第69話 おっさん、評価アップ
俺はぐーたらしていた。
仕事中、ウチの会社がシステムを導入している顧客のオフィスで。
そこに用意してもらった、自席で。
オフィスチェアだがそこそこいい椅子のリクライニングを目一杯下げて。
もちろん、デスクのキーボードやマウスに手は添えているが。
並列思考でいい感じに動いている。
俺の業績は今のところ大して上がっているわけではない。
今のシステム開発はそこそこ長期のプロジェクトのため、いくらシゴデキになったところでいきなり業績アップとはいかないのだ。
だが顧客からの評価は高い。
別にたいしたことはしていないが、俺がスキルを得てからというもの、品質は上がったし、ちょっとした要望や仕様変更も二つ返事で即対応するようになったからな。
いちおう自社向けの研修というか勉強会を会議室を借りてたまにやるようにしてたんだが、それに参加したいと言ってきた顧客の開発メンバーの参加を許可したところこれも好評だった。
傍目にはだらしない、おっさん中間管理職だろう。
たまに席にいると思ったら、こんな体勢でダラダラ作業しているんだから。
席にいないと思ったら、顧客の管理職とおしゃべりしたり、自社の開発メンバーとおしゃべりしたり、顧客の女子社員とおしゃべりしたり。
結果を出してるから文句は出ないし、何なら顧客の管理職まで巻き込んでるから、全員が味方まである。
最初、敵対というか面白く思ってなかった人達もいた。
俺と同世代や、その周辺の、バリバリ働く系だったり意識高い系の男子社員だ。
嫉妬なんだか劣等感なんだかで、どうも俺とは仲良くしたくなかったらしい。
そんな彼らをどうしたかと言うと、別にざまぁして黙らせたわけではない。
すぐざまぁにいく思考、WEB小説の読み過ぎだぞ。
一緒に飲みに行ったり、仕事で彼らを立たせるように立ち回ったり、それだけだ。
別にマウント取って潰す必要なんてない。
仲良くなればいいだけだ。
まあ、別の見方をすればざまぁか。
俺がいいやつだから、こちらに悪意がないから、有用だから、だから争わなくていい、負けていい。
そんな自覚のあるやつはいないだろうが、俺に言い訳を用意され、それでいいやと爪を収め、牙を抜かれたのだから。
負け犬根性を植え付けられたのだから。
それでも穏便にことが運んだのには変わりない。
公開処刑的なざまぁよりは全然いいだろう。
そんなカンジで今の現場にはほぼ敵がいない。とても快適な職場だ。
さて、元々パソコンオタクの陰キャのシステムエンジニアな俺が、何故そんなにみんなと仲良くなれたのか。
答えは簡単。スキルだ。
仕事関連は職業『IT技術者』で無双なのは前述(32話)したとおりだ。
コミュニケーションについては鑑定先生とハッキングを駆使するAIによるアドバイスがほとんどだ。
全てと言っていい。
まずハッキングにより、全ての人間の仕事状況を把握しているため、誰かが困っていれば、顧客、社員問わずすぐに分かる。
そしてAIが適切な対処方法を添えて俺に教えてくれるので、俺はそれを持って雑談がてら解決しに行けば良い。
何度か「困ってるといっつも助けてくれますね」と言われたことがある。
流石にハッキングしてますとはいえないので、「顔色見て分かるようになっちゃいました」と誤魔化している。
ほとんどの人達と飯や飲みに行って仲良くなってるので、なんとかそれで通じるようだ。
AI曰く、『これで顧客の女子社員が2人堕ちました』とのことだが、まあ、ファンが出来たと思っておこう。
またハッキングスキルではその人の趣味、嗜好まで把握できるし、鑑定ではさらにそれらが詳細になったり、データではわからない機嫌の良し悪しや健康状態まで分かるのだ。
おかげで話題や差し入れ、話しかけるタイミングなど、どれも外すことがないため、陰キャの俺でも話しかけるときのストレスがだいぶ軽減されている気がする。
もっとも「話しかけること」が一番ストレスというかアクションに最もエネルギーを使わなければいけないのは変わんないが。
それでも話しかけた結果がことごとく良いってのでその負担はかなり減っている。
皆さんからしたら俺はまるでマッチングアプリで相性100%の人にでも見えるかもな。
そりゃあ、ファンの2人くらいできるか。
とはいえあくまでビジネス上のツールとしてしか使う気はない。
思っきし不正アクセス禁止法に抵触するだろうし、倫理的にもアウトだからな。
まあ職場がいい雰囲気でみんなが楽しく効率よく仕事ができて俺の評価も上がるんだからウィンウィンってやつだな。
おっ、なんか顧客の社員さん(女子)がこっちに来るぞ。
まあ時間的におそらく・・・
「お昼行きません?」
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