ボウキャクノチカラ
ベチャバチャ…。ゲホッゲホッ。
咳が出る。そして熱を帯び、少し身体が
だるいカフエリとフエン。
爆炎の雨が次々とサモデスへと
降り注ぐ。
「フエン…。待って、サモデスから血を取らないと…。」
肩が上下している。
そして呼吸が乱れるカフエリ。
「あれ…。動けなくさせるのが先。」
淡々と敵の手足を焼き、動きを
潰していくフエン。
「おまエは、ばけモノか?」
古代の悪魔サモデスは、生まれて初めて
”恐怖”と”憎悪”というものを感じていた。
二千年もの時代を生き抜いてきた魔物は
歯を喰い縛る。
たかが生まれて数十年程度の
魔族とエルフの子供相手に翻弄され
手も足も出ない自分に苛立つ。
邪病の毒を吐けばフエンに
焼き尽くされ、高速で動けば
カフエリに足を切り落とされる。
すぐに再生させるがそれが
追い付かない程に二人から
与えられる傷が深く重い。
しまいにはフエンが傷口を炎で焼き
塞がるのを防いでしまう。
サモデスは、肉体の形を変え、小さく
飛び散るが、一瞬でカフエリに切り刻まれる。
一見すると、カフエリとフエンの優勢だと誰もが思う。
だが…。
身体が重く気だるいカフエリとフエン。
動きと反応が徐々に鈍くなっていく。
二人は、地面に膝を付き立てなくなる。
(ヤッと…キイてキタか。)
サモデスは二人の猛攻により
肉体が激しく損傷していた。
飛び散る己の肉片を一つずつ、ゆっくりと
口に運び、喰らうとニヤリと笑う。
そうサモデスは、時間を稼げれば、それで
良かった。
邪病は、サモデスが産み出した細菌を吸い込む事で感染する。
そして…。
邪病に感染した亡骸や元凶でもあるサモデスの血液が其処ら中に散乱している。
ミレイもそれを吸い込む事で
あのように弱ってしまう。
カフエリとフエンも
邪病の細菌を、本人達も気付かぬ内に、
吸い込み体内へと取り込んでしまった。
小さく惨めな肉塊となったサモデスでも
今の弱った二人を喰らう事など造作も無い。
勝利を確信している化物。
じわり、じわりと二人の傍へと
近づく。
「アれ…。オれダレだ?」
急に動きが止まるサモデス。
いきなり視界が暗くなり何も見えない。
「ミエない…。ドウしテだ…?」
その場から動かず眼は見開いたまま空を眺めている。
「………………。」
どこからか現れるミサキ。
「駄目よ…。周りの気配も少しは気にしないと。」
「まぁ…。もう何も感じないだろうけど。」
冷たく微笑む、その瞳が慈愛に満ちている。
サモデスは、ミサキの『忘却』により、
自分を忘れ、五感を忘れ、最後には感情も
忘れてしまう。
今のサモデスは、ただ呼吸を
している血の詰まった袋である。
「はぁ…。どうしましょう。」
倒れている三人を眺めているミサキ。
カフエリの背負い袋をまさぐり何かを探していた。
「あった、あった。」
ミサキはゴレフォンを取り出すと何処かへ
連絡をしている。




