第87話 おっさん、負けないよ
あとちょっとでできるということで、俺は座って待つことに。
キッチンで真剣に料理したり、たまにキャイキャイやっている2人を見ながらボーっとする。
しかしこの2人はナチュラルに俺を刺激してくるな。
あれか?俺もAIの言うように興奮しやすい状態ってことなんだろうか。
いや、そうでなくてもこの2人のエプロン姿は破壊力が高い。
いや、もしかして狙ってるのか?
確かにお祝いのために気合を入れて料理してくれてるってのもあるかもしれないが。
そう思ってみると、料理もニンニクが効いてそうなのや、卵を使ったもの、肉系が多い気もする。
ふつーに男や酒好きが好きそうなメニューとも言えるが。
しかしそうだとすると俺はあまりにも無防備に2人のテリトリーに入り込んでしまったかもしれない。
手作り料理に素直に感動し、
エプロン姿に圧倒され、
そしてこの後、お祝いされて素直に喜び、
酒を飲まされ、
精のつく料理を食わされ、
動けなくなったところを襲われてしまうのだ。
・・・・・・
・・・
あれ?別によくないか?
うん、全く不都合はない。
というかなんならこっちもその気だし。
ミヤの言ってたアレはまあスルーするとして。
俺にその気はなかったが禁欲に付き合ってくれて、
今日も応援に来てくれて、
マヤなんかは感極まって泣いてまでくれて、
手料理でお祝いしてくれる2人に、
報いないなんてあるだろうか。
いやない(反語)。
マジでミヤの言ってたあれは考えさせてもらうが。
ほんとに俺がAIの言ってた状態だというなら、このあと酒が入ったらそれも自然にやっちゃう可能性もあるしな。
そんなアホなことを考えていると最後の皿を持ってマヤが席に着いた。
「おまたせー」
ミヤはお酒をもってきたようだ。ビールももっているがゴトリと置いたその瓶は・・・。
ワインか。しかも赤白2本ずつ。
やはり本気か、この姉妹。
と視線をやると、
「お祝いだからねー」
とミヤ。
「私もちょっと飲むよ。白だけだけど」
マヤも白なら飲むらしい。
まあ俺もいけるが。
とりあえず最初はいつも通り、俺とミヤはビール、マヤはレモンサワーだが、今日は缶のままではなくグラスに注いでいる。
それだけで特別感。
「じゃあ、今日はシンのデビュー戦勝利のお祝いということで、」
「長いぞー」
「ちょっとそこの妹うるさいよ。
えっと、シンかっこよかったよ。デビュー戦勝利おめでとー!」
「おめでとー!」
3人でグラスを鳴らし、一口飲む。
「ありがとう、うれしいよ。
ほんとに。2人のおかげだよ」
ミヤとマヤの顔をちゃんと見て伝える。
デビュー戦が決まった知らせをこの部屋で聞き、2人にも伝えたあとから、ずっと応援してくれた。
正直、俺だけでも勝てただろうが、その場合チートで結構適当に勝ってしまいそうだった部分もあった。
だが2人の応援や協力が確かにモチベーションになり、ちゃんと減量し、デビュー戦に向けてのボクサーってのをやれたのは確実に2人のおかげである。
マヤはジョギングにチャリで付いてきてくれたり、ミヤなんか、ちゃんと調べて練習の後にマッサージしてくれたこともあった。
エロい感じにならないようにちゃんとしたやつだ。
可愛い女の子2人に応援してもらっておいて、チート全開でテキトーに終わらせるなんてできなかったのだ。
まあ使ったし、今日の勝ち方がかっこよかったかどうかはアレだが。
だから本当に感謝しているし、こうしてお祝いしてくれるのが本当に嬉しいのだ。
その辺、チートなあたりを伏せて2人に伝えると、今度はミヤが泣きそうだ。
「おいおいおい、大丈夫か、ミヤ」
「だって~、シン君勝ったときすんごい嬉しかったんだから。
いっぱい応援したし、絶対勝つと思ってたけど。
そんなふうにありがとう言われたらウッってなるよ~」
会場ではマヤに先に泣かれたしな。
「ほら、おめでとうの会なんだから。
シンもいっぱい食べて」
「じゃあ、いただこうかな。
正直ずっとこの料理を前にしておあずけだったからそろそろ限界だったんだ。
いただきます!」
そうして、3人でうまい飯を食べながら、今日の話で盛り上がった。
ライオとそのお友達とのいざこざまでいかないがそのあたりを話したり、それより2人が食いついたのは、俺が観戦していた試合の最初のK.O負けのお母さんやその他の負けた側の皆さんの話だった。
結構真面目に興味深そうに聞くもんだから、
「俺は負けないけどな」
と言ったら、
「わかってるよ~」
「シンは強いもんね」
と、ほんとにそのへんの心配はしていないようだった。
うわぁ、頑張ろう。
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