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ヘンカ



夕闇の静けさ。


二つの灯りがゆらゆらと揺れる。


何故か誰一人、町人の影がない


気配も隠れ潜む息遣いすらも感じない。


「アユムさんは、危険です。」


大きな錬金釜を背負う青年が、

真剣な眼差しでメルを見詰める。


辺りの異様な違和感が不気味に感じたメルは、嗅覚に神経を集中させた。


気配は背後に四つ、

カフエリ、フエン、フグエルレン、

そしてカフエリの姉クリエラ。


そして正面にはユウトとミレイ。


だが…。メルは更にもう二つの

得体の知れない巨大な何かを

感じていた。


綠炎の剣をより低く前屈に構え、右足へと力を込めた。


その力に耐えきれず石畳が砕ける。


何故ならばメルの背後には大切な者がいる。


この構えは一瞬でユウトとミレイを切り捨て、得体の知れない何か。


明らかに強者である二つの気配に対応する為の唯一の策である。


綠炎の剣が熱を帯び空間が歪む。


「『時の細剣』翡翠!」


ミレイが水晶の様に虹色に煌めくレイピアを構える。


二人を中心に凄まじい戦気が

集中し町並みの窓ガラスは次々と割れる。


「ちょっ、ちょっと待って下さい!」


「メルさん話しを、最後まで聞いて!」


メルとミレイの間にユウトは割って入り、

必死で止めようとする。


だがメルは「ユウト、すまない…。」


「アユムは、友だ。」


それだけ伝え、構えを解かない。


ミレイは凄まじいメルの威圧感に絶対的な死を感じる。


手が震えレイピアの剣先が微々と揺れる。


数々の戦いを繰り広げ、生き抜いて来た強者ミレイ。


決して死に対して恐れを抱くなど無い。


それ故に今までは生を勝ち取る事が出来た。


だが…今回は違う。


メルは、敗北など許されない。


負けた時点で、愛しき者達の命運も尽きるからである。


その覚悟が想いが並々ならぬ

威圧感へと変わるのだった。


気が付けばミレイは一歩後ずさり震えている。


息を深く吸うメルが動くその刹那。


ギィン!と見覚えのある曲剣が


メルの目の前に突き刺さる。


ミレイ達の背後から手を叩き歩いて来る二人


「ごめん、ごめん!」


ピンクのタキシードを着ているアユム。


そして銀色の長い髪が揺らめき

不気味な笑い声を放つ男。


メルは月明かりで照らされ顔が見える。


顔に火傷がある男が


「ケヒャヒャヒャ!本当に暝砡の者なのか?」


アユムに聞いていた。


「あぁ、グラン、メルと言うけど面白い奴でしょ。」


異質な者を見てカフエリとフエンは表情が更に強張る。


メルは構えを解くと少し不機嫌になる。


「アユムこれは、どういう事だ!」


曲剣をへし折り、怒鳴るメル。


それに対して飄々と語るアユム。


「実はさ…僕、反乱起こそうとしてんだよね。」


「『トロイの木馬』を作ったのも僕だしね。」


「メルには、悪いけど本当に協力してくれるか試したんだ。」


それを聞いていたフグエルレンも会話に入る。


「試すとは?」


不敵に笑みを浮かべるアユム。


「神ノボルは恐ろしく強い。」


「だから。本当の仲間が必要なのさ。」


「メルは合格したよ。」


もはや話しの内容が理解できないでいる

メル達。


「まぁ立ち話もなんだし部屋に入らない?」


アユムはメル達の仮住まいに入って行く。


メルは綠炎の剣を消すとカフエリとフエンの側に歩いて行く。


ユウトは涙目になっていたがローブの裾で

拭っていた。


ミレイも細剣を解き殺気を収める。


そしてゆっくりとメル達の方へ近づくミレイ。


「君達には酷い事をした。」


「本当に…。すまない。」


カフエリとフエンに頭を下げるミレイ。


その様子の変化に戸惑うカフエリとフエンは言葉を失う。


その様子を見ているユウトとグラン。


メルは幼き子達を抱き抱えると


「ミレイ。今は待って欲しい。」


それだけ伝え仮住まいに戻って行くのである。


カフエリとフエンはメルの胸に顔を埋め震える。


(やはり…無理か。)


ミレイはうつむき、言葉を飲み込むと後を

ついては行くしかなかった。


その背中を支えるユウトの瞳は、慈愛に満ちていた。


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