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イキルイタミ



開けられた酒瓶が転がり


怒号と喧騒そして悲鳴が飛び交う。


煉瓦造りの道に拡がる

酒に溺れた者の置き土産。


現実の臭いがメル達に

安堵を与える。


「俺達グランに勝ったぜ!」


メグラは歓喜に震える。


「もう絶対に、嫌!」


カフエリは緊張が解けたのか

脚に力が入らずへたりと座る。


「……………。」ギュ!


フエンはメルの手を強く握る。


「もう…駄目かと思った。」


ユウは壁にもたれかかる。


「生きてる。」


メルは強く手を握るフエンを

優しく撫でる。


ぐっっ!


脈が早鐘の様に鳴り

全身が熱く熱くそして

骨と筋肉が軋む。


(…、ま、た、これか…!)


メル達は蹲る。


ザッザッザッザッザッスト。

見覚えのある

ピンクのトゥシューズ。


メルが靴の持ち主を見上げる。


「修行お疲れ様だね。」


「とても、激しかったよ!」


ピンクのタキシードを着た

アユムである。


メルは全身に襲う苦痛を耐え

綠炎の剣を出そうと構える。


「ちょっ。待って。もう修行は終わり!終わり!」


悪意の無い声を聞きメルも意識を失う。


(あ~あっ、こりゃ”覚醒”が始まるな。)


指で優しく旋律をなぞる。


「リトルゴーレム二十体作成。」


(了解作成開始します。)


石ころに小さな目と手足が2つ。


「この人達を僕のお店に運んで。」


「ゴレ!コゴゴォ!」


リトルゴーレムは主人の命令に敬礼をすると、メル達を運んで行く。


(ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ…。)


迫るグランと無機質な笑い声。


ピンクのタキシードが首を締める。


(ウウウ…。)


目が覚める。


薄暗い。甘いお酒と花の香り。


柔らかい何か。柔らかい?


メグラは眼を開けると


ユウの豊満な胸を掴んでいた。


「い、い、度胸だよ!」


指を鳴らして笑う。


(ごめっ!……。)


最後まで言葉を発する暇もなく

鉄拳制裁されるのであった。


アユムがそれを見て笑っている。


カフエリは何事もなかったかの様にアユムと話している。


フエンもその会話を黙って聞いていた。


メルは小さな綠炎の鱗を持つ翼竜(フグエルレン)と話していた。


「さてと、みんな意識が戻ったし…。」


「お風呂に入ろうか?」


アユムが脈絡の無い提案をする。


メル達は怪訝そうな表情を浮かべている。


(はぁ~あ。たくっ。)


大きな鏡をメル達の前に出す。


自分達とグランの血液が全身で浴びて真っ赤に染まっている。


それも驚きなのだが…。


それぞれの姿も変化していた。


メグラはふた回り程、身体が大きくなり、全身に白銀の体毛が生え縞模様の尾が2本に増えている。


口には肉を切り裂く鋭い牙。


手には朱色の鋭い爪と肉球。


顔を変わり人に近かった形が

虎の様になっていた。


この姿は獣人族の始祖

(ビャッコ)と同じ姿であった。


フエンは瞳の色がより黒く

額に2本の黒い角が生えていた。


強き魔族は魔力を蓄えた角を額に携え強力な魔法を行使すると聞く。


その者達をこの世界では

魔神と呼んでいた。


カフエリは淡い蒼の髪が美しく輝く金色に染まる。


瞳は淡緑。


以前は幼き子供の様な身長も

160cm位に成長していた。


もう存在していないとも言われている。


古代精霊(エンシェントエルフ)

精霊の王すらも操る事が

できると文献には綴られているが真相を知る者は少ない。


メルの瞳が紅き色から

薄黒く変わり背中に白き翼が

生えていた。


だが…。白いゴブリンからは

聖なる波動が放たれる。


アユムはわざとメルの傍により

肩こりの治療に利用していた。


(暖かい…。)


その姿は天使と呼ばれる姿に似ていた。


各々が覚醒と呼ばれる種の限界を超えた姿に変わる。


ユウの姿だけがあまり変わらない。


あえて変わった箇所を上げるとすれば胸が大きくなったという事。


その事にも彼女は苛立ちを覚えていた。


「じゃあ、銭湯へ行こう!」


アユムは戸惑う者達を無視して

自分のペースで動く。


(セントウ)


聞き慣れない言葉にメル達は

反応してアユムの後を追い掛け歩く。


酒場エルフの花園。


作りはどうなっているのだろうか。


店の奥に行くと広い空間にたどり着く。


赤い布と青い布が天井から垂れ下がる。


「女性陣は赤い方ね。男は青い方へ行くよ!」


アユムはメルとメグラの手を引っ張り青い布をめくり引戸を開ける。


フエン、カフエリ、ユウは

恐る、恐る、赤い布をめくり引戸を開け

奥に入る。


リトルゴーレムに、

竹でできた籠を渡される。


メグラとメル。


「そこに着ている服を、脱いで入れて。」


アユムもピンクのタキシードを脱ぎ捨て、勇ましく全裸になる。


ガラスの引戸を開け更に奥へと入って行った。


メルとメグラはアユムの後を追い掛ける。


その頃女性陣は敵がいないか

扉を片っ端から開け

安全を確認する。


ガラスの引戸も開ける。


湯気が立ち込め、花の香りと


奥には青い山が描かれた壁画


があった。


(よし誰もいない!)


カフエリとフエンとユウは


服を籠に入れ引戸を

念のために開けっ放しにして

身体を洗う事にした。


しかし鉄の取っ手と蛇の様な

物がある。


そして黄色くツルツルした桶に

何か読めない文字が書かれていた。


ユウが隣にいるであろうアユムに大声で話す。


「これどうやって使うの?」


アユムが壁の向こう側で大笑いをしている。


指を鳴らす。


リトルゴーレム達が

鉄の取っ手を捻ると蛇の様な物の先端からお湯が出て来た。


何処からかリトルゴーレムは

四角く白い物を持ってくる。


カフエリは臭いを嗅ぐ。


(なにこれ…、いい匂い。)


アユムが思考を読んだのだろう。


「蛇みたいなのはシャワー。」


「お湯が出るよ。」


「四角く白いのはセッケン。」


「身体を洗うのに使うの。」


と話すと静かになる。


フエンはその言葉を理解して


シャワーのお湯を全身にかけて


セッケンを擦り泡立てる。


そして身体を洗っていた。


一方メルとメグラ、アユムは


誰のモノが一番大きいのか

判断基準が不明な遊びをしていた。


メグラのモノを見てアユムは


「うーんまあまあかな。」


それを言われてメグラは

アユムのモノを覗く。


(こっこれは!でかい!)


肩を落とすメグラ。


メグラとアユムは


そっとメルのモノを覗く。


(なっなんだこれは!)


美しい曲線に神々しさを感じ

二人は衝撃を受けていた。


男性陣がリラックスしている頃


壁の向こう側の女性陣も

次第に緊張感が緩む。


(ユウの胸、おっきいな…。)


カフエリが自分の小さな誇りを

悲しげに、触る。


ユウはフエンの背中を流している。


「あいよ。終わった。」


「……。」


(えっ、フエンもちょっ、大きい。)


更に背中を丸めていた。


そんな様子も気付かず今度は

ユウの背中をゴシゴシとフエンは洗う。


「あひゃひゃ、フエン!」


「くすぐったいよ。」


ユウは仕返しにとフエンの頭に泡を乗せる。


フエンは湯気のせいで顔が赤くなる。


シャワーで泡を落とす。


鏡を見て額にある角を小さな手で触る。


カフエリはその様子を見て


「フエンはフエンだよ!」


フエンは小さく頷く。


大きな湯船にうめき声を


あげながら三人は浸かるのであった。


ユウは疑問に思った事を


壁の向こう側にいるアユムに話す。


「ねぇあんたら、マレビトて何なの?」


その問いにアユムは少し黙る。


そして自分の今まで生きてきた時間を

振り返り語り出した。


◆◆


アユムの壮絶な過去を五人は


黙って聞いていた。


この世界には人間族に召還された事。


その時に同じ様に召還された

五人の仲間達の事。


召還した人間族の王に

魔王を倒して欲しいと言われ

旅に出た事。


旅の途中で仲間達が亡くなった事。


残りの仲間達と魔王を必死で倒した事。


王に、お前達は不要と国を

追われ居場所を失った事。


自分達マレビト(異世界人)は

”歳を取らない”という事。


愛する人を何度も見送らねばならないという事。


そして神と呼ばれる者達は

居場所を失った異世界人が

集まり。


この世界の住人達に

復讐しようとしている

者達だという事。


以前はそこに所属していたが

考え方が違うと抜け

今マレビト達に追われている事。


それらを聞いてメル達は

必死で理解しようとしていたが…。


理解できなかった。


ただひとつ言える事は


アユムは敵では無いという事

だけが理解できた。



異世界人が神と名乗りこの世界に復讐しようとしている。


メル達は複雑な気持ちで

湯船に浸かっていたのである…。


そしてアユムは最後にこう語る。


「強いとは、"痛みを恐れ、それに立ち向かう者"をいう事だよ。」


「生きる痛みは忘れないでね。」


その一言がメル達の心に刻まれていくのであった。




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