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ソバニイル


ザク、ザク、ザク。


手で静かに穴を掘るメル。


全身が土で汚れていた。


その姿を不思議そうに眺める、

カフエリとフエン。

なぜそんな事をするのかと問う二人に、

メルは答える。


「大切な者が安らかに眠れるよう、弔うためだよ」


その言葉に、フグエルレンは息を呑んだ。

カタコトだったはずの

メルの口から、流暢で穏やかな言葉が

紡がれたからだ。


フエンとカフエリもGOMINIの弔う為の

穴掘りを手伝う。


メルはその姿に何故か笑ってしまう。


おそらく以前に仲間達と話した事を

思い出したのだろう。


自分も同じ事を仲間に聞いてフエンと

カフエリの様に穴掘りを手伝った。


その記憶が鮮明に思い出される。


(まさかこんな日が来るとは…。)


GOMINIを優しく抱き抱えると、

そっと墓穴に置いて土を上にかける。


石を乗せてやっと見つけた、

一輪の花を手向ける。


手を合わせるメル。


フエンとカフエリもその真似をする。


そして立ち上がると北の方へと

足を向けて歩く。


フエン


カフエリ


フグエルレンも


その後を追いかけて、行くのであった。


◆◆


「フエン、陽炎の町まではまだ遠いが。歩けるか?」


「カフエリ、お腹は空いていないかな?」


「おーい、フグエルレン、空から周囲を見渡してくれるか?」


的確に、そして普通に話すメル。


フグエルレンは戸惑い、どぎまぎしながら「おっ、おう……」と返すのが精一杯だった。


目的地まではあと100キロ。


そこへ至るには『隠しの森』を

通らねばならない。


入れば必ず、誰にも気づかれぬまま一人が

消える。


死体すら見つからぬ呪われた森。


メルはGOMINIの知識をなぞり、

その不気味な道程を見据えていた。


一行は川辺で休息をとることにした。


メルは防音と隠蔽の結界を張り、

GOMINIが以前に持っていた布袋から

テントを取り出す。


かつては組み立てられなかったテントを、

今のメルは、一人で完璧に張り終え、

仲間にテキパキと指示を出す。


そのリーダーらしい姿に、

フグエルレンは落ち着かない。


だが、以前のメルを知らない

二人の少女は、その背中に

強い憧れと安心感を抱いていた。


食事の時間。

メルが配った乾燥パンを、

フグエルレンは黙々と食べる。


しかし、カフエリとフエンは、何故か

手をつけない。


フグエルレンが理由を尋ねた。


「ご主人様より…先に食べちゃいけないの。」


フエンが教えてくれた。


奴隷として刻み込まれた、悲しき教育の証。


売られる側の「裏の民」として。


女の子として、夜の作法すら、仕込まれてきた二人。


フジサワから受けた、酷い仕打ちが、

今も二人の心を縛り付けていた。


メルは、そんな二人にそっと寄り添う。


「もう二人は奴隷じゃない。僕の家族だ。」


「大丈夫、、食べな。」


優しく頭を撫でるメルの手。


叩かれる時、殴られる時。


いつも目をつむってしまう二人だったが、


メルのごつごつした手は、ただ暖かく

優しかった。


カフエリとフエンは、メルの中に、

顔も知らぬ父親の影を見たのだろう。


眠る時、二人はメルの側を離れようと

しない。


足が痺れ、様子を見に外へ出ようとした

メルだったが、離れようとすれば二人はすぐに目を覚まし、泣きそうな目でメルを探す。


結局、眠りにつくまで側を離れぬことを決めたメル。


だが、結界の外には「何か」がいる。


メルの張った結界は並みの者では破壊できない。


そして強くは無いが、複数の嫌な気配。


正体の知れぬ何かが、

闇の中で一行を狙っている。


幼い二人安心して寝ている安らかな寝息を

聴いていたメル。


(守らなくては…。)


メルにとって、かつてない不安が夜の闇に

混じり始めていた。




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