表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/61

カンセン



夕焼けの紅い空。


陽炎の町にある丘に、天高く伸びる巨木。


黄色い豆が生るメナの木。


太き木の枝には二人の影がある。


「まだ…帰ってこないね、メル。」


足を”ぷらぷら”させながら遠くに視線を送るカフエリ。


「コアは…遠いからね。」


ガッコウの図書館で借りた

魔道書を読むフエン。


二人はガッコウ帰りに

このメナの木からコアの方角を見るのが日課になっていた。


すると、灼熱の砂漠をゆらゆらと動く影が見える。


「ねぇ、フエン。あれ…なんだと思う?」


目を細め影の方を指差す、カフエリ。


「う~ん…わかんない。」


自分の瞳に精神を集中させる

フエン。


「風に聞いてみる。」


カフエリは心を閉じて風の精霊達に語りかける。


白い靄がフワリとカフエリの周りに集まる。


(アノネ、ヒトガ、タオレテルヨ。)


風達がカフエリに囁き教えてくる。


その事をフエンに伝えると頷き、指先から炎の鳥を生み出すと、アユムの元へと飛ばす。


ガッコウで精霊について学んでから、精霊に興味を持つ様になった二人。


エルフの姉クリエラに相談するとカフエリは、風の精霊との

会話が出来る様になる。


クリエラが言うには、風の精霊との会話や力を借りるのは

エルフなら当然にできる事らしい。


フエンもクリエラから

精霊の扱い方を学ぶのだが…。


いきなり、炎の精霊を召還して

自由自在に操る。


驚いたクリエラはアユムに

その事を伝えるが

「凄いね、賢者になれるかも。」と軽く返される。


いくら魔族とはいえ生きている精霊を召還して操るのは至難の技。


まだ魔道について学び始めた

ばかりのフエン。


それを、いとも容易くこなしてしまう事に感心するグラン。


グランは、以前にフエンから

メルの力になるには、どうすればいい、と相談されていた。


「メルの為に…。そして自分の為に魔道を極めなさい。」


その試練としてガッコウの

図書館にある全ての魔道書を読む事。


そして魔法について理解を深める事。


賢者としての経験を元にグランはこの二つをフエンに宿題として伝えた。


それ以来フエンは、魔法について熱心に学ぶ様になる。


雰囲気がどこか落ち着き

大人びたフエンに、戸惑うカフエリ。


少しフエンとの距離を感じていた。


◆◆


フエンからの伝言を聞いた

アユムは、探査用ゴーレムを送り出す。


人影の正体は、どうやら、人間族の

王国ディロアからミレイが密かに助けだした

人間族の母と子だった。


ミレイはカフエリとフエンの

一件に心を痛め『トロイの木馬』に入り、

奴隷解放を進めていた。


贖罪のつもりだろうか…。


本人だけにしかわからない。


アユムは、少し違和感を感じていた。


もしミレイが助けだしたので

あれば母と子の傍にいる筈である。


探査用ゴーレムの目線を借りて

アユムは、質問を繰り返すが(透視)の能力を使っても嘘偽りの類いは無い。


とりあえず、このままにはしておけないと、陽炎の町へ衰弱していた母と子を探査ゴーレム達が運ぶ。


◆◆


「おぉーい、クレアァ~、いるかぁ~?」


診療所の扉を叩くアユム。


「うるせぇーなぁ…。テメェはよ!!」


「だいたい…。おめぇの服は、目がチカチカして吐き気すんだよ!!」


ぼさぼさの黒髪を後ろに束ね

黒渕の眼鏡を掛ける女性。


診療所の中は、すこぶる酒臭い。


赤ら顔に足元はふらつき口臭も酒と

酸味の強い何かの香りが喋る度に撒き散らす。


着ている白衣もシワと染みが

目立ちもうどのくらい、洗っていないのかもわからない。


見た目は蒼い瞳と白い肌、背丈も細身で見た目も美しい女性。


そしてどこかミサキとも雰囲気が似ている。


この者は『クレア・エルフォード』ミサキの妹らしい。


アユムを含め二人を知るもの達はその事に

ついて疑いを持つ。


そして陽炎の町、唯一の医師である。


この前の世界では看護師をしていたらしい。


トウキョウという場所に住んでいたが夜中に酒を飲みながらお風呂に入り寝ていた。


気が付くとアルメーリアの平原で目が覚める。


色々あって、陽炎の町に住むようなった。


そこでミサキにあった時は泣いて喜んでいたが、今は酒浸りの駄目人間である。


クレアの能力は『酒治療』『酒分析』

『無敵肝臓』である。


酒を、飲めば飲む程に能力が

上がるらしい。


無敵肝臓は、酒で身体が壊れない為の配慮なのであろうか…。


アユムは自分の鼻をつまみ


「ごぉめん。…急患なんだ見てくれ…。」


銀貨が入った袋を机の上に

ドシャッと置く。


「まぁ…。金を払えば文句はねぇ。」


にやにやと笑うクレア


放つ言葉と見た目のバランスが全く噛み合わない。


「連れてきな!」


アユムは母と子を運び

奥の診察台へと連れて行く。


激しく咳き込む母と子。


クレアの表情が急に険しくなる。


「こ…此れは、血魔の呼び声だ!」


「おい!!アユム!今すぐこの辺一体を消毒しろ!」


「あと、この場所へは誰も近寄らせるな!」


一気に酒瓶の酒を飲み干すクレア。


『ティプルリカバリー』


両手から暖かく目映い光が放たれると母と子を包みこむ。


『トレース(消毒兼清掃ゴーレム)』


メチルアルコールと雑巾を持ち、エプロンを身に付けた石人形達が、診療所の外に現れる。


そして、母と子が通ってきた場所を

ひたすら消毒していた。


「なぁ…僕達、感染したかなぁ?」


「…ウック…。その可能性は高い。」


「…ウィ…ゲプ…。まぁ感染してたら直ぐに分かるよ。3日で血を吐いて死ぬからよ。」


「3日後に生きてりゃ、感染してねぇな。」


深くため息をつくアユム。


「ちなみにそっちは治りそう?」


「知らねぇ。やるだけ…グプ。やる。」


「ワリィが、酒を造れるかアユム。」


頷き、黙々と飲みやすくアルコール度数の高い酒を産み出すアユム。


(はぁ…グランがいればなぁ…。)


魔物となった母親の元へ向かったグラン。


アユムは、物思いにふけっていた。


クレアはアユムの作る酒を飲みながら治療に専念している。


この緊急事態は直ぐに陽炎の町全体に伝わる。


その一報がカフエリやフエンにも伝わった。


「ねぇ…。どうしよう、カフエリ。」


癖で手の爪を噛むフエン。


「メル…、メルなら、どうするかな…。」


腕を組み考えるカフエリ。


「先生!ミサキ先生に聞いてみよう、何か分かるかも。」


頷くと炎を纏う大きな鳥を生み出すフエン。


二人はその背中に乗りガッコウへと向かう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ