第54話 おっさん、エライザを仲間にする
護衛依頼の当日、だいぶ朝早かったが、集合時間に間に合うように余裕を持って起きることが出来た。
まあ、脳内にAIが常駐しているので、起きれないなんてことはないのだが。
最初は脳内スマホでアラーム設定していたが、
(わたしが起こして差し上げますよ)
と言ってきたので任せることにした。
そしたら翌朝、俺を仮想空間に引きずり込んで18禁な起こし方をしてきやがった。
おかげで起きてすぐ『清浄』を使う羽目になったのだが、AI曰く、
(4日間の外出の前に1度シておいたほうが良いと思いまして)
だそうだ。
4日ぐらい別に平気ではあるんだが、そういうことならと納得はしておいた。
よかったのは間違いないしな。
そんなわけでちゃんと起きれた護衛依頼当日の朝、まあまあ早かったため、アイリスさんたちの見送りなんかは期待していなかったんだが、アイリスさんは起きていた。
エミちゃんはぎりぎり寝てたようだが。
そういえば宿屋の朝もまあまあ早いんだよな。
なので宿から出るところでアイリスさんに呼び止められ、俺はまたしっかり両手を握られ、無理せずちゃんと帰ってくるように再度お願いされて見送られてしまった。
一昨日より近かった気がする。
依頼当日なのに朝からこんなにドキドキしっぱなしで大丈夫だろうか。
―――
――
―
俺は集合時間より少し早く集合場所の南門手前に到着していた。
そこでは商会の丁稚だろうか、下働きっぽい人達が荷馬車の周りでせっせと作業をしていた。
馬の手入れだったり積荷のチェックだったりをしている。
馬車は全部で5台、普通の馬車1台と、大量の荷物を積んだ荷馬車が4台だ。
しばらくして烈焔の4人とリックたち3人もやってきたので軽く挨拶を交わす。
商会の方も、メンバーがそろったようだ。
隊列を率いる会員2人と、各馬車の御者5人、商会専属の護衛4人だ。
会員の1人にトゥーヴァが挨拶に行った。
「烈焔のトゥーヴァだ。今回はよろしく頼む」
いきなり不意打ちがきた。
自分で言うこともあるのか、烈焔のトゥーヴァ。
相変わらずかっこいいぞ。
俺は吹き出しそうになるがなんとかこらえる。
トゥーヴァ、いや、烈焔のトゥーヴァはこちらのメンバーの説明や道程、人員の配置確認などをしている。
真面目に仕事をしているんだ。笑っちゃ不味い。
烈焔のトゥーヴァは護衛の1人にも話があるのか近づいていった。
「烈焔のトゥーヴァだ」
「ふっ!、、、ん、、、げほっ、ごほっ」
2度目はあかんかった。
何とか顔をそらし、せき込んでごまかせたと思うが。
一瞬こっちを気にしたが何でもないと思ったのか烈焔のトゥーヴァ、いやこれがよくないんだな、トゥーヴァは商会の護衛リーダーと打ち合わせを続けている。
ふぅ
と目の前にエライザがいて俺をじっと見ている。
顔をそらした先にエライザがいたようだ。
「ど、うした?」
とりあえずとぼける。
「なにが面白かったの?」
顔は何とか笑わなかったはずだが。
「ん?何がだ?」
まずい、見られてたか?
「笑うの、堪えてたでしょ。トゥーヴァ?」
うん、バレてるね、トゥーヴァでツボってたの。
ただなにが可笑しかったのかは分からないようだ。
異世界に中二病の概念ないもんね。そもそも中学が存在しない。ってそれは関係ないか。
「いや、ちょっと地元の考え方っていうか、独特な感覚だから説明しづらいんだ」
「うん」
え?それでも教えろって目で俺を見る。
「え?いや本当に説明が難しいっていうか」
不可能に近いっていうか。
「大丈夫、聞いてから判断する」
マジか。
「いいけど、もし理解できたら戻れなくなるぞ。
つらい思いをするかもしれない」
現役で烈焔のエライザなわけだしな。
「教えて」
さて、どう説明したものか。
「そうだな、俺の地元の子供たちの間で冒険者ごっこが人気でな。特に「かっこいい」ことが流行ってみんなが競ってかっこいいことを模索したんだ」
「うん」
「みんな「かっこいい」パーティ名や二つ名、技名、格好とか、そんなのを求めてとにかく工夫したんだ」
「(こくこく)」
頷きながら聞いている。
ちょっとかわいい。揺れるし。
「いろんなパーティ名が生み出されたな。
『闇』や『光』、『蒼』とか『赤』なんかは人気だったな。
『闇の黄昏』やら『蒼穹の剣』やら、『赤光の月』やら。
あ、『炎』も人気だったぞ?」
お前らは『焔』だけどなとは言わない。
「・・・」
真剣に聞いている。
身に覚えでもあるのだろうか。
「二つ名も似たようなもんだったがこっちは偉そうなのが多かったな。『王』や『帝』を入れた『炎王』とか『雷帝』とかな。
技名なんてもっと酷かった。
『永久なる力醒ます吹雪』なんてのもあったな。
相手は死ぬそうだ」
「(ぷるぷる)」
お、笑ってる?
「格好で工夫するやつも現れた。
右腕に包帯巻いたり、眼帯したりだ。何でか分かるか?強すぎる力をそこに封じているそうだ。疼くんだそうだ」
「・・・」
なんかいたたまれない感じの表情だな。
「かっこいいよな。
どれも子供の考えるかわいいお遊びってやつだ。
まあ、大体のやつは成人かそれよりちょっと前くらいには恥ずかしくなったり、他のことに入れ込んだりして、だんだんとやらなくなるんだ。
だが成人直前になってもそこから抜け出せないやつもいた。
あるいは成人直前になってからそれが好きで好きで抑えられなくなるやつもいた。
そしてそいつらも正気に戻るんだがもうその時はみんなの話のネタだ。
みんなが彼らに聞くんだ。
「今日は右手は疼かないのか?」
と」
「・・・」
「・・・」
話が終わり俺とエライザは無言で見つめ合う。
わかってもらえただろうか?
ちょうどそこでトゥーヴァが御者の一人に向かっていった。
「烈焔のトゥーヴァだ」
「ぶっ!げほっけほっ」
今のは俺じゃない。
「理解出来たんだな」
むせながらもぷるぷる震えてるエライザに声を掛ける。
顔真っ赤だぞ・・・
「な、知らないほうがよかっただろ?
烈焔のエラ―「やめて」」
言い終える前に止められてしまった。
「・・・聞けて良かった。
ありがとう、シン。
あとエライザって呼んで。変なの付けないで」
変なのって・・・
自慢のパーティ名じゃん笑
おっと、笑が付いちゃったかもしれん。
「わかったよ。ごめんて」
俺は今日エライザと仲良くなった。
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