マレビト
「はぁ…やっと終わった。」
「………。…。」
フエンとユウがギルドに
提出する書類を書き終え
丸まった背筋を伸ばす。
そしてユウとフエンは
銀貨に埋め尽くされて寝ている
メグラを起こしお金を片付ける。
「違うでしょ!」
「それは”ミ”。」
カフエリの厳しい指導がメルを追い詰める。
「ミ。これミか?」
「違う。それは”ル”!」
ユウは
「ミでも、ルでも、いいから
出かける準備をしなさい!」
二人に伝えると書類を持って
一階のギルド受付に向かう。
部屋を片付け銀貨の入った袋を
ぶらさげてメル達は一階に降りる。
ユウ達の表情が険しい。
空気が重く張り詰めていた。
カフエリが理由を聞くと
獣人族の王国”ミンガ”が
人間族の王
『ディロアバブライ』と
紅き眼の勇者メルフォードクラウディア達
率いるディロア軍に滅ばされたと
話す。
リグルアが
「また激しい戦争になるな…。」
もの悲しげに窓の外を見ている。
「なぁ…。ミンガの近くに村があるんだ。」
「そこはどうなったか分かるか?」
メグラが唇を強く噛み締めて
いた。
「多分その村も、、。」
マリは浮かんだ言葉を飲む。
…………………………。
沈黙は、不安と憎悪を大きくさせる。
「ねぇ、私達に戦い方を教えれる人ている?」
ユウから突然の申し出に
リグルアは悩む。
(上級職を、指導できるやつなんか
いるわけ無いだろ…。)
(いや、あいつなら、、。)
リグルアは”期待するなよ”と
言葉を添えると住所と人物の名が書かれた紙を一枚渡す。
メル達はその場所へと向かうのである。
マルビロの北西、歓楽街。
ここは地元の住人は寄り付かない。
何故ならば…。
「待って!荷物を取られた。」
「嫌!こっちに来ないで。」
もう事件だと思われる
怒声や悲鳴が至る所で木霊する。
「なぁ本当にここで合ってるのか?」
珍しくメグラが不安な表情を
見せていた。
「合ってると思う、多分。」
たどり着いた場所は
〖エルフの花園〗という酒場である。
エルフなのだからとカフエリが先陣を切ってお店に入る。
「あら、いらっしゃい。」
妖艶な魅力が溢れるエルフ達が
純粋で免疫の無いメグラとメルに
壮絶なダメージを与える。
ユウ達女性陣は、その点
冷ややかな眼で彼らを見ていた。
「ここにアユム、イロカワが
居ると聞いたのですが…。」
ユウが紙に書かれた住所と名前をエルフ達に見せる。
「いつもなら来てるけど…。」
「今日はまだね。」
そういうとラム酒を一杯ユウに出した。
(なるほどね、会いたいならお金を落とせ、て事。)
ユウは、ラム酒を一息で
飲み干すと空のグラスを置く。
そしてメグラ、メル、フエン
カフエリにもラム酒が出される。
メル達は同じ様に飲み干す。
目の前がぐるぐる回る。
フエンは笑いながらメルの鼻を引っ張っている。
メルもフエンの耳を引っ張って遊んでいた。
メグラはエルフの側に寄り
豊満な胸を触ろうか自問自答している。
カフエリとユウだけが酔わずに
エルフ達の挑戦に勝ち続ける。
「もう良いよ。」
手を叩く音が聴こえる。
「アユム様、良いのですか?」
「あぁ、この人達は信用出来る。」
カフエリとユウは
最後の力を振り絞る。
「強くなりたい。」
その一言をアユムに伝えると
力尽き寝てしまう。
◆◆
(うぅん、頭、痛い。)
メルは初めて二日酔いを経験する。
吐き気と頭痛に悩まされる。
「やっと起きたね。」
ピンクのタキシードを
着た男が花をくわえて
踊り狂う。
今日のメルは初めて尽くしで
ある。
初めてお酒を飲み
初めて二日酔いになり
初めて自分より異質な者に
出会ったのだから。
エルフの美女と激しい音楽に
合わせ踊りながら話しをする。
「僕はマレビトのイロカワ、アユム」
「まぁ異世界から来た、変人てところかな。」
「強くなりたいって?」
メルは頷く。
フィニッシュ!
音楽が止まり、踊りで額から
出た汗を拭う。
「ふぅ~。」
カフエリ達の気配を探る。
フエンはケタケタと笑い柱に
抱き付いていた。
メグラは何故か麻の紐で手足を
縛られて動けない。
カフエリとユウは木のバケツに
飲んだ物をひたすら戻していた。
アユムはソファに座り
「一人銀貨20枚で強く激しくしてあげる。」
そう言うとエルフから口移しで
何かを飲んでいた。
免疫の無いメルは死を予感するのであった。




