第85話 おっさん、ギャルはずるい
俺は言えたことに満足していたが、トレーナーからはあきれたような視線を向けられた。
てことは当然元ネタしってるってことだよな。
え?俺(45歳)よりだいぶ若いよな。30かそこらだろ。
まあオタクじゃなくても履修はするか。そうでなくてもそのネタだけしってるってやつも多い。
そういう偉大な言葉なのだ。
そのあとリング上でのなんやかんやがあって、控室へ戻る途中、会場出口の横くらいにミヤとマヤが待っててくれていた。
「おう、勝ったぞ」
右手をちょっと上げながら、そう宣言するも、ミヤは苦笑いだ。
その視線の先はなぜかえぐえぐ泣いているマヤだ。
「先行ってるぞ」
とはトレーナーだ。気を使える男じゃん。
行ったのを確認したのかちょうど抑えが効かなくなったのか、マヤが俺に抱きついてくる。
「ちょっ、汗!汗やばいから、待っ」
言うも虚しく汗だくな俺の胸に収まると、泣き止むのかと思ったらもっと泣く。
まあボクシング会場に来るような格好だから要クリーニングみたいな服装じゃないのが幸いか。
そもそもマヤの普段着も似たようなもんだが。
「どうしたの、このお姉さん」
ミヤに聞くが、
「私も分かんないの。
最初、応援してたときはそんなでもなかったんだけどねー、最後のラウンドあたりからおとなしくなっちゃって」
らしい。
「なんだ、俺が怖くなったか?」
強い、イコール、カッコいい、モテるってのは間違ってもいないが、現代日本においては正解であることのほうが少ないかもしれない。
もちろんボクシングは格闘技でありスポーツではあるが、リアルな殴り合いってのは一部の、いや、多くの人間にとっては刺激が強いのも事実だ。
特に初めてだとな。
だが、首を振るマヤ。
後ろでは次の試合の準備が進められている。
一旦出口から出て端の方に寄る。
まだグローブのままなんだが、しばらく頭ぽんぽんしたり撫でてたら落ち着いてきたのか少しづつ話しだした。
「えっとね、あ、おめでとう」
「お、おう、ありがと」
唐突なおめでとうに、拍子抜けしてしまう。
「あ、そうだよね。デビュー戦勝利おめでとう。
すごかったよー」
「うん、ミヤも、ありがとう。二人とも来てくれてうれしいよ」
実際マジでうれしい。
「かっこよかった。シン、すごいなー、がんばれーって観てたよ」
「ね。ひょいひょい避けるんだもん、あんないっぱいパンチ出されてるのに。
最初マヤも全然泣きそうとかじゃなかったよね」
「うん、私もこんななるって思わなかった。
てかなんで泣いてるか自分でもよくわかんないの」
「そっか、まあ知り合いのガチの殴り合い観たらな」
「そうかなー。もう全部かも。ホッとしたのが一番かもだけど。
最後のほう相手の人も鬼気迫ってきて、シン大丈夫かな、怪我しないでね、負けないでって、ちょっと怖くなっちゃって」
俺も挑発しまくったからな。
「で、最後、「シン君勝った!勝ったよ」ってミヤに肩バシバシされて、」
「そ、そうだっけ」
なんか照れてるミヤ。
「もう、かっこよくて、安心して、すごいーって、やっぱ好きーってなってそういうの全部で涙いっぱいでちゃったかも」
「・・・」
ミヤを見るとなんか「分かるよー」って顔をされる。
顔が熱い。赤くなってるかも知らん。
正直ずるいと思う。
なんか、マヤって天然なんか、ギャル特有なんか知らんけど、感情型っていうか、どストレートなんだよな。
最初のときは酔ってたからなーとも思ったがどうやらデフォらしい。
あんまりこんな感じで気持ちをまっすぐぶつけられた経験はないぞ。
そもそもギャル好きといっても、ギャルものが好きなだけで、リアルではギャルと今まで接点などなかったからな。
初めてくらいだぞ。免疫無いわ。
えぇ、好きー。惚れてまうわー。
もうほんとこのお姉さんは。
「じゃあもう平気なん?」
「うん、泣いてスッキリしたまである」
泣きはらした後の顔ではあるがたしかにスッキリした表情でまぶしい笑顔である。
最後にマヤをぽんぽんすると、
「そうかい。
じゃもう行くぞ、トレーナー待ってるかもだし」
「あ、そうだよね。ごめんね?」
「いいよ、うれしかったし」
「あ、ねぇ、シン君今日ウチ来るでしょ?
お祝いしよ」
「うん、来て来て」
このお誘いは断れないな。ってかめっちゃ嬉しい。
「おう、絶対行くよ」
「待ってる?」
「んー、この後なにするかわかんないから先帰ってて」
「わかった」
行こうとすると、ミヤが寄ってきた。そして小声で、
「ねぇ、試合の後って、なんか、こう、クるものがあるの?」
「は?」
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