの様な魔法でもそつなく唱える事ができる。


これも上級職の一つである。


マリはもう驚かないと心に決めた。


どうせなんかの上級職だろう。


「はい、次の方。」


メルは石に触れる。


石が綠炎に光ると更に膨れ上がり神々しく波動を放つ。


「ちょちょちょ、これは…!」


マリは慌てて誰かを呼びに行く。


リグルアが息を切らして

現れる。


「悪いがもう一度触ってもらえるか?」


そう言うと新しい石を渡す。


メルがそれを触れると再び

石が綠炎に光り膨れ上がると

神々しく波動を放つ。


その頃ギルド内の酒場では

冒険者達の酒瓶が次々に割れる事案が発生する。


因果関係は不明である。


(おい、おい、それ勇者だろ。)


動揺を見せない様にメルに


「これは特別職だ。」


「まだ詳しくは分からんがな。」


それを伝えるとグランの手紙を

改めた読み直す。


(何が弟子達を宜しくだ!)


(魔王でも、倒してきたのかあいつらは!)


あながち間違いではない。

グランがメルの修行時に

メグラ達を巻き込んだのには

理由があった。


それは経験値の共有である。

夢滅結界とはそこで倒された者の能力を得る恩恵が与えられる。


その範囲は結界内にいるものである。


つまりメルが鬼神フグエルレンを倒した時にメグラ達は

レベルアップしていたのだ。


深くため息をして助けを求めるマリを見て


「もうこれで登録は終わりだ。」


「後は書類を、書いて提出してくれれば登録完了だ。」


ユウは決闘をしなくても良いのかと聞く。


リグルアは首を横にふり必要ないと伝える。


(決闘なんぞしたら死人が出るわ!)


マリは書類を用意して


ペンをユウに渡す。


書類を書き終えてマリに渡す。


「登録完了となります。」


「しばらくはギルドの寮に住んで下さい。」


二階の階段を登り奥の大部屋を開ける鍵を渡される。


「ちなみにクラン名ですが…。」


ユウ達は大切な事を忘れていた。


クラン名、チームの名である。


これが無いと依頼を受けても

報酬が受け取れない。


「今から考えるので待って下さい!」


マリの話しを聞かずに

自分達の部屋にメル達は入って行く。


(もう名前決まっているのに…。)


またメル達一行は、

部屋にて緊急会議を始める。


それはチーム名を決める会議である。


メルは「パン。」


メグラは「獣王デストロイヤー。」


カフエリは「何でも良いんじゃない。」


フエンは紙に(花の名前がいい。)と書いて渡す。


ユウは悩んだ。


クランの名前は、一生使用するのだから。


気がつくと次の朝になっていた。


ユウは悩みに悩んだクラン名を

書いた紙を握り締め

受付のマリと話す。


するとマリは

「えっ、もうクラン名決めてあるので登録しましたよ!」


ユウは驚く。


「グラン様が”月の雨”が良いと手紙に書いてあったので…。」


疲れ切ったユウは無防備な状態でその場で眠るのである。


メルは騒がしいと起きて一階に降りると涎を垂らしている寝ている

ユウを抱えて二階の部屋に戻って行くのである。


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