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ジジツ



ザーザー、ザーザー、ザーザー…。


雨の音、風の音、微かな想い。


無機質で規則性の無い自然は


こんな未来を、

知っていたのだろうか、、、。



もし、もし、知っていたのなら。


止めれたのかもしれない。


防げたのかもしれない。


………否。


運命を変える事を、本人が望んでいない。


無駄な問答が脳裏をよぎる。


「メル…メル、、すまない…。」


剣先が折れ、紫色の液体が

美しく誇り高い黄金の剣を

汚す。


「バカ…やろう………。」


天を見上げ身体を震わす白き獣。


傷だらけの棍棒が手から離れ


無造作に地面へと転がる。



「エワカ…。エワカ…。ウゥ…。」


もう何も語る事のできないものに


無駄な努力を、し続ける聖騎士


雨のせいなのか酷く顔が窶れ

濡れている。



「どう…、し、て…。」


金色の細長い髪が、物言わぬ

ものにかかる。


腰に携えた禍々しい刀が


耳の尖った美しき戦士と


共鳴する様にカタカタと

震える。


「嘘、つき…。ずっとずっと、一緒だって……。」


額に大きな角を生やす魔神。


宝玉が鈍い光りを輝かせる

クロスボーガンを放る。


紫色の液体が全身に付くのも

気にせずに幼き子供の様に

泣きつく


「メルの…。弟の望みを引き継ぐ。」


紅き眼を持つ青年が横たわる器に暝砡の力を行使する。


その器は紅く、深く、重く、強く、眩い光りを放つ魂で造られた、巨大な宝玉『暝砡石』となる。


雨の勢いが更に強くなる全てを流すかの様に…。


この世界は、勇敢で強く優しい勇者一行達により救われた。


巨大で邪悪な魔王を倒した事に

よって…。


暝砡石が静かに光りを放ち

過去の想い出をもの語っていた。


誰かにこの想いを知って欲しいと伝える様に…。


◆◆


カツ、カツ、カツ、カツ。


燭台の灯りを頼りに

薄暗く冷たい石の階段を踏み締める。



「ユウト様、我が主人サガワノボル様はこの先におります。」


赤く光る従属の首輪をつけた

クリエラ。


少し青錆がある青銅の扉を指差す。


まだ扉を触れてもいないのに、

向こう側からは、

重苦しく潰されそうな

凄まじい重圧感が肌にピリピリと伝わってくる。


クリエラが扉を開けユウトを

中へと入れる。


「やぁ。ユウト君。」


白いローブを身に付けている

二人組。


1人は見覚えがある。


エデンの案内をしてくれた

ミレイであった。


そして、一見すると優しい青年に見える男。


銀色に光る長い髪。


そして27歳のユウトよりも若く見える。


だが不老長寿のマレビト。

童顔な見た目とは違い,物腰も

柔らかくとても、落ち着いた

雰囲気を醸し出すのであった。


身長も166cmのユウトと同じ位である。


だが奥のソファに座る。

その男の眼から得体の知れない何かを感じる。


「でっ…君は、私に用事があるのだろう?」


ユウトの目線、声、筋肉の動き


全てを見ている。


(嘘をつくな…か。)


何故だろう。手足が震える。


汗が全身からじわりと噴き出す。


フジサワとは違う。


暴力による恐怖ではない。


絶対的な何かが放つ、畏怖である。


ユウトが持つ生存本能が、この男が危険だとサイレンを鳴らし知らせているのである。


蛇に睨まれた哀れな蛙。


まさにその表現そのものの、

光景であった。


しかし蛙にも蛙なりの信念が

志がある。


ちっぽけな勇気を武器に


ユウトは言葉を捻り出す。


「どうしてメルを、暝砡の者を目の敵にするのですか?」


サガワノボルは、”全て”が分かる。


どれだけの勇気を持ってその

言葉を口にしてるのかも。


そして普段は

冷徹なミレイの心の機微もこの時は

手に取る様に理解できる。


いやその場にいればミレイの

表情を空気を感じれば誰でも

気付ける。


神の頂点サガワノボルが

最も嫌う事。


裏切りである。


自分に牙を剥き逆らう者。


この者にかかればちっぽけな命など


容易く摘み取られるであろう事は、予測できた。


故にミレイはフードを深く被る。


頬に何かが伝うのを見られぬ様に。


ノボルは小さなため息をする。


「暝砡の血はさぁ、”世界を創造せし者”が造り出した存在なのは知ってる?」


首を横に降るユウト。


「僕は、ここに来てすぐに流永の鴉に喰われたので…。」


それを聞くと何処かで聴いた事のある笑い声がノボルからこぼれる。


「ケヒャヒャヒャヒ、ヤケヒッ!」


「そりゃ災難だね、ヒヒ。いきなり、ケヒャ!」


馬鹿にされているのは明白である。


だが事実なのだから仕方ない。


「はぁ、はぁ、ごめん、ごめん。」


「じゃあ、一から話すよ。」


ノボルから静かな殺気が消える。


視線をミレイとクレエリに送る。


すると二人は部屋から退出していく。


(えっ…まさか、ここで僕死ぬ…?)


ユウトは恐怖で身体が固まる。



それをみかねたノボル。


「まぁこれでも飲みな。」


高そうな瓶に入っている

シャンパンとグラスを生み出すノボル。


最初に自分が飲んで見せユウトにも注ぐ。


ユウトは、一気にそれを飲み干す。


それを見て笑いながら話し始めた。


◆◆


世界を想像せし者とは


この世界アルメーリアを造り

そこに住まう全ての生き物を

創造したいわば本物の神である。


だが決して聖なる神とは呼べぬ存在である。


世界を覆う魔力を補う為に

産み出した種族同士で

6000年もの長い月日に及ぶ

戦争をわざと起こす。


無念に散った魂を糧に世界を

構築、安定させていたのである。


しかしここで大きな誤算が生じた。


それは数千年にも及ぶ戦により

大地が穢れ。


世界中に満ち足りた魔力が

大戦による巨大な魔力消費に

より枯渇していくのであった。


その消費量は凄まじくもう

アルメーリアだけの魂だけでは賄える事が困難となる。


そこで世界を創造せし者は

外部から魂の供給を試みるのであった。


それがマレビト、異世界人達である。


この者達が持つエネルギーは

アルメーリアに住まう者達よりも膨大で良質なエネルギーだと話す。


そして、暝砡の血を継ぐ者とは

アルメーリア全体に駆け巡る

魔力や自然の力、そして

新たな生命を産み出す為の

エネルギーを集め

世界を創造せし者の元へ

捧げ運ぶ者達の事を指す。


つまり異世界人達を狩る者達が

暝砡の血を継ぐ者の役目である。


淡々と語るノボルの人生は壮絶であった。


幾人のマレビト達が暝砡の血を引く者の犠牲になったのか。


そして愛する人をその時

暝砡の者に襲われ命を落とした事。


ノボルは一通りの事を話し終え最後にとてつもない事実を突き付けた。


「この世界は、150年後に滅ぶ。」


ユウトはその一言に言葉を失い

立ち尽くすのであった。






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