ペテルギウスに知らせて
真っ赤に輝く星を見つけてごらん。それはペテルギウスと言って、オリオン座の一等星で、冬の大三角を形成しているんだよ。
今日の昼間に届いた兄からの手紙には、綺麗に整った文字の下に、簡単な星座の絵が添えられていた。
コトリは二階のベランダに立った。彼は寒さを堪えながら、澄み渡った冬の夜空を見上げる。キラキラと星が一様に瞬き、少年の眠たげな瞳を一瞬にして見開かせた。
手許の絵は三角を結んでいる。こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス、そしてオリオン座のペテルギウス。赤い色鉛筆で塗り潰されたその星を探すために、コトリは広大な夜空を見回した。
「兄さま、兄さまの言う星はどこ?」
流れ星がつうっと、少年の視界をよぎる。目で追うまでもなく、流れ星は儚く消えてしまった。その余韻が残した場所に、煌々と赤く燃える星を見つけた。コトリは思わず手を伸ばす。
「あったよ、兄さま。手紙の代わりに、ぼくがあの星をプレゼントするね」
握ったり開いたりする指の間からは光が溢れるばかりで、一向にペテルギウスは掌に収まる気配がない。少年は掴めないと知ると、ようやく諦めて腕を下ろした。
流れ星がまた現れ、今度は長く尾を引いて三角形を通過する。病床に臥せている兄が、年の離れた弟のために応えてくれたようだった。コトリは、いつの間にか涙ぐんでいた。
「兄さまが今、同じ星を眺めてらっしゃると想いますと、コトリは胸がチクリとするのです。兄さま、早く貴方に逢いたい……」
流星群が止めどなく目の前を横切る。ペテルギウスを眺めるコトリの頬には、星屑色の涙が伝っていた。




