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ボウソウ

メルに、また新たな異変が起こる。


鬼神フグエルレンを倒したせいなのか。


右手が黒く、黒く染まる。


闇の、綠炎の力が宿ったのか。


触るもの全て燃える。


それは予期せぬ弊害となる。


メルが触れる場所が燃えるので


落ち葉や枯れ木に火が移る。


バシャー…。ぴしゃり、ポタッ。



慌ててカフエリが川の水をかけて消す。



「ちょっとメル止めてよ!」


メルは制御できず無情に

熱を放ち続ける右手を眺めていた。



するとフエンがメルの右手に

そっと触れ掴む。


ジュ。「…!…、。」


「フエン!」メルは右手をフエンから離すが強く握った手を離さない。


肉の焦げる臭いがする。


メルは様々な事を考えた。


右手を切り落とすか。


(いや熱が収まるとは思えない。)


魔力を抑える事ができれば。


(やり方がわからない。)


自らの命を絶てば。


(まだ形見を渡していない。)


フエンが焼ける痛みと苦しみで

苦痛に表情が歪む。


どうしよう、たすけて


だれか


フエンが、苦しんでいる、


わからないわからない

わからないわからない、

わからないわからないわからない…。


グランは黙って様子を見ている。


メルを助けたのは以外な人物であった。


鬼神フグエルレンである。


(落ち着けメル。)


(我を打ち取ったのだ。)


(お前なら、必ずできる。)


フグエルレンの声が魂に

語りかける。


やる!


メルは全ての感情を

右手へと向ける。


(誰も傷付けない!)


それに呼応するかの様に

綠炎に燃える右手から溢れる

魔力が徐々に収まる。


(そうだ、メル…。)


フエンは、メルの右手を

掴んだまま痛みと苦痛により

気絶する。


フエンの両手は熔け、

メルの右手に張り付いている。


ユウはフエンの元に走り寄り

神の力を行使する。


「エワカ!」


両手から淡く暖かい光が

放たれフエンの手を照らす。


しかし、黒く焼け焦げた

フエンの手を完治させる程の

力は無かった。


フエンは、両手を失うのか。


肉の焦げる臭いと

重い空気が立ち込める。


先ほどからずっと

黙って見ていたグランは


「メル!エルレンの力を借りなさい。」


その言葉でメルはすぐに

自分の中にいるフグエルレンに

祈る様に語りかける。


メルの左手からも紅く燃える炎が出る。


だがこの炎は破壊の炎では無い


その炎から火花が落ちる。


落ちた火花は枯れ草に触れる。


すると…。


土に帰る筈の枯れ草が命溢れる

瑞々しい新緑へと変わる。


「ユウ、フエン、治す。」


「同時、またやる!」


ユウはメルの必死な表情を見つめ頷く。


「エワカ!」


「ルメイド!」


偶然なのかこれは、古に失われた神魔魔法と呼ばれるものであった。


その効果は絶大で死者をも

蘇らせる。


そう伝えれられていた。


真相を知るものはもういない。


だが…。


現実にフエンの溶けた皮膚が

みるみると再生されていく。


火傷の跡など何一つ残らず完治する。


ユウは「このばか…。」

と泣きながらフエンを

抱き締めていた。


その姿がメルの心を締め付けた。


メルは、また誰かを傷つける。


その事を恐れその場から


静かに離れて行った。



恐怖に追いかけられる。


強靭な肉体を持つ筈のメル。


木々の枝を避けずに走り


皮膚を傷付ける。


赤い血が葉や地面に垂れる。


「おいっ、メル、行くな!」


息を切らしメグラが背後で


叫ぶ。


振り向けば心が揺らぐ。


メルは、駆け抜ける。


どのくらい走ったのだろうか。


気がつけば森を抜け


腰ほどの草が生い茂る


草原に一人立っている。



もう戻れない。


でも楽しかった。


夜、空から光る水滴は


メルの心境と共鳴しているかのようだった。


冷たい…。寒い…。痛い…。


何で? 知らない。 化物だから。


◆◆


「ふ~ん…。君は、仲間から、逃げるの?」



視界の悪い雨の中。


メルの神経を逆撫でる声がする。


「うるさい!」


「何が、分かる、っ。」


自分の右手を痛め付ける様に

地面に怒りを不安をぶつける。


ガンッ、ブチャ、グン。


幼き子供の様に…。


「強者になりたいのだろう?」


(違う、違う、もういい。)


「形見を持ち主に返したいのだろう?」


(怖い、怖い、会ったら壊す。)


「僕と戦ってみたいのだろう?」


(化物…。化物だから…。)



「……………………。」


(消えたい。)


「返事が無いなら僕は約束破るよ。」


(約束?)


「仲間の安全を保証する事。」


(…!)


「だって君には関係無いだろ。」


メルは声のする方に向かう。


「約束は、守れ!」


優しき化物は、強者に殺気を

込めた言葉を投げ掛ける。


「守って欲しいなら、逃げるな!」


すると背後から複数の足音が

聴こえる。


「はぁはぁ、やっと、、見つけた。」


雲が割れる。


夜空の月が雲の割れ目から覗く。


その臼暗い光がぼんやりと


足音の持ち主達を照す。


「ケヒャヒャ。」


「演者は揃ったね。」


指を鳴らし手を叩く。


何故だろう。視界が、思考が、明確化する。


月明かりに照されて薄紫色の髪がキラキラと星屑の様に光る。


(きれい。なかま?)


肌が弱々しく白い。

蒼い瞳を持つ魔族のフエン。


メルに”もう大丈夫”と伝えたいのだろう。


その柔らかく小さな両手で

黒き右手を握り締める。


恐怖なのか手を払い除けようとする。


「こわしたくない。」


今度は茶色い肌がより

しなやかな筋肉を際立たせる。


猫の様に瞳が黒く細長い。


黄色い瞳の奥には、

優しさと、野生の強さを

物語る、獣人メグラがメルの

逃がさんといわんバカリに

手を強く握り締める。


「やめろ…。」


青く細長い髪が雨に濡れて

いる。


耳の尖った森人カフエリ


身長は180cm位のメルより


遥かに小さく幼い見た目である。


「今度は私達がメルを守る。」


強い意思を持つその優しき瞳

はメルの冷たき壁を溶かそうとする。


(…。こわい。こわしたくない。)


「はぁ~。年は取りたくないわね。」


赤茶色の短い髪。


人間族特有の黒い瞳を持つ


優しき慈愛を持つ彼女はユウ


奴隷だったとは思えぬ

知性と信念を彼女から感じる。


ふくよかな身体で母親の様に


皆を包み込む様に抱き締める。


「メル。大丈夫、何も怖くない。」


(……いい匂い。)


白いローブを纏う痩せ細った男がフードをめくる。


銀色の長い髪と右側の顔に

深い火傷跡がある。


メルとは違う。


朱色の瞳が全てを見透す様に

動けぬメルを覗き込む。


「君より化物みたいだろう?」


自分の顔を指差し道化の様に

おどける。


彼なりに元気づけようとしているのだろう。


「君の大切な仲間は答えたよ。」


「今度は君が答える番だ。」


(一緒にいたい…。)


メルは覚悟を決めたのか。


「もう逃げない!」


その一言を聞くとニヤリと笑う。


グランは変化の手袋と王家の紋章が印字してある手紙をメルに渡す。


西の都”マルビロ”に行き


ギルドマスターに手紙を渡してと話す。



そしてメルの耳元で


「仲間を守り続けなさい。」


「時期が来たら形見の持ち主に会わせるよ。」


そう告げると王国ディアロに

銀色の髪をなびかせ夜空を

飛んで行く。


メルの口角が上がっていた。






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