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×××しないと出られない部屋

作者: 猫宮いたな


「あら、やっと起きましたわね。おはようございます」


目を覚ますと、姫カットの黒髪の少女がいた。大体十四、五歳ぐらいか。

包帯の上に、ハート形の眼帯。左頬には焼き爛れた皮膚が火傷痕となって残っている。キャラが渋滞している……。


「ここ、どこ?」


「知らねぇよ。オレらも気が付いたらここにいた。全員な」


 声のした方をみると、二人の少女がいた。

 全身にブランド品を身に着けた派手な少女。スタイルもきれいで波打った髪は美麗だ。

 もう一人は、寡黙でぱっと見の印象は不気味。

 顔を覆い隠すほどの前髪は真っ黒で闇みたいだ。時々覗く、その顔には痛々しい傷が数多く残されている。


「ここに居る四人全員。目が覚めたらここにいたんです。ここから出る方法はあそこに」


 姫カット少女が指差した先には、扉があった。それとその横に一つの箱。


『この四人の中にこの部屋を作り出した犯人がいる。犯人の名前がカギとなる』


「迷惑な話。学校あるのに」


「真面目ちゃんぶってんのか? 気持ちわりぃ」


「学がないあなたのような人よりは気持ち悪くないとおもいます」


「あぁ⁉」


「ひぃぃ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 派手女の寡黙女の二人は相性最悪か……。


「お二方、落ち着いてください。ここから出るためには全員の協力が不可欠ではなくて?」


「ッチ」


 おそらく最年少の子供にそう言われたら、何もできないわな。


「まずはどうでしょう、自己紹介でもしてみませんか?」


「私は賛成、正直こんな状況で険悪なムードは嫌だし、相手の素性を知れ

れば多少は仲良くなれるんじゃない?」


「ありがとうございます。では、まずはわたくしからですわね、わたくしは日野奈々香。歳は今年で十五。旧華族の日野家の生れでありますが、わたくしを日野家だからと特別視しないでいただけるとありがたいですわ」


 旧華族のお嬢様。とんだすごい人じゃないか……。

 っと、こんなこと言ったら彼女に怒られてしまうな。


「じゃあ、次は私だね。私は美綴千秋、今年で二十一。よろしくね」


 こんな歳にもなって自己紹介か、なんか恥ずかしい。

 ふと、目線を感じて顔を上げたら、派手女が声を上げた。


「まって、美綴千秋ってニュースで見たよ? 高校生でクラスメイト三十五人を重症の大けがを負わせて捕まったって……」


 あぁ、知っていたのか。


「……それで言ったら、あなたも逮捕歴あるでしょ。ボクもニュースで君の事見たことあるよ」


「あぁ⁉ だったら何だよ、オレに歯向かったのがわりぃんだよ!」


 また、めんどくさいことになって来たな。


「はいはい。落ち着きましょう? おそらくここに居る全員は犯罪歴があるんですわ」


「というと?」


「わたくし、こう見えて放火と殺人未遂で本当は少年院に入っているはずなんです」


「「「は?」」」


 なかなか、意外だな。こんな子が殺人未遂。


「なので、犯罪者だからと言ってあまり深く言動しないと言うことでどうでしょう」


「ん、まぁ分かったよ」


「では、自己紹介もまだ続きでしたね、ではお願いしてもいいですか?」


 奈々香が指差したのは派手女。


「オレは、姫乃来実、十七。犯罪は説明すんのも面倒なくらいやってる」


 来実が視線を送った先の彼女は、


「本堂稔。今年で二十二歳です……。一年前に恋人を中毒死に追いやりました……」


「中毒死だぁ?」


「ひぃ! ごっごめんなさい……」


「ッチ、めんどくせぇ」


 うーん、相変わらず空気は最悪。ま、どう考えても自己紹介だけで空気が良くなるわけもないしね。


「そろそろ、本題に入りませんか? ここから脱出する方法」


「そうだな、正直早くここから出たいしな」


 この四人のなかにいる犯人を見つけ出して、カギを入手して脱出。


「しかし、わたくし疑問に思うんですの」


 部屋を見渡して、奈々香はつづけた。


「この部屋を用意するにしても、わたくしたちをここに連れてくるにしても、人の行動、その全てにお金はかかります。わたくしとしましては、姫乃さん。あなたが怪しいとおもうのですが……いかがでしょう」


「は、はぁ? 多くの金がかかってるって言うなら、あんたも怪しいんじゃないの? 旧華族なんでしょ?」


「わたくしのことを、そのような風に呼ばないでいただけるとありがたいです。わたくしの為にも、あなたの為にも」


「てかさ、なんでそんなピリつくわけ? 冷静にならないと、答えは道き出せないよ」


「……確かに、千秋さんの言うことにも一理あります。ですが、あなたが眠っている間に、わたくし共のスマートフォンにとあるメッセージが届いたのです」


「メッセージ?」


「あぁ、制限時間内にこの部屋を脱出できなかった場合、ペナルティを与えるって」


「詳細が書いていないので、タイムリミットが分からないのです」


「なるほど……」


 それは焦るのも仕方ないか……。

 とはいえ、冷静さを欠くのもよくないと思うが。


「しかし、考えてみれば不思議ですわね。なぜ、犯人はこのようなものをしたのか」


「というと?」


「犯人の目的、その意図も全く分からない。わたくしたち四人が選ばれたわけも謎なわけですし……」


「考えるだけ、無駄。もうボク達は終わり」


「さっきからさぁ! ジメジメジメジメ、オレはお前みたいな陰気なのが大っ嫌いなんだよ!」


 段々と、怒りが湧いてくる。沸々と、心の底から溢れてくる感情。

 あの時と同じ、感情だ。


「……二人はもう、必要ない時以外喋るな。私達で何とかするから」


「そんなこと言って、協力的な姿を見せて犯人の容疑者の中から外れようとしてるんじゃないですか?」


「そんなわけないでしょ、どっちかって言うと奈々香ちゃんの方が怪しくない?」


「そういわれちゃうと、否定できませんわね」


「冗談だよ」


「ウフフ、美綴さんとは仲良くなれそうですね」


 その笑顔は酷く不気味で、妖艶な顔をしていた。


『ヒント 他人に素性を知られてはいけない』


 その時、全員のスマホが震えた。匿名からのメッセージ。


「素性を知られてはいけない。とはどういう意味でしょうか……」


「ボクの予想でいいなら、話しましょうか?」


 稔は語りだした。


「監視カメラ、あるでしょ? なら、話聞かれてるはず」


 稔が指さした所に、監視カメラがあった。


「なら、罪の事じゃない。それとは別のもの」


「要は、裏表激しそうなやつってことだろう?」


 来実は、両手で二人を指さした。奈々香と稔を。


「一番裏表激しいの、この二人だろ? 黙りこくって素性もまったくわかんない陰キャ女と、どっからどう見ても怪しいガキ。どう考えてもこいつらじゃない?」


「ウフフ、どうでしょうか。試しに答えとして回答してみては?」


「じゃあ、やってみるか」


 答えて、間違っていたら。そういうことは考えたりしてみないのだろうか。


「えーと……本堂稔と……」


 来実は、試しに稔の名前を入力したらしい。

 その結果は……不正解。

 全員のスマホにとある動画が送られた。


 いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


 部屋中に狂乱の声が響いた。

 声の主は来実。


「なんで、どうして!」


 その場に崩れ、絶望に伏した彼女。

 全員に送られた動画は、酷く凄惨な物であった。

 小さな女の子を、切り殺すというものだった。淡々と、地道に、確実に……。


「酷いものですね。しかし、確実なのは来実さんと、稔さんは犯人ではない」


 奈々香はどこか楽しそうに話す。


「犯人はわたくしか、千秋さんだけになる訳ですね」


 でも、私からしてみれば、犯人は奈々香しかいないわけだが……。


「こうなることを犯人は読んでいた?」


「もういい。オレはもう死んでもいいさ」


 あぁ、もう完全に来実はダウンしちゃった。好き勝手やった挙句、自滅。なんと無様なことか。


「おい、てめぇなんて言った!」


「あれ、口に出てた?」


「お前、お前ぇ……」


 さっきまでの威勢はなく、力なく私を殴る。


「喧嘩売ってる? 喧嘩なら買うよ?」


 私は思いっきり振りかぶって来実を殴った。

 あはっ! あはははは!

 奈々香が笑う。さっきまであった上品さをかき消すような汚らしい笑い声で……。


「空気を悪くしたくないと言っていた、美綴さんがまさか一番空気を壊すようなことをするんなんて!」


 下品極まり無いその笑い声は部屋に響く。


「みんな、スマホ見て。ヒントが来てる」


 稔が声を上げる。その手にはスマホが握られていた。


「ヒントですか、なになに? 傷を持った少女……」


 このヒントを素直に受け取るなら奈々香。でも……


「そろそろ、隠し事は無しにしませんか?美綴さん」


 ま、そりゃそうなるか……。


「答え合わせの時間だね」


「わたくしからしてみれば、あなたが犯人以外ありえないんですよ」


「うん、正解。私が犯人なんだ」


 でも、今回は想像以上の結果になった。


「私、昔さ学校のクラスメート全員を病院送りにしたんだ」


「意外性もありませんね」


「あれ、意外じゃなかったんですか?」


「さっきの見れば、暴力性が分かる」


 稔は来実以外には案外普通なんだな……。


「で、話の続きを聞かせてほしいです」


「そうだね、クラスメイトを病院送りにした理由なんだけど、クラスメイ

トは教師にいじめを行っていた」


 思えば、あの時から人生は変わった。


「仲の良かった親友も、幼馴染もみんなその時敵に変わった。だってそうでしょう? 次狙われるのが自分かもしれないんだから」


「で、クラスメイトを全員病院送りにして? その責任として捕まってたと?」


「うん。で、あの頃から私はこう思ったんだ。私と釣り合う友達が欲しいとね」


「話が見えなくなってきましたわね」


「なんで分からなくなるの? 簡単な話じゃん。私に釣り合う友達を見つけ出す為にこの部屋を作り出した。命の危機を一緒に乗り越えればきっと本物の絆が生まれるんだ!」


「そうでしたか、ではわたくし共は美綴さんの友人となれたのでしょうか」


「もちろん! 奈々香さんは私の友達として相応しいです! 本堂さんはこれからに期待って感じかな?」


 二人は笑っていた。命を失わずに済んだと、安堵の笑みなのかもしれない。


「でも、あなたは駄目。姫乃来実、あなたは駄目です」


「オレを、殺すってのか? いいよ殺せよ、もうどうでもいい……」


 あぁ、本当に自暴自棄になっていいるんだ。可愛そうに。


「何言ってるの? 君のペナルティはしぬことじゃない。生きることだ。生き地獄を」


 多くの人を傷つける危険性のある人は私には必要ない。

 私は、手早く答えを入力し、小屋の扉を開く。


「じゃあ、皆さん行きましょう。私たちの明日の為に!」


 次のターゲットは、誰にしようか。楽しみだ。


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