カケ
扉が消え、メルの気配が薄れていく。
「じゃあこれからの事を話さないとね。」
アユムは何も言わずと何処かに向かい歩く。
グランはどこか淋しげな表情を浮かべていた。
ソウガンは警備の仕事に戻っていく。
クラウディアとメグラ達は
アユムの後を着いて行く。
着いた場所はアユムの店
[エルフの楽園]であった。
◆◆
「さぁ、みんな座って。」
アユムとグランはカウンター席に座る。
メグラは鼻の下を伸ばし
きょろきょろと周りを見ている。
ユウが何故かメグラを殴り
ソファに座らせた。
クラウディアは出入口に黙って立っている。
しかし…。何時もならばアユムが造り出したエルフの姿が何故かみえない。
皆の様子を見つめ
グランが静かに語り出す。
「実は…。私とアユムはもう魔法を使え無い。」
突然の報告に言葉を失うメグラ達。
「ちょちょ…と待って下さい。」
「師匠、何故ですか?」
自分の大切な剣を落とし
疑問をぶつける。
代わりにアユムが答えた。
「だぁ、かぁ、らぁ、代償!」
「流永の鴉に、自分達の叡知を捧げる。」
「その代わりにメルを過去に
運ぶ。」
お店の雰囲気のせいなのか。
アユムの持つ透明なグラスが
お酒の様に見える。
中身はただの水なのに。
グランが話を続ける。
「マルビロには私とアユムが強力な結界を張った。」
「通常の者は入る事すら出来ずに消し飛ぶ。」
「だが…メルの援護を我々では、できない。」
「君達にお願いできないだろうか?」
何をすれば良いかも聞かずに
メグラとユウは既にやる気であった。
クラウディアは
「何をすれば良いのですか?」
淡々と質問する。
アユムが怪しげでゴツゴツとした灰色一色である石の杖と金色の悪趣味なゴレフォンを
渡す。
「その杖は魔電塔といって過去にいるメルと、会話する為には必須なんだ。」
黙って説明を聞くユウとクラウディア。
ゴレフォンで過去にいるメルと通話する為には、
メルのいる場所と同じ場所に
魔電塔を持って行かなければ
ならないとの事。
そしてそれが出来るのは、
同じ暝砡の血を引く
クラウディアだけだと話す。
暝砡の血を継ぐ者は何故か
記憶も知識も共有する特性が
あるらしい。
たとえ時を隔ててもその記憶を
感じるのである。
クラウディアは頷くと
石の魔電塔と金色のゴレフォンを持ち、最後まで話を聞かずに走って行った。
その後をメグラ達が追いかける。
(暝砡の者は、話を聞かない血筋かもしれない…。)
グランとアユムは若い者達の
小さくなる後ろ姿を、ただ淋しげにみていた。
「しかし上手くいくかねぇ。」
「ヒャハァ…。賭けですよ。」
二人は静かにグラスの水を飲んでいた。
一方その頃メル達は…。
姿の見えぬ流永の鴉、相手に戦っていた。
何故その様な事態になっているのか…。
少し話を遡ろう。
◁◁◁◁
青く透き通る扉が、ゆっくりと閉まる。
カチャンという音が鳴る。
数えきれる程に縦、横、斜めと
扉があった。
暗闇で明かりが無い筈なのに
何故かよく見える。
まさに不思議、奇妙、どう表現してよいか分からぬ場所であった。
そんな中メル達は
サーチペンダントを眺め
使い方に困っていた。
「光らない。」
(うーむ…。そうだな。)
(試しで、GOMINIに聞いてみたらどうだ?)
パタパタと飛ぶのも疲れ、
メルの肩に乗り休む
フグエルレンが提案する。
GOMINIをポケットから取り出す。
「これ、使い方?」
カタカタと動き出すGOMINI。
「サーチペンダントの使用方法ですね。」
何度も頷く、メル。
「探したい方を想像して念じれば指し示します。」
「他に何かありますか?」
メルは、銀色のペンダントを握り締めカフエリとフエンを想う。
今にも消えそうな乏しい光がまっすぐと、暗闇の向こうを
指し示す。
「おぉ!」
と驚く一人と一匹。
先程から様子を見ていたのだろう。
「グァハハハ!」
「なんと情けない。」
「まさか、探知すらできない
暝砡の民がおろうとは。」
「気高き血も薄れてしまったな…、。」
重苦しい重圧を感じるが
姿が見えない。
また小馬鹿にするよう何者かが話す。
「魔力探知も出来んのか!?」
「まぁいい…。我は流永の鴉。」
「暝砡の血を引く者なり。」
姿を見せぬ流永の鴉に苛立つメル。
しかしフグエルレンは魔力探知が出来るので姿が見えた。
鴉と聞けば漆黒の鳥を思い浮かべる。
しかし名前とは裏腹に全身が
透き通る様な霊水晶で包まれている。
その見た目の美しさに神獣と
表現するのが相応しい。
フグエルレンはふと魔族らしい考えが浮かぶ。
メルにひそひそと耳打ちをする。
(なぁ、あやつを倒せばメル、
お主、時を自由に操れる様になるのでは、ないか?)
手をポンと叩くメル。
その言葉が聴こえた、流永の鴉は
激怒する。
「きさまごときが我を倒すだと!!!」
「万死に値する。」
風が吹き頬が切れるメル。
メルは、何も見えない。
(魔力探知をすればいい!)
(気を研ぎ澄ませろ!)
フグエルレンが叫ぶ。
(とぎすませろ?)
メルは言葉の意味が分からなかった。
ドンッ!
身体に何かが、強く当たる。
服が裂け血が滲む。
右手の平を前に出す。
「待て!」
メルが大声で叫ぶ。
流永の鴉は高笑いをする。
「今さら命乞いか!こわっぱが!」
するとGOMINIに話しかけるメル。
「魔力探知、簡単、やり方。」
カタカタと動き出すGOMINI。
「魔力探知の簡単なやり方ですね。」
「まず御自身の魔力を体内に
納めるイメージをしましょう。」
「魔力を御自身の一番自信のある感覚に集中させて下さい。」
メルは言われた通りに魔力を高め体内に集める。
そして嗅覚に集中させた。
すると見えないが徐々に形を感じ取れた。
鋭い爪がメルに向けられる。
それを素手で掴み投げ飛ばす。
急な出来事に流永の鴉が驚く。
だが気づいた時にはもう遅かった。
流永の鴉の首がごろごろと転がる。
(なぁ、、、に…。)
流永の鴉が弾け飛ぶ。
無数の光の玉が飛んで行った。
そして一部の玉がグランとアユムへと飛ぶ。
「来たね。」
「えぇ。賭けに勝ちましたね。」
ニヤリと笑う二人であった。




