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キエユクナカマ



ディロア軍と率いる将の処遇が決まり、各々が複雑な想いを

隠し、とりあえずは落ち着く。



メル達もここからは各々

自由行動をとる事となった。


血塗れで横たわる兵士達。


その将クラウディアの治療。


そして戦に巻き込まれた獣人族の民の治療をメルとユウは始めるのである。


「メル!そっちは、あんたが、やったんだから、しっかり働きなさいよ!」


まだ先程の事を怒っているのだろうか、メルに対し口調がキツい。


ユウの放つ恐怖に怯えるメル。


メルは、仲間から与えられた

心の痛みを伴う痕を優しく

擦りながら、兵士達の治療を

行うのであった。


傷付き動けぬ同胞達をメグラは

抱えユウ達の元に運ぶ。


運び終えるとマキアの手伝いをしていた。



ぽつんと残された二人。


フエンとカフエリである。


賢者の素質を持つフエンだが

治療の魔法をまだ知らない。


自分の出番は無いのである。


カフエリもフエンと同じであった。


「今、外でお祭りやってるから見に行こう!」


「…!。」


王宮の窓から覗く夜のマルビロ。


所々に松明の明かりが灯り

赤く光りを放つ”マ、ツ、リ”と

書かれている物が出店の先に

ぶら下がっている。


その動く松明の明かりは夜空の星達が再会を喜ぶ円舞曲を踊っているようであった。


フエンは心が高揚しているのであろうか。


何度も頷きカフエリと共に都へと出かけるのであった。


昼間のマルビロとは一味違う。


出店の主人が大声で儲けを出そうと必死であった。


「南にある知識の国”パルエーン”から手に入れた貴重な物だ!」


「パルエーンは魔法の国さぁ!勝手に動く箒や無限に水が出る水袋。」


「早い者勝ちだよ!」


怪しげな主人が革の水袋を

手に持って目の前を通る者に

声をかけていた。


「無限の水が出る…ねぇ。」


「そんなの嘘に決まってるじゃない。」


カフエリは鼻で笑っていた。


出店の主人は、ニヤリと笑みを浮かべ、今が時だと言わんばかりに掛け声を続ける。


ラム酒の空樽を店先に出すと

小さな水袋の口を開ける。


こぽこぽ、こぽこぽ。


何とジョッキ100杯分の空樽に

並々と水入る。


主人が歩くと樽の中にある

水が揺れて溢れる。


「どうだい!本当だろう。」


そう言うと口を閉めた水袋を降る。


まだチャプチャプと音がする。


フエンとカフエリは

不思議な水袋の虜となる。


「今なら銀貨100枚のところ

今日は記念すべき日だ。」


「銀貨30枚で嬢ちゃんどうだい?」


ユウから渡されたお小遣いは、


一人15枚の銀貨。


フエンとカフエリの銀貨を

合わせれば買える。


悩む二人。


たたみかける様に主人が話す。


「早くしないと他に売っちゃうよ。」


水袋をゆらゆらと揺らす。


決心を固める二人。


カフエリは銀貨30枚を主人に

渡そうとすると…。


「はい、ちょっと待って!」


その手を止めるピンクのタキシード纏う派手な男。



イロカワアユムであった。


「おっちゃん、子供を騙すのは良くないなぁ。」


不敵な笑みを浮かべ睨む。


一瞬怯むが、ここは負けじと

主人は睨み返す。


「騙すってのは聞き捨てならないね。」


「これは正真正銘のパルエーンで作られた魔法の水袋だよ!」


アユムはため息をして


「パルエーンで作られたのは本当だろうね。」


「あのさ、ソレ、水の精霊を

無理矢理閉じ込めてるでしょ。」


「そんなの飲んだら、精霊魔法使えなくなるよ。」


主人の顔が急に青ざめる。


「なんだ、あんたは錬金術師か!?」


「商売の邪魔だよ!」


怪訝そうに臭いものを仰ぐ様に手を動かす。


主人が、気を取り直して


カフエリ達を見るが、もう買う気が無いと銀貨を閉まっていた。


「さぁおいで、僕が案内するよ。」


アユムは二人に手招きして歩き出す。


フエンとカフエリは手を繋ぎながら後を追いかけて行く。



「あのさ、…アユム、さっきはありがとう。」


「知らないで、あの水を飲んだら精霊の加護を、受けれなくなるところだった…。」


精霊魔法を使う者は、精霊達と

心を通わし信頼を得なければ

ならない。


それは精霊達にも意思があり

感情もある。


もしアユムが止めなければ。


封印され怒りと恨みを宿す

水の精霊が産み出す水を

口にする事になる。


その事で水の精霊は勿論。

他の精霊達の加護を受ける事は難しくなる。


精霊魔法を使うカフエリ。


そして属性魔法を使うフエンにも影響があるのである。


精霊達は火、水、風、土、金、木、六つの属性を司る。


それは魔法の属性にも関わり

がある。


火属性の魔法を使用する者が

火の精霊との信頼があれば

それだけ威力に雲泥の差が生じるのだ。


つまり魔法を使用する者は

精霊達との関わりを大切に、

しなければならないのであった。



カフエリとフエンは改めて

お礼をした。


「それよりも…。まだ魔力探知が出来ないんだね!」


「魔力探知が出来れば精霊の事も気付けたよ。」


淡々と伝えるアユム。


「…ごめんなさい。」


「………。」


反省する二人を見て怒る気も

失せる。


賑やかな空間でカフエリ達の

周辺だけ静かな沈黙が流れる。


(ちょっとキツく言いすぎなかな。)


アユムは出店で買った

セイモの水飴を二人に渡す。


「まぁ今はお祭りを楽しみな。」


キラキラと光る水飴が

黄色い果実セイモを、包み

甘美な香りがフエンとカフエリを虜にさせる。


食べて良いのかとアユムの方を見るので頷く。


セイモのほのかな酸味と

甘い水飴が絶妙な味を引き出す。


二人は眼を丸くして弾む様に

口にしていた。


(フフ、可愛いもんだ。)


アユムはおすすめのお店があると二人を誘う。


カフエリとフエンはとことこ

後をついて行くのである。


こちらの世界だったら

未成年者略取の疑いで通報されそうな光景であった。


しかし見渡す限り魔族、人、獣人、ここまで集まると気持ち悪くなってくる。


酸素を薄いのか人混みの熱気なのかカフエリとフエンは眩暈がする。


アユムは二人の異変に気付き


(人混みの少ない所に行くか。)


手を引き人混みを掻き分ける。


チクっと何かが二人に刺さる。


「痛っ。」


「!…?」


カフエリとフエンの指から少し血が滲む。


アユムは振り向き

「どうした?」に二人に聞く。


「わかんない。なんかに刺された。」


「?、。」


指に小さな赤い点があるだけで

毒の気配は感じない。


「あっあれ…。寒い。」


「………、?」


二人の唇が青紫色に変わる。


すると…。


光の粒となりカフエリとフエンが消えてしまった。


足元に村正とアルテミスの弓が

カチャンと落ちる。


最初は、慌てるアユムだが…。


(あれ…。何でここにいるんだっけ?)


右手になぜか小さな温もりを感じる。


落ちている村正とアルテミスの弓を拾う。


嫌な胸騒ぎがするアユムは

何故かメルのいる王宮へと足が向かうのであった。


◆◆


「よっしゃー!終わったぁぁ…。」


獣人族の治療を終えたユウは、

木の椅子にもたれかかる。


そしてメルの方を見ると

まだ必死で兵士達の治療を、

施している最中であった。


(しょうがない…手伝うか。)


ユウは疲れた身体に気合いを

入れる。


「ヒィィ!殺さないで、!」


先程まで死ぬ程に自分達を、殴って来た人物が、今は

不気味な笑みを、浮かべ左手にはメラメラと燃える炎を出している。


止めを刺される。そう勘違いをした兵士達は治療に対して必死の抵抗をしていた。


それを殴って気絶させ、炎で燃やす。


その光景を見て誰が治療だと

気付けるのだろうか。


聖なる炎が消えた兵士は

傷が治り元気そうにしている。


だが極限状態に置かれた兵士達はそれを

見られる程、冷静ではなかったのである。


だが…原因はそれだけでは無い。


「良いから!諦めて自分の番を待つんだ!」


治療を終えた、勇者クラウディアの一言が

より恐怖をあおる。


ユウはメルとクラウディアに

鉄槌を下し治療を手伝う。


その光景をグランとソウゲンは笑って見ていた。


すると窓がいきなり開き


そこからピンクのタキシードを


纏うアユムが現れる。


グランは、


「いい歳をして普通に、これませんか?」


「それと頼んだ事はどうなりました。」


先制の口撃を放つ。


横で聞いていたソウゲンは

顔が次第に青ざめる。


アユムは

「あぁ、とりあえずはね…、。」


「君が弱いから、仕方なく取りにいってあげたよ。」


一冊の埃が被っていた本を投げて渡す。


「それよりさ…。僕、何か忘れてないかな?」


グランはフッと笑い


「もうボケたのですか?」


「アユムお、じ、い、ちゃん。」


本を拾い、更に口撃を続ける。


何時もならば殴り合いになる。


しかしアユムの勘が何かを訴える。


そして禍々しく不気味な刀と

魔力が込められたクロスボウを

グランに見せる。


「これ知ってるか?」


何時もと違うアユムに表情が

変わるグラン。


真剣にそれを見るがわからない。


いや思い出せないでいた。


(これは…もしかして…。)


傷付いた兵士の胸ぐらを掴み

聖なる炎で治療を終えたメル。


遠くからその武具を見て


「それ、カフエリ、フエン、武器!」


メルの一言でアユムとグランが

異変の原因に気付いた。


「これはミレイの仕業だね。」


「ケヒャ、やはり時の力を使われましたか…。」


二人の様子に異変を感じた。


メルとユウは何があったのかを


尋ねる。


すると大きな木箱を運ぶメグラも現れる。


三人を呼ぶアユムとグランは

神の一人『”時の女神”シマミレイ』が動き出したと話す。


シマミレイの能力は[タイムワープ]を使う。


それは対象の顔の認識、血液の確保をする事で発動できる。


発動されるとどんな強者でも

太刀打ちできない。


何故ならば対象の最も弱い頃


幼少期に行きその者を殺害するのである。


そして過去で殺害された

対象は未来では存在しない。


故に皆の記憶から消えるのである。


それらを聞いてユウとメグラは

驚く。


「俺はカフエリとフエンなんて知らねぇ。」


「だからその二人は過去で何かあったと言ってるでしょ!」


ユウとメグラが揉める。


「フエン、カフエリ、仲間!」


「助ける!」


メルはそう言うと村正と

アルテミスの弓を握る。


(ちょっと、痛いぃ!離して。)


(拙者に、触れて良いのはカフエリ殿のみ!)


彼らの思考がメルの中に流れる。


メグラはまだ納得してないと


グランとアユムに質問する。


「どうしてメルだけ覚えてんだ!」


埃まみれの本を息で払うと読みながらグランはその事を、説明する。


「それはメルが、暝砡の血を引いているからだよ。」


「暝砡の力はあらゆる能力に

干渉されない。」


「だから今回の事も覚えていたのだと思うよ。」


それを聞いていたユウは、


「フエン?とカフエリだっけ。」


「助ける方法は無いの?」


グラン達に尋ねる。


今度はアユムが話す。


「一つだけ方法がある。」


「それは過去に行き二人を殺害する敵を倒せば良い。」


「ただ…。これには問題がある。」


「過去に戻った者はこの時代に戻れない…。」


「時の流れに耐えられる肉体も必要だな。」


アユムは後ろに振り向き


(僕が行くしか無いかな。)


頭の中にある言葉を話そうと

すると…。


「メル!行く。今すぐ!」


鼻息を荒くしてメルは悩む

グラン達に伝える。


アユムは試す様に


「成功しても過去で一人ぼっちになるよ。」


笑って伝える。


メルの瞳には一切の迷いが無い。


「分かったよ、じゃあ準備するから明日、王宮前で待ってて。」


そうメルに伝えるとカフエリ達の

武具を持ってグランと共に

何処かに出掛けて行くのであった。


メルは自分の痣を撫でながら夜空を見ていた。










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