第74話 おっさん、電力王に俺は
俺はAIに言われて久々に自社の工場に来ていた。
社長なのにそのへんは全部AIに任せきりだからな。
別に来る必要もないんだが、まあ、雰囲気だ。
『転移』スキルで一瞬だしな。
女神のとこに行く以外は滅多に使わないが、自社内での転移ならだれにも見られる心配はない。
さて、AIに状況を聞くか。
「順調です」
とのこと。
「おう、もうちょっと詳しく頼む」
良い報告なんだが、もっと詳細を知りたい。
「まず発表しているバッテリー、従来の2倍の性能の電池についてですが、送り付けたメーカーの内、多くのメーカーから前向きな回答は頂いてます。
しかし大手メーカーからの発注には至っていません」
まあ、いくら性能が2倍とはいえそんなすぐには新進のよくわからん企業の作ったバッテリーなんか採用出来ないよな。
しかしその言い方ってことは・・・
「はい、いくつかの中小やベンチャー企業から数百個単位の発注をいただいています」
おぉ、さすがに大手と比べて動きが早いな。
「あと、どこで聞きつけたのか、海外の大手メーカーからも問い合わせや注文が来ています。
こちらは断ってしまってよろしいですよね」
「ああ」
当面の方針としては、国内を対象としておく。
国内産業の発展に寄与したいのだ。
「アップルパイからも打診が来ていますが」
アップルパイ!?
「え?PiePhoneの?あの?」
「はい、そのアップルパイです」
マジか。そんなに注目されてるか?国内メーカーには片っ端から見本と性能データは送ったが・・・
まあ、海外メーカーの筆頭ではあるからな。
「まあ、断るか。あの規模だからな、どのみちそこまでの生産力はないだろ?」
「完全受注のハイエンドPC向けとかなら対応可能かもしれませんね。
ああ、PCと言ってはいけないんでしたか」
パックな。別にいいと思うが。
実際ほとんど使ったことないんだよな。
PCはドアーズ派だし、スマホもヒューマノイド派だからな。
実際、PiePhoneだけで何百万台単位だろう。国内シェアの半分って聞いたことがあるからもっとか。
アレのなにがいいんだかわからんが。
しかし海外メーカーに売らないとかしたら独占禁止法とかに抵触すんのかな。
まあ、AIにうまいことやっといてもらおう。
「どんなメーカーからの依頼が多いんだ?」
「国内でもPCやスマホ関連はほぼ大手になりますので、それこそアップルパイくらいです。
今多いのがドローンや小型のモーター付きの乗り物系、自転車やキックスクータなどですね」
確かにうちにも電アシのチャリがあるが、あのバッテリー重いんだよね。あとデカいしダサい。
半分にすべきかそのままで容量増やすかは悩みどころだが。
慣れてる俺はそのまま容量増やすほうがいいと思ってしまうが。
大きさと重さが半分になるならもっとスタイリッシュな自転車でも搭載できそうだな。
ふむ、これで中小やベンチャーが元気になってくれるなら応援したいな。
「はい。
あと、現状は順調ですが、長期的に見ると材料、特にリチウムの調達に支障が出そうです」
あー、アレも希少金属なんだっけ。主な産出国は・・・
と思っていたらAIが説明してくれた。
南半球が多いな。お隣の大国もか。広いもんね。
塩湖で採れるんだっけ。まあ、我が国には無いよな。
あれ、海水から採れないんだっけ。
「採れますが、コストや設備の問題があります。
まあ重要資源なうえ、海水ならほぼ無尽蔵なのでいろいろやってはいるようですが」
まあお察しってことだろう。そこの技術革新を促すのもありか。ウチの会社で開発ってのもいいな。
だがあんまり手を広げるのもなぁ。
他の代替は?
「全固体電池などは期待されていますね。
弊社での研究も始めていますしかなり進んでいます。
今の高性能リチウムイオンバッテリーの次かその次くらいの世代では実用に向けた発表をしてもいいかもしれません」
マジか。と言ってもそれがなんなのか知らないんだよな。
名前を聞いたことがあるくらいで。
充電が早いとか寿命が長いとかざっくり聞いた気はするが。
まあ、今後エネルギーの課題を解決するには必要な技術なんだろう。
「ソーラー発電は?」
「研究では出力をおよそ8倍にすることに成功しています」
「は?」
8割増とかじゃなくて?
「8倍です。
今の方式がお粗末すぎるの一言に尽きます。それが判ったのも鑑定先生のおかげではありますが、判ってしまうと今の方式の無駄の多いことといったらありません」
これは常識が変わるな。
太陽光発電って国内発電量の1割弱ぐらい賄ってるよな。まあムラがあるから全取っ替えってわけにはイカンだろうが、いまあるパネルを取っ替えるだけで国の電力の6、7割賄えるってことだよな。
「はい、一般家庭はソーラー発電が普及することになるでしょう。ムラについては弊社のバッテリーで補えばいいかと」
「よし、この国のエネルギーを掌握するめどが立ったな。
研究も普及もどんどん進めていくか」
「はい」
この物語はフィクションです。
トントン拍子なのはフィクションだからです。実際は研究者の方たちの多大な努力の継続により発展するものです。
現行技術に含むところは一切ございません。むしろ敬意しかありません。
今回のお話を書くにあたり、少し調べただけですが、日々、バッテリーや発電関連のお仕事や技術の研究に関わっていらっしゃる多くの方々には改めて感謝と敬意を評したいと思いました。
あといつもどおりですが、作者のモチベーションになりますのでいいね、お気に入り登録、感想など、よろしくお願いします。
カクヨムでも連載中の作品になります。
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