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ノコサレタモノ


グォ〜、ガガァ~ぎりぎり……。


フグエルレンの口から放たれた

いびきと歯ぎしりが奏でるハーモニーで

一睡も出来なかったメル。


日の光が結界に射し込む。


朝が来た。


これはGOMINIを取り込んだ

メルだからこそ出来る事であった。


アルメーリアの魔法は基本的には両極端である。


あれはいいけどこれはダメだと微調整が

出来ない。


無理に行えば、思わぬ弊害が生じるのだ。

つまり日の光だけを通す結界を造るとなれば、それだけ結界の強度も脆くなる。


だがメルは、それを可能とする結界を見事に作ってしまった。


アルメーリアの魔法史に載る程の凄い事なのだが…。


少し不機嫌そうにするメル。


「フグエルレン…、うるさい!」


気持ち良さげに寝ている飛龍を摘まむ。


何となくだが以前よりも丸く肥った気がする。


ぶらぶらと揺れる小さな飛龍。


まだ涎を垂らして寝ている。


深くため息をするメル。


「うぅん…。おはようメル。」


背筋を伸ばすカフエリ。


「おは、ようメ、ル…。」


まだ眠いのか、まぶたを擦るフエン。


メル達は、まだ湿り気の

残るテントを静かに畳み始める。


(……………。)


外の気配を感じたのだろうか、ふと、

吸い寄せられる様に結界の外へ歩み寄ろうとしたカフエリ。


「ダメだ、離れるな!」


メルの鋭い声がそれを制した。


三人で手際よく荷物をまとめる。


いびきが止まり静かになる。


ようやく目を覚ましたフグエルレンを交えて、メルは外の嫌な気配について

口を開く。


「昨日の夜から…、ずっと嫌な気配がする。」


「これからの動きを話す。」


だが作戦というよりは安全策と例える方が

正しいだろう。


フエンとカフエリは自分が戻るまで待機。


フグエルレンがカフエリ達を見守りながら結界の中で待機する。


だが、その言葉が終わる前に

カフエリとフエンが声を荒らげた。


「私達も戦える!メルから離れない!」


「嫌だ。メルについて行く。」


失いたくない、離れたら

一人ぼっちになる、孤独という恐れと

必死の拒絶。


「ごめん、守りながらだと、戦えない。」


優しく諭すメルだったが、

少女たちの瞳には強い決意が宿っていた。


見かねたフグエルレンが、

小さな翼をパタパタと羽ばたかせる。


そして、少しおもくなった身体を揺らして

割って入る。


「いいか、まずは俺とメルが外を見る。」


「大したことがなけりゃ、合流して全員で叩けばいい。」


「それでどうだ?」


その妥協案に、二人はようやく小さく頷いた。


◆◆


メルが先頭に立ち、フグエルレンが周囲を

警戒しながら結界の外へと足を踏み出す。


そこで二人が目にしたのは、


血に飢えた魔物や亡者達ではなかった。

そこにいたのは、出口を求めて

彷徨う、やつれ果てた様々な

種族の者たちだった。


一人の蠍の刺繍がついている

レザーアーマーをつけた男が近寄る。


「何のようだ!」


メルは威嚇する様に睨む。


「まぁ落ち着けって。」


「俺はソリッド。あんたは?」


地面に座り、敵意が無いと両手をあげる。


メルは嗅覚に神経を集中させながら男の前に座る。


「俺の名はメル。あっちはフグエルレン。」


「あんた達は、何故ここに集まっている?」


周囲を警戒しながらソリッドに問い掛ける。


ソリッドは頭を掻いている。


白い粉粒がひらひらと舞う。


そして重い口を開きこの森について語り出す。


“森の声”が聴こえ選択肢を与えられる。


それは誰か一人だけ残れば後は無事に外に出られる。


勿論、選択肢を拒否する者もいる。


だがその時は皆、一瞬で森の一部となる。


周辺の木々を指差すソリッド。


ウゥ…、アァ…。


木々から呻き声が聴こえる。


そして残る者は刻印を刻まれる。


そう言うとソリッドはレザーアーマーを

捲り肌をメル達に見せた。


黒い蕀の刺青が上半身を覆っていた。


『隠しの森』には、あまりにも残酷な闇の魔法が根付いていたのだ。


「誰か一人……一人を残せば、外に出られるんだ……」


誰かが力なく呟く。


パーティーのうち、必ず一人を森に捧げなければ、他の者は決して外へは出られない。


そして、その「生贄」に選ばれるのは決まって、仲間の中心となる主要メンバーや、皆を導くリーダーであった。


呪いに選ばれた者の身体には、

不気味な黒い棘の刺青が浮かび上がる。


その棘が毒蛇のように這い上がる。


顔まで達した時は、その者は自我を失い、

森を形作る木々の一部となって消えてしまう。


この時にメルとフグエルレンは冒険者達の

意図を理解した。


自分達が外に出る為にメル達を捕まえようとしていたのだろう。


絶望に染まった森の住人たちが、虚ろな瞳で新しい”獲物”であるメルたちを見つめていた。


そしてGOMINIの地図ではここは隠しの森ではなかった。


誤差がある事の意味をこの時はまだ気づかない。



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