ダッシュツ
「この世界は、150年後に滅ぶ。」
ノボルの言葉にユウトは、思わず
「なっ、な、何を言ってんですか?!」
ユウトは必死で胸に手を当て呼吸を整える。
そして心を落ち着かせようとする。
(これは、きっと何かの、いや絶対に罠だ…。)
また不気味に笑うノボル。
「そうだよね…普通。」
「でも、事実だから。」
その表情には、偽りが無いように感じたユウト。
「それは、防ぐ事が出来ないのですか!?」
真っ直ぐに自分の事を見つめるユウトが何故か愛おしく思う
ノボル。
その瞳が息子グランと
似ていたからなのかも知れない。
「あるよ…。一つだけ方法がね。」
「私を…暝砡の血を継ぐメルが取り込む。」
「それを凝縮して結晶化できれば…。」
「この世界は、助かるよ。」
もう頭の中で整理がつかない
ユウト。
まさか神の頂点。
いわば自分達の敵である者のトップから伝えられるとは
考えてもいなかった。
そしてノボルは、悲しげな笑みを浮かべる。
会ったばかりの素性も分からぬ者の肩を力強く掴み
「私が…私では無くなった時。」
「暝砡の血を継ぐ者が…メルがメルでは無くなった時。」
「必ず止めて欲しい…。」
「そして、残された者達を導いてくれ。」
ユウトはただ漠然と立ちすくんでいた。
◆◆◆
その頃メルは、
ペンダントの光を頼りに
ひたすらフエンとカフエリの
居場所へと走っていた。
すると光りの筋が灰色の分厚い壁の向こうを示す。
「フン!」
グォンドンッッ!
メルは何の躊躇もなく壁を殴り
粉砕する。
「、…?!」
日の光が一切、差し込まぬ暗闇に二つの震える人影。
木のバケツが無造作に、置かれ
そこから排泄した物の臭いが漂う。
その部屋は、想像を絶する程に不衛生で
絶望に満ちていた。
「カフエリ!フエン!」
呼び掛けるが反応が無い。
瞳が暗い。歯が震えて音を鳴らす。
二人はお互いにしがみつきこちらを見る。
カチャ、カチャ、。
冷たく重い鎖が痩せ細る手足の自由を奪う。
鎖の擦れる音が心を現すかの様に鳴る。
夜目がきくメルは、その人影の
凄惨な姿に怒りを覚える。
口は避け血が滲み膿んでいた。
傷口から酸い臭いがする。
太ももから赤い染みが垂れる。
全身が痣と傷が覆う。
その激しい怒りを感じ取ったのか。
二つの人影は心を壊されるイタミを与えに来た何かだと声も出せずに固まる。
メルは絶望に染まり明日を
諦めた四つの眼を優しく見つめる。
「迎えにきた。」
それだけを伝えると
手足に付けられた鎖を引きちぎり
従属の首輪を噛み砕く。
「ルメイド。」
左手から癒しの炎を二人に放つ。
二人は、やっと、やっと、楽になれる。
炎に包まれると涙が頬を伝う。
しかし炎は何故か熱くない。
優しくとても暖かい炎であった。
フジサワに付けられた身体の傷が消えていく。
心の傷だけを残して。
「メル、早くここから逃げるぞ!」
パタパタと飛ぶ、小さな飛龍が
叫ぶ。
小さく頷くメル。
二人を抱え真っ直ぐと
真上に飛び次々と天井をぶち抜く。
必死でしがみつくフグエルレン。
そして何が起きているのか
理解出来ていない幼きエルフと魔族。
「アッ!」
(アッ!)
三回目の天井をぶち抜く途中で
額に傷がある男と視線が合う。
「てぇめぇぇ!!マェテェコォルァァッ!!」
大声を上げた男。
赤くなる顔には太い血管が
幾重にも浮かび上がる。
咄嗟にメルはフグエルレンを
掴み力任せに男に目掛け放り投げる。
「ちょ…!」
気が付けば男の頭に直撃する
飛龍。
男は気を失い、飛竜は怒り狂い
メルの元へ戻って行く。
そしてメル達はそのまま
エデンから離れて行く。
メルは、エデンから感じる得体の知れない気配に、久し振りの恐怖を感じていた。
何故か口角が上がるメルであった。
そして身を隠せそうな洞窟を
みつける。
二人をそっと地面に下ろすメル。
顔を見つめ「メル。」そう言うと自分の顔を指差す。
尖ったを耳持つ森人と
薄紫色の長い髪を持つ魔族が
メルが間の抜けた顔で
必死に自分達に敵意が無い事を
証明しようとする姿が余りにも滑稽で思わず。クスッと笑う。
「カフエリ…この人怖くない。」
メルのズボンを掴むフエン。
「まぁ確かに…変だけど。」
幼いのに少し生意気なカフエリ。
「?!!!」
「フエン、声出る!」
最初に出会った頃は声を出せなかったフエンが話せる事に
驚くメル。
メルの髪の毛を噛みちぎり
ながらフグエルレンが話す。
「たしゅ、か、フエンは過去に舌を切られたと言っていたな。」
「舌を切られたのはこの時代だったのかもな。」
ブチブチと音をさせながら
真面目な顔をしていた。
「過去?あなた達は、一体誰?」
「どうして私達を助けてくれたの?」
フエンとカフエリは疑問をぶつける。
「メル、仲間。」
フグエルレンはもういい加減に言葉をちゃんと覚えろとメルに怒る。
そしてフグエルレンが代わりに
フエンとカフエリの疑問に
答えるのである。
ゴレゴレゴレゴレ、ゴレゴレゴレゴレ。
またゴレフォンが鳴る。
今度は何が待ち受けるのであろうか…。




