第61話 おっさん、護衛依頼完了
あのあと、問題なく賊どもの撃退は完了した。
現在、被害の確認と警戒中だ。
周囲の物陰に潜んでいるやつも居ないことを確認している。
それに被害と言っても、矢が積み荷にいくつか刺さってるぐらいで、人も無傷なら馬も無事だ。
それこそ一番心配されたのが馬車から落とされた俺だったぐらいで、本当にみんな危なげなく賊を撃退していた。
みんなが俺を心配している後ろで「大丈夫だ、問題ない(きりっ)」とボソリと言っていたエライザは許さないが。
ちなみに生き残った盗賊は結構居たが、歩けないやつは此処に放置、動けるやつはここで殺されるか、馬車に繋がれたまま付いてきて牢屋行きかを選ばせた。
どうせ犯罪奴隷だろうとリックは言っていたが、それでもついてこれるやつは来るそうだ。
全員装備を剥がして、数珠つなぎで両手を縛り歩かせる。
アジトもありそうなもんだが、今日中に街に着きたい俺達はその辺は諦めた。
街の兵士にコイツラを渡せば、勝手に拷問して吐かせてアジトを潰してくれるだろう。
頭領だけ賞金首の可能性があると、首を持っていくことになった。
首魁を挙げたのはネツァリだ。
それと盗賊の装備や所持品の扱いなど、その辺どうするかなどをトゥーヴァが商会の人と話しているのを俺はぼんやりと聞いていた。
そこにリックが近づいてきて俺に話しかけた。
「本当に大丈夫か?シン。
なんか上の空じゃないか?」
「ああ、大丈夫だ。そんなにヤバそうな面してるか?」
「んー、まあな」
「そうか」
リックの心配に対してもそんな返事になってしまう。
今みたいな落ち着いた状況になって、改めてさっき賊を倒したと、殺したという事実を認識して、それが俺にのしかかってきていた。
さっさと進んで欲しいもんだがもうちょっとかかりそうだ。
「・・・なあ、護衛依頼が初めてって言ってたけどもしかして・・・」
まあ、わかるよな、リックも通ってきた道だろうし。
「・・・ああ」
「そうか。まあ良かったじゃねぇか。これで晴れて童貞卒業ってことだ。
一人前だな」
その概念、こっちにもあるのか。まあ地球のその考え方も創作物でしか知らん概念だが。
戦場なんて身近にないからな。
むしろ戦場が身近なこっちにこそあるべき概念か。
「おう、今の気分は最悪だけどな」
リックにはもう初体験でまいってることを言ってしまう。
「帰ったら今度こそ行くか?」
一昨日断っちゃったからな、娼館の誘い。
「娼館かぁ・・・」
「何だ?もしかしてそっちもアレか?」
「・・・まあな」
おい、察しがいいぞリック。
いや、中身は違うんだが、この体はってやつだな。
ミヤマヤの時もやったやつだこれ。
まあ村から出てきた駆け出し冒険者のシン君は童貞ってことにしてても別におかしくないだろ。
別に中身は童貞ってわけじゃないし最初の相手にこだわるみたいなのも特にないから行ってもいいんだが。
「それならなおさらだ。
初めての時じゃなくても、やっぱ対人戦の後は違うぞ。俺だってまだ何も感じないわけじゃねぇしな」
リック曰く、対人戦の後のもやもやというか心の淀みがある時の行為は一味違うと。
ましてや俺が今日どちらも初めてだというなら格別だろうとのことだ。
そんなもんだろうか。そっちは流石に初めてだからイメージが湧かない。
「まあ、考えておくよ」
「おう」
そんなカンジでその話はここまでとなった。
気遣いも出来て誘いもしつこくない。
デキる男じゃないか、リック。
―――
――
―
その後30分ほど経って俺達は進行を再開した。
護衛中は警戒をしていたり歩いて体を動かしてるおかげか、そこまで気持ちが落ち込むこともなかった。
それでも気分は晴れないし、気を抜くと暗いなにかが心を押しつぶそうとしてくる。
なんかエライザが結構話しかけてきてくれた気もするが、適当に返してしまうことも多かった。
そういやかっこいい詠唱作ってやるって言っちゃったんだよな。どっちかって言うと仕返しのつもりだったんだが。
黄昏より昏くしてやろうか。
そんなくだらないことを考えながら、なんとか気持ちを落ち着かせ、護衛をしていると、予定より結構遅くなったが無事に街まで到着した。
賊どもは門のところで兵士に渡すことが出来た。門から壁に沿って少し行ったところに兵の詰め所があり、その地下に牢があるらしい。
確かに街の真ん中に作るような施設でもないか。
そして商会まで馬車を送り届け護衛完了のサインをもらった俺たちはギルドに向かった。
商会の人らはとても感謝してくれて、俺にまで丁寧に挨拶してくれたが、たいしたことしてないんだがなぁと少し申し訳ない気分になった。
行きでゴブリン一体と帰りに賊を一人だけだからな。
思い出してまた気分が悪くなってしまった。
ギルドに着いて依頼完了の手続きをするとそこで解散となった。
烈焔やリックたちと挨拶をすると俺はアイリスさんの宿に向かった。
宿に向かってしばらく歩いていると後ろから呼ぶ声が聞こえた。
シールズだ。
「はぁ、シン、ちょっといい?」
「ああ、どうした?」
かなり走ってきたと思うがもう呼吸が落ち着いてる。
「あのさ、シンの宿ってきれい?広い?今日空いてそうかな?」
聞けば烈焔の4人は今日泊まる予定だった宿が取れなかったらしい。
予約はしていたんだが遅くなったら客を入れてもいいって約束にしてたらしい。
まあ、帰ってこない可能性もあったしな。
で、すでにその時間をかなり超えちゃってたと。
言っちゃ悪いが、アイリスさんの宿は繁盛していない。
俺を含めた数少ない常連でもっているような宿だ。
俺的には手入れが行き届いた素晴らしい宿だと思うんだが、立地や部屋の広さの割に少し値段が高いらしい。
料理もうまいしアイリスさんもいるのにな。エミちゃんも。
そして俺の知る限り、毎日空いてる部屋が4つ以上ある。
つまり大丈夫だろう、ということと俺の評価なんかをシールズに伝え宿の場所を教えると喜んで戻っていった。
待っててもいいんだがここから戻って全員連れてくるって考えると先行ってたほうがいいな。
俺は再びアイリスさんの宿に向かって歩き出した。
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