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第67話 おっさん、手土産を持って

俺は正座していた。


こたつに入りながらだが。


「別に怒っていません」


ちょうど、報告が終わったところだ。女神()への。


確かに口ではそう言っているが。


いや、表情も別に怒っている感じではない。笑顔だけど目が笑ってないとか、そういう感じでもない。

本当に自然体のままというか、普通の顔だ。


なのに俺は押しつぶされそうだ。


女神から放たれる圧というか、のしかかってくる空気みたいなものに。


やはり報告内容が良くなかったのか。


『ボクシング頑張ってるよ』とか、『異世界で盗賊やっつけたよ』とか。


そんな報告にしておけばよかったのか。


『ナンパしてきた女の子と~』とか、


『しかも姉妹2人とも~』とか、


『スキル使わなかったら盗賊倒した後メンタルやばくてさ~、道中一緒だった女の子と~』とか、


『奥さんとは相変わらず仲いいよ~』とか、


この辺が余計だったのだろうか。


確かにそのたびに、ずしっ、ずしっ、と圧が上がっていったような気はするが。


だって、前回俺の自意識過剰みたいになっちゃったし、どう過ごしても怒らないって言ってたし。


「言いましたし、さっきから、怒っていませんと言っています」


あ、今日は心読むんですね。

じゃあこの圧なんとかしてよ。


「気のせいです」


マジで!?

俺の後ろめたさがこの圧を感じさせているだけだというのか。


もう報告は終わったし帰ってもいいとは思うんだが、それは正解じゃない気がする。


俺も元々報告した後はこっちでくつろぐ気で来ているしな。


と考えて思い出した。


俺は収納から、手土産を取り出してこたつの上に出す。

決して来る前から後ろめたくて用意していたわけじゃあない。


「これは?」


「お土産、一緒に食べようと思って」


若干圧が弱まった気が・・・


そして女神が箱をあけたところで、


「ラ・〇〇〇〇・デュ・〇〇〇〇のガトーショコラだ。

店舗限定だぞ」


そしてまた圧が下がったような・・・


「お茶を淹れてきます」


箱を持った女神はウキウキでお茶を淹れに行った。


女神が消えていった和室の引き戸の向こうがどうなっているかは気にしないことにする。


真っ白空間のはずだが・・・気にしない。


それから5分ほどで、皿に乗せられたケーキと紅茶を持って戻ってきた。


何やら気合の入った、品のある皿やカップとソーサー、カトラリーも同様だ。


「良いものには相応のものをと思いまして」


「なるほど」


わからんではないが。


俺は適当な皿とフォークで、なんならフォーク1本で箱をそのまま皿に使うみたいなことをするからな。


俺の前に皿とカップが置かれる。


女神も席についた。


「では、いただきましょう」


「ああ、いただきます」


フォークで掬って、口にはこぶ。


そして味わう。


「うん、うまい」


見ると女神も一口食べたところだ。


目を閉じてうっとりしている。片手は頬に添えられて。


そしてまた一口食べてまたうっとりしている。


そして女神はあっという間に食べ終わってしまった。


俺はそんな女神を見て楽しみながら食べていたからまだ半分くらい残っている。


そして物欲しそうな目でちらちらこっちを伺う女神。


俺は掬って女神の方に差し出した。


「食べる?」


ここで、あ~んイベントとは。しかもさせる方。


「はい!」


いい返事だ。


「あ、まって、心読むの切ってくれたら―」


「はい、切りました、もう読んでないです」


一瞬すごい残念そうな顔をしたと思ったら食い気味にそんな事を言ってきた。


「・・・はい、いいよ、あ~ん」


「あ~ん」


もらう方は言わなくていいのよ、かわいいなあ。


これだから切ってもらわなければいけなかったのだ。心読むのを。


こたつに乗り出して、こちらに向けて口を開ける女神に、無心でいられる自信がなかったのだ。


「・・・あ~ん」


おっと、忘れてた。


催促のあ~ん、かわいいなあ。


俺はケーキを女神の口に入れてやる。


もう丸々一つ食べてると思うが、まだうっとりできるらしい。


そしてまたあ~んを繰り返す。


女神が身を乗り出すたびに、2つのそれが寄せられるというか、乗っかるというか、つぶれるというか。


前かがみだからなおたちが悪い。いや、良いのか。


しかしそれを抜きにしても、こう、女の子があ~んしてるところに、食べ物を入れてあげるという行為が、なんか、クるものがあるな。


変な扉が開きそうだ。


しかし幸いにもそんな扉が開ききる前に、俺のガトーショコラも最後の一口になった。


そしてその最後の一口も食べ終えると満足そうに頷き、紅茶を口にする。


「素晴らしかったです」


本当にな。


「だったら良かったよ」


そういえば、圧もいつの間にか消えている。


うん、手土産って大事だわ。



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カクヨムでも連載中の作品になります。

https://kakuyomu.jp/works/16818093080286722080

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