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フタリ



薄暗く静かな部屋。


幾つものモニターを眺め笑う

白きロープを纏う男。


モニターの仄かな明かりで

光る獣の眼。


白きローブを纏う男の傍にて

その獣はくつろいでいた。


男はその獣の頭を愛でるかの様に優しく触れる。


グルルゥ…。


呼吸は荒く、目が血走る獣。


鋭く赤黒い牙から生臭い息が漏れる。


その獣は獅子の顔と爪を持ち

背中には鳥の様な翼がある。


そして尾の先から緑の液体が

ポタリと垂れ、石畳に触れる。


すると独特な腐敗臭と共に小石が溶けてしまう。


この獣はマンティコア、本来ならばこの世界では存在しない獣であった。


神ノボルが創造し生み出した獣である。


ザッ…ザッ…ザッ…。


不揃いの冷たくごつごつした

床に何か擦れる音が近付いて

来る。


額に数字の2が刻まれた

マンティコアが咥えていたモノを男の前にさしだす。


右手に布の手袋をはめている

長髪で顔立ちの整った大男。


そして見た事もない


綠炎色の鮮やかな鱗を持つ、

いびきと歯ぎしりがうるさい

小さき飛龍。


その二つは寝息をたてている。


「ククク…。御苦労様。こいつらを貯蔵庫に入れて置いて。」


男の言葉が分かるのか、

獣はその二人を咥え引きずり

何処かへ連れて行くのであった。


ガルルフ!


額に1と刻まれたマンティコアが巨体な身体をすり寄らし甘える。


白きローブを纏う男は一言


「そうか…お腹が空いたか。」


笑みを浮かべ、立ち上がる。


そして奥にある部屋へと獣を

連れて歩く。


「おい…ここは何処だ!?」


「たっ、…確かに、森から出た筈だ!」


鉄格子の向こうで叫び

慌てふためく、

バンダナを首に巻く男。


白きローブを纏う男が、鉄格子の鍵を開け扉を開くと、叫ぶ男に語りかける。


「ククク…、違うよ…。」


「森から、出たんじゃないよ

“覚めた”んだよ。」


異質な雰囲気を放つ男を睨み付けるバンダナの男。


開けられた扉から勢いよく走り逃げ出す。


すると獣を傍に従える男は

数を数え始めた。


「い~ち、に~い、さ~ん…。」


そして10と数え終わると

獣に、視線を送る。


凄まじい速度で逃げる男を追いかけて行く。


白きローブの男から姿が見えない距離まで走りさると


向こう側から悲鳴と骨を砕き

肉を裂く音が聴こえてきた。


踵を返し、モニターのある部屋へと戻って行く。


ゴレゴレゴレ…。


聞き覚えのある音が鳴る。


白きローブを纏う男は懐から

音を発する石ころを取り出し

耳に当てた。


(もしもし、アユムだけど、マイダ?でいいよね。)


(そっちに暝砡の者が行った?)


言葉に軽い印象を感じ取れた。


「あぁ…ノボル様の言う通りに、来たよ。」


「しかも、簡単に捕まえれた。」


「後は…、僕の好きにしても良いかな?…。」


そう言うとニタリと笑う。


(まぁ良いんじゃない…。それと悪夢の力を過信しない方が良いよ。)


(君がもし…倒されたら。)


(七人の守護天使が一人欠けると、色々と面倒だからね。)


するとブツという音と共に通話が途切れた。


鼻で笑う白きローブの男。


彼の名はマイダナナヤ。


七人の天使サリエル、

またの名を悪夢と百役の悪魔と呼ばれるマレビトである。


彼の能力はその名が示す通り


寝ている者の夢を自在に操り

その者に悪夢と地獄を見せる。


夢の中でもしその者が死んだ場合。


現実でもその通りになってしまう。


眠る者ならば誰の夢でも

簡単に入れてしまう。


そして夢の中に捕えてしまう。


更に結界等通じない。


そう寝る限り、防ぎ様が無いのだ。


そして先ほど連れられて来た者。


それはメルとフグエルレンであった。


夢と同じ行動をしてしまった

メルとフグエルレンは寝たまま

安全な結界から出てしまったのである。


そしてマイダが使役する

マンティコアに運ばれてしまったのだ。


では結界内にいた筈のカフエリとフエンはどうなったのか…。


いきなり寝ながら結界の外に

出てしまったメルとフグエルレン。


そのままマンティコアに咥えられて行くのを見ていた。


最初は直ぐに助け出そうと

考えたが、フエンの一言で


「強くて、嫌な気配がする。」


カフエリは村正を収め様子を

見る事にした。


そして現在、気配を殺し

マンティコアを尾行した事により


見事にマイダの根城へとたどり着いたのだ。


そんな事等、露知らずマイダは、自分の思惑通りになっているのを喜んでいた。


だが…ここで一つ疑問が残る。


何故カフエリとフエンが夢の中に囚われなかったのか。


カフエリとフエンはずっと

暗闇の中、時間になると言葉では現せない

地獄をフジサワに与えられ続けた。


その恐怖が眠る事を拒む。


そして一晩中メルの懐にしがみついていたのである。


温かく少し汗臭いメルの傍にいると二人は

恐怖が何故か薄れ安らぐ。


やっと睡魔がカフエリとフエンの元に現れ始めるが…。


いきなりメル達が、何かを叫びながら結界の外に出て行ってしまった。


そのせいで眠る事なく


その結果。


マイダの悪夢(ナイトメア)

防ぐ事が出来たのである。


「ねぇ…。神の人だよ…。」


不安そうにしているフエン。


「早くメル達を助けないと…。」


村正を握り締め、勇気をふりしぼるカフエリ。


二人は貯蔵庫と呼ばれる所へと向かうのであった。


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