オウナルモノ
自由の国マルビロ
争いの絶えぬこの世界で
様々な種族同士が
友、恋人、家族、仲間
として住まう都。
平和を象徴するこの都は
最後の希望なのかもしれない。
「ソウゲン…。」
「いい作戦があるんだ。」
そういうとアユムはこそこそ
と耳打ちをする。
「なぁっ?!」
「アユム殿、正気ですか?」
ニタリと笑い一言「あぁ。」と
返事をした。
ソウゲンとアユムのやり取りを
聞いていたメル達に
マルビロの王に、会ってきなさい。
そう伝える。
メグラは仲間が知り合いが
生きているかもしれない。
そう思い願ってもいない申し出を喜ぶ。
「アッ1つ言い忘れた。」
「咜櫓の武具は血の盟約が必要だから。」
それを伝えると各々の武具に
自分達の血を与える。
キィィィン…。
ユウのロンギヌスの槍と
イージスの盾の形が変わる。
本人の、意思で大きさが変わるのである。
少し重いと感じていたユウは
ローブのポケットに仕舞える
武具に喜ぶ。
カフエリの村正も同じく爪楊枝位の大きさに変化する。
「村正。あなたのままでいて。」
「早く、馴れたいから。」
(御意。)
禍々しい刀に戻る。
フエンのアルテミスの弓は
小さくなる変化を拒む。
「…?」小さくため息をつく。
(あたしぃ狭いの嫌いなの。)
メグラの酒呑の金棒はなぜか
今よりも重く大きくなる。
「そうだな!日々鍛錬だ!」
(うむ。)
なんと癖のある武具であろう。
メルはパタパタと飛んでいる
小さき翼竜フグエルレンに
自分の血を飲まそうとする。
(いらん!わしは咜櫓の武具ではないわ!)
その言葉を無視して無理矢理
血を口に流し込む。
そこは魔族の気性なのか
はたまたメルも何か変化を
欲していたのかは本人しか
分からない。
当然の事フグエルレンに
何の変化も見られなかった。
少し肩を落とすメル。
どうやら後者の方だったのだろう。
怒り狂う綠炎の鱗を持つ
小さき翼竜はメルの髪を口で
引き抜く。
ブチブチ。
緊張感の無いメル達を引き連れソウガンは王宮へと向かう。
アユムはグランに会いたく無いと拒否をしてお店の奥に戻る。
(頑張れ、皆。)
◆◆
メル達は口を開けたままで
惚けている。
実はマルビロの王宮は
観光名所にもなるほど
美しい。
王宮入り口にある
天女の石像が持つ壺から
滝の様に水が下に流れる。
そして水飛沫に太陽の光が差し
虹色に輝く光の門が
訪問者達を出迎える。
王宮のまわりを深い堀が囲い
透き通った水がその堀を埋め尽くす。
堀の中には様々な水様生物が
命の輝きを放っている。
青い川珊瑚が一面に拡がり
そこに赤、青、黄、光の三原色である鱗を持つ魚達が自由に泳いでいた。
メルとフエンは堀を覗き込み
幻想的な生き物達を眺めている。
普段ならばメグラもこの中に
参加する。
だが今はそれどころではない。
不安と期待が複雑に混ざる。
「この生き物達は様々な種族の長達が友好の証にと、我が国に
献上した。」
「そこの赤い魚は”ミレマカラ”」
「獣人族の言葉で赤い宝石というらしい。」
ソウガンは騎士団長である。
しかしそれまでは一兵士として
冒険者や観光客の道案内や
見せ場を紹介する。
もう職業病なのだろう。
ユウとカフエリは
おぉと小さく頷いていた。
凄い眼でメグラに睨まれ
我にかえるソウガンは
王宮の奥へと入って行く。
槍を持つ兵士達が皆ソウガンを見て手を胸に当てる。
メルが何故か聞く前に説明される。
「あれは、相手を認め敬意をはらう時にやる挨拶みたいなものだ。」
心を読まれたみたいで不思議な感覚に陥る。
怪訝そうな表情で自分を
見ていたので思わず笑ってしまう。
(なんと、分かりやすい…。)
ソウガンはアユムの様な
心を読む力など無い。
相手の目線、呼吸、筋肉の動きで予測している。
騎士団長としての経験が
それを可能としていた。
しかし王宮の外とは違い
王宮内は実に質素な造りであった。
高級そうな家具も、
派手な装飾も施されていない。
そして分かる者には直ぐに分かるが。
王の間に行く道のりが分かりにくい。
同じ造りが続くので
もしかして、目的の場所まで
永遠に着かないのではと、
錯覚させる。
そう攻めにくい王宮であった。
メル達もソウガンの案内が
なければとっくに迷っている。
「着いたぞ。」
王の間に続く扉だとは思えぬ
小さな木目調の扉を叩く。
ギィッと扉が開く。
「その者がアユムか?」
王とは思えぬ出で立ち。
大理石の階段に槍を持ちあぐらをかいて座る。
黒きマントをつけ、眼光が鋭い。
赤黒いレザーブーツを履く。
マルビロの国章を胸に着けては
いるが雰囲気が歴戦の冒険者。
そう表現した方が納得する。
「まぁそんなに固くなるな!」
「好きな所に座れば良い。」
「俺の名はカナレリア・マルビロ。」
その堂々とした姿にメル達は
風格と、威厳を感じた。
ツルッ痛っ。
「この床は滑っていかん。」
気のせいかもしれない。
「時間が惜しい本題に入る。」
「そなた達の誰がアユムだ?」
ソウガンがマルビロ王の耳元で事情を話す。
全てを、聞いたマルビロ王は
凄まじい戦気を全身から発する。
マルビロ王は槍を構え
「この国の命運がかかっている。」
「試させて貰おう。」
と殺気を槍に込める。
メグラは苛立ちを感じていた。
眼にも止まらぬ速さで
マルビロ王の槍を奪い、減し曲げ、投げ捨てる。
「次は!」
ソウガンは驚いていた。
マルビロ王は決して弱くはない。
かつて黒龍を一人で撃ち取った
戦士である。
それが反応も出来ずに無力化
されたのである。
(うむ…。確かにこの者達ならば。)
「では本当にそなた達だけで
あやつらを叩き潰すのだな。」
「たのむ…。この国を民を救ってくれ。」
得体の知れぬもの達に深々と一国王
頭を下げる。
メル達は驚きと何故か勝つ自信が満ち溢れる。
メグラに減し曲げられた槍を持ち
不屈の闘志を燃やすマルビロ王の、
その姿は勇ましく威厳と慈愛に満ちていた。




