第58話 おっさん、帰りの護衛路
カオスな飲み会は、俺を除いた3人で割り勘という形でお開きとなった。
トゥーヴァはともかく、徐々に酔いが覚めてきたネツァリは結構マジで口止めしてきた。
まあ分かるけど。
女が絡むとこうもぽんこつになるもんかね。
いや、俺も含め男はそんなもんだったな。
異性が絡むとどいつもこいつも阿呆ばかりだ。
いうて彼らも、自立している冒険者とは言えまだ二十歳にもなっていない青年だ。
Cランク冒険者だろうが、イケメンだろうが、いいやつだろうが、しょうがないだろう。
それでも彼らは、女性経験は多いらしい。リックも含めてだ。
なぜなら、どの街も娼館が充実しており、成人していて金さえ払えれば誰でも使えるからだ。
なんかチグハグな感じがしてしまうのは俺が現代日本人だからだろうか。
日本だって少し前までは15歳で成人扱いだったはずだ。
近所のお姉さん(年齢幅は広い)の筆下ろしや夜這いなんかも文化といえば文化だったのだろうしな。
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フリーの2日目と3日目は特に問題なく過ぎていった。
リックが娼館に誘いに来たり(断ったが)、エライザが詠唱を催促してきたりしたが、問題はなかった。
シールズと話すときだけ、なんか緊張というか、言えないことが3人分も増えていたため、普通にできたかどうか怪しかった。
それでもシールズは気にした風もなく、気さくに明るく話してくれた。
そして気づいたんだが、シールズはボディタッチが多い。
背中バンバンしてきたり、寄っかかってきたりはふつーにしてくるし、話すときとかは結構距離感バグってると思う。
なるほど、こういう態度に純情冒険者たちは惚れてまったわけか。
そしてシールズが俺にボディタッチしている時、こっちをちらちら見たり羨ましそうだったりと、3バカの態度がわかりやすい。
俺はもう知ってしまっているからそう見えるのかもしれんが、それでも今までよくそれで平気だったな。
バレてまうやろー。
いや、案外わかってて黙ってるのかもな。
いつだって女性が一枚上手なのだ。
それは異世界でも変わらないだろう。
まあそんなこともあったが、それだって平和なオフの一幕だ。
この2日、本当に問題と言えるようなことは無かった。
ということで今日、4日目はアインギスに戻る商隊の護衛だ。
配置は来たときと変更はないらしい。
来たときにそれで問題がなかったからというのが大きい。
冒険者だけなら様々な配置を試してみることは、連携が強化されて対応の幅が増えたりするとか結構メリットもあるんだが、今日は商隊がいる。
問題なかった配置を変えるとなると、それなりの理由が必要となる。
それこそ、訓練や連携の確認のためみたいな冒険者本位の理由ではダメだ。
そして、そこまでして配置を変えたいような理由も今回俺達には無い。
なので今日も俺はエライザと馬車の左側を護衛していた。
左右逆になっているが方角的には来たときと同じ側ってことだ。
「そういえば昨日だけど」
とエライザが話しかけてきた。
「おう」
「試し撃ちしてきた。風系の魔法とファイアアローも」
来るとき詠唱考えたやつか。確か『万象にそよぐ囁きよ~』だったか。
俺は頷き話しの先をうながす。
「やっぱり強くなってた。あと効率もいい」
やはりか。というか効率?
「効率?」
「そう、ちょっと多く撃てそう」
マジ?
「ファイアアローも?」
「そっちは変わんないかも、ウインドの方」
え、もしかして 『万象(笑)』から本当に力 もらってる感じか?
確かに ファイアアローは『我が血潮』だったから自前っぽいが。
みたいな話をエライザにもしてみたが、あまりピンとこないらしい。
今まで意識してこなかったことだろうしな。
「じゃあファイアアローもそんな感じが良い」
と簡単に言ってくれる。まあそりゃそうなるよね。
じゃあファイアもなんかから貰うか。つっても火か。そこらに落ちてるもんでもないからな。
やっぱ陽の光か。でも雨の日がなぁ。曇りでもアウトだ。あぁマグマも火っちゃ火か。
「『地に眠る怒りよ』とか?」
「なんで?」
「それはほら―」
ん?星の真ん中がマグマ、いや、そもそも星の概念あるのか?天動説?
教えて、鑑定先生!
(大丈夫です、火山の噴火はこの世界でもありふれています。
目にしたことはなくとも文献や伝わる事件として認識されているので一般常識の範囲です。
逆に地動説については、説自体は存在しますし研究もありますが一般常識ではありません)
なるほど。ということでその方向で説明をする。
ちなみにこの思考というかAIとのやり取りは0.1秒である。
「―火山とかで地中に熱があるってイメージない?」
「そう言えばそうかも。昔火山にのみ込まれた村の話聞いたことある」
「な、あの力分けてもらうイメージだとウインドの時と同じことになりそうじゃないか?」
「うん」
「じゃあそんな感じで」
と、またエライザはブツブツと新しい詠唱を繰り返す。
そして今回もまたすぐにとはいかなかったが、しばらく進み、そろそろ半分来たかというところで試し撃ちの相手が現れた。
今回はシールズの警戒の色も強く、全方位に警戒するように指示が来る。
雑魚の一匹二匹ではない様だ。周りに丘や木、大きな岩など遮蔽物も多い。
ネツァリに聞いていた要警戒場所の周辺だ。
シールズは敵の存在を確信しているらしく、馬車を遮蔽物が多い場所の結構手前で停めさせた。
しばらく待つと矢が何本か飛んできたが、こちらに届くことはなかった。
シールズが矢の届かない絶妙な場所で馬車を停めてくれたおかげだ。
そして矢による奇襲が失敗と見たのか、物陰からわらわらと人影が出てきた。
盗賊だ。
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