キアイトコンジョウ
ゴレゴレゴレゴレ、ゴレゴレゴレゴレ。
メルが持つ布袋から不思議な音が鳴る。
(どうしよう…。)
恐る恐る布袋を覗くユウト。
透明な板を抱える石の人形が
眼を見開いて震える。
(ひぃぃ、なにこれ…。気持ち悪るっ!)
トカゲになったフグエルレンが
震える石の人形の上にペタリと
乗る。
「アッ…やっと繋がった。」
「もしもし。メル、何かあった?!」
石人形の口から声が聞こえる。
(えっ、これ、、もしかして電話?)
ユウトはゴレフォンを掴み
「あのぉ…今メルさん話せないと思います。」
ボロボロになっているメルに
視線を送る。
電話の相手に現在の絶望的な
状況を分かる範囲で精一杯に伝えた。
(フ~ン……。なるほどね。)
(で、君は誰?)
「カワサキ、カワサキユウトです。」
「どう、、どうすれば、僕また死ぬ…いやだ。」
(うん、うん、分かったから、落ちつこうか。)
(僕はアユムというんだ。よろしくね。)
アユムと名乗る人物の声がとても優しく聴こえた。
不安に押し潰されそうなユウトをなだめる言葉が心地よい。
これから、どうすればいいのかをゆっくりと説明してくれた。
一見無敵と思える”反転”の能力。
実は決定的な短所があった。
それは、フジサワが生み出した反転の玉。
持ち主以外でも使えるという事であった。
ただしフジサワを中心に
半径5m以内でしか使えない
そして、12時間経つと反転の玉が消える
という条件があった。
そしてその反転の力を宿す玉達はメルとフグエルレンの周りに沢山落ちていた。
それをカワサキに伝えると
電話越しの声が代わる。
グランと名乗る不気味な笑い方をする者であった。
その者はユウトに
メル達を錬金釜に隠し、
エデンの内部まで運び、
あの恐ろしいフジサワの
近くでメル達に反転の玉を使え。
その様な無茶を言うのであった。
だがグランとアユムが言うには
エデンは神の領地(マレビトの住まう場所)なので異世界から
来た者に対しては寛容だと話す。
そしてこの作戦をもし断れば。
アユムとグランがいる時代に
必ず、直接僕へ”挨拶”をしに
来ると圧力をかけてきた。
ユウトは一度呆気なく死んだ。
故に死の臭いが他の者よりも
鮮明に嗅ぎとれてしまう。
今苦しんで死ぬか。
未来で激しい拷問の末死ぬか。
究極の選択に迫られ。
気合いと根性を身体に叩き込み
アユム達の作戦を実行すると
伝えるのである。
錬金釜にメル達を押し込み
背負うカワサキユウト。
自分の未来を掴み取る為に
エデンへと向かうのであった。
◆◆
「ぐぅ…!」
頭を抱え蹲る、クラウディア。
「ちょっと、どうしたの?」
心配そうにするユウが背中をさする。
「………。」
様子をただ見ているメグラ。
長い尾を静かに降る。
「メル達が危ない!」
スッと立ち上がりいきなりと
マルビロの門を抜け、南西に向け走り出すクラウディア。
さすがは、勇者クラウディア。
走る速さが尋常ではない。
メグラがユウを背負い必死で
跡を追う。
それでも徐々に背中が小さくなる。
本来獣人族が本気で走れば
その種にもよるが時速90キロで
走る。
ましてやメグラは獣人族の中でも一位二位を争う俊敏な一族
(白虎の一族)である。
例え仲間を背中に背負っているからといっても、追い付く事ができないのはあり得ない事なのだ。
(ちっ、なんだ…、化物か?)
メグラは前を走るクラウディアを睨む。
「ちょ…まっ…。はや…。」
実は一番必死なのはメグラの背中に、しがみつくユウなのかも
知れない。
凄い勢いで揺れ動く背中に
胃の中の物を何度も戻しそうになる。
クラウディアが突然と止まる。
ぶつかりそうになり咄嗟に避けるメグラ。
その反動で宙を舞うユウ。
ドサッ!
地面へと転がる。
「オイ!いきなり走って、メル達になんかあったのか!」
静かにたたずむクラウディアの
肩を掴むメグラ。
「あぁ、過去でメルの身に危険が迫っている。」
クラウディアがそれだけ言うと
石の杖を取り出し地面に突き刺す。
「ちょ、ちょっと、あんた達、ここまずいよー!」
ユウが古びた木の立て札を指差す。
ここからは、神の領地。
入る者は神の許可を得るべし。
そう書いてあった。
それを無視して、金色のゴレフォンを取り出すクラウディア。
「あっ~…。聴こえますか?」
ゴレフォンに向かい声をかける。
(うん、聴こえる。どうした?)
クラウディアは
「メルが神の領地内で苦戦を
しています。」
「アユム殿、グラン様、メルと連絡を取って下さい。」
そう言うとゴレフォンの口を閉じる。
アバぁがぁ…!ぐぎゃあ…!
血肉を求める亡者達が
久しぶりの獲物が来たと
涎を滴し、腐った目玉でこちらを睨む。
クラウディアが黄金の剣を構える。
「いや!待て。」
戦おうとするクラウディアを
静止するメグラ。
「ここは、神の領地だろ。」
「騒ぎになると、今はヤバいだろ。」
以外と冷静なメグラにユウが
一番驚く。
(はぁ~、人は、変わるもんね…。)
そんな事を考えていたら亡者達が逃がさぬ様にと取り囲む。
苛立つクラウディア。
「攻撃をしなければ我らが殺られる!」
「メグラ殿、何か考えでもあるのか?!」
親指を立て不敵な笑みを浮かべるメグラ。
ユウにいきなり亡者へと走れ。
そう伝えると魔伝塔の杖を支える。
クラウディアは正気かとメグラを睨む。
だがそんな事とは関係なく亡者達 がジリジリと間合いを詰める。
「はぁ…やっぱ不死者担当だよね。」
脚に付いた土を払うユウ。
「ロウ君、イーちゃん行くよ!」
首にぶら下げた小さな槍と盾が
大きくなる。
(ユウ様、共に行きましょう。)
(私がユウ様を守ります。)
槍と盾を構え亡者達に突進するユウ。
聖なる波動に触れた亡者達は次々と消滅していく。
クラウディアは唖然としていた。
(はっ…はは…。やっぱ凄いな。)
「メグラ殿!アレは、なっ、何ですか?」
メグラはフッと鼻で笑う。
「あぁ、気合いと根性の結果だ。」
腕を組み、悲鳴を上げながら
走るユウを見詰める。
自分の常識が壊れていくのを
感じたクラウディアであった。




