カミノイカリ
❲ぉぃ、ォィ。❳
隣の部屋にいるクレエリに
聴こえぬ様に必死でメル達の
身体を揺さぶり起こす。
「うぁ~はふぅ。朝か?」
欠伸をしながら目覚めるメルの口を必死で塞ぐ。
(バレたら、殺されるだろ…。)
とりあえずユウトは
ポケットから反転の玉を
取り出すとメルに当てる。
何の反応もない。
(やっぱ、5メートル以上あるよなぁ…。)
錬金釜に隠れていたGOMINIがいきなりと、動き出し魔法を唱える。
(シルミ)
メル達を中心に白い膜が張られ外に姿と、声が漏れない。
ゴレゴレゴレゴレゴレ、ゴレゴレゴレ。
ゴレフォンが鳴り出す。
ユウトは、その音を、何故か
身体が心が拒絶する。
メルが電話に出る。
(モシモシ。どう上手くいった?)
「エデン、入れた。」
(そっかー、さすが僕達の作戦だね、ねぇグウ。)
(だから止めて下さい。)
ユウトは自分が見たエデンの事。
異世界人の事。
そしてミレイの事を自分が感じた疑問をアユム達にぶつける。
(エッ、ミレイちゃんに会っちゃった!)
(あちゃ~、何か異変は無い?)
「いや…?特には無いです。」
「それよりも神って全部が、悪い訳じゃ無いみたいですよ!」
「ミレイさんだって好い人でしたし!」
(………………。そう。)
アユムが何かぼそぼそと呟くがよく聞こえない。
(何故好い人かって?、それは君が異世界人だからだよ。)
(まぁ上手く潜入できたみたいだし良いけどね。)
電話の向こうでトントンと指で何かをつつく音が背後で聴こえる。
(で、メル達は戻れた?)
「まだ戻せて、無いです。」
「反転の玉をメルさんに、当てたのですが、反応無いです。」
(あのさ…ちゃんと何を反転させるか言った?)
「はぁ?言わないとダメですか?!」
(そりゃそうでしょ、反転の内容も色々あるし…。)
カラカラと音が聴こえる。
その後喉が鳴っていたので
何かを飲んでいるのだろうか。
(とりあえず、ほら、やってみ。)
タメ息をしながらユウトは
反転の玉を祈る様に手を叩き、握り締める。
(頼む…、これでダメだと…、フジサワの近くに…。)
メルの頬に玉を当てる。
「ストレングスリバース。」
(弱者から強者に)
ユウトの祈りが届いたのか
反転の玉が光る。
姿が徐々に変化していく。
非力で醜い化物から
白き翼を背中に宿す美しい化物へと変わる。
治癒能力が戻った事でフジサワに付けられた傷が回復していく。
(あれ何か…ぼぅ~とする。)
ユウトは顔が緩み、手足に力が入らない。
「あの、眠いです…。」
ゴレフォンの向こうでアユムが笑う。
(あっ多分それ魔力切れだね。)
(後一つだけ言い忘れたけど。)
(反転の玉を使ったらすぐにフジサワに気付かれるから、逃げてね。)
ブッ!ゴレフォンの通話が切れる。
「危険!危険!危険!危険!」
「外部から攻撃されています。」
GOMINIが警告音と共に叫ぶ。
メルは動けぬユウトに向け
残りの反転の玉をかざす。
「スペースリバース」
(近く、遠くに)
とかげのフグエルレンと
魔力切れになり気絶している
ユウトが錬金釜ごと、どこかに消える。
「破られるまで、残り三秒。」
「2、1。」
0と言う前にGOMINIの結界が
破られる。
そして目の前にフジサワが
立ちはだかる。
「くそ!てめぇ、死んで無かったのか!」
「あのガキはどこ行った!」
フジサワはユウトを探している。
メルを手引きした者を始末するために。
ドゴッ!鈍い音がする。
フジサワが腹部を押さえている。
「おまえ、うるさい。」
激痛と衝撃で蹲るフジサワ。
冷たく見下すメルを睨み上げる、フジサワ。
(止めろ、止めろ、止めろぉー!俺を見下すな!)
反転の玉を生み出すフジサワ。
「ストレングスリバース」
(強者から弱者へ)
光を放つ玉を無数に投げる。
メルは闘気を解放する。
ブゥゥゥ!バキ…メリギチ!
凄まじい闘気のせいで
ヒビ割れる音とともに
フジサワごと部屋が吹き飛ぶ。
メルは宙に浮くフジサワの足を掴みエデンの外へと放り投げる。
地面が激しく揺れエデンの城壁が一部欠けてしまう。
(痛ぇ、死ぬ、怖い。俺死ぬのか?)
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁ!)
地面に叩きつけられ全身の骨が砕けフジサワの右脚が千切れて
転がる
激痛に耐えながら、反転の玉を
また生み出そうとするフジサワ。
しかし、それを許さないメルの
容赦無い一撃がフジサワの瞳
から光を奪うのであった。
その瞬間…。
メルの頭上から凄まじい稲妻が落ちる。
ズガーンッッ…!
砂煙が舞う。
しかしメルは微動だにしない。
空を見上げるメル。
二人の人間がこちらを睨みつける。
その重圧は大気を振るわせる。
小石が耐えきらずに次々と粉々になる。
「きさまが暝砡の血を継ぐ者か?」
メルの肌がヒリヒリとする。
頷くメル。
「ならば死ね!」
顔の見えぬ誰かの
一撃がメルに向かう。
それを躱すメルは、綠炎の剣を構える。
何が起きているのか見えない。
だが、空から赤き液体がポタポタと落ちる。
空に浮かぶ者が
「神の怒りを、裁きを受ける事になるだろう。」
「それまでは、今ある生を噛み締めよ。」
気配が消える。
どうやら何者かは一旦引いたらしい。
メルはカフエリとフエンを
想い念じる。
ペンダントが一筋の光を差す。
そこに向かうメルであった。




