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第53話 おっさん、異世界で初の護衛依頼

「よぉ、シン、お前、護衛依頼受けないか」


冒険者ギルドで依頼を眺めているとき、リックが俺にこんな事を言ってきた。


「おう、リック。

なんだ、ウマイ話か?」


「いや、そうでもないんだけどな。

お前Eランクだろ?俺もだけど。いずれDランクって考えてるなら護衛依頼をこなしておいたほうがいいぞ。

確か昇格の条件だ。何回必要かは忘れたけどな」


あー、なんかあったな、そんなテンプレ。この世界もそうなのか。


「ってことはリックたちは受けるんだよな?

何回かやってるのか?危険じゃないのか?知ってのとおり俺はソロでまあまあ新人だぞ?」


「待て待て、質問多いって。まあ、やったことないなら慎重にもなるか。

俺は受けるぞ、当然、フェイもセティもな」


確か、フェイが弓子でセティが杖子だったか。


「俺たちは今回3回目だな、危険はまあ依頼になるくらいだからそこそこだ。

ただ今回は烈焔がメインパーティで参加してるからな、比較的安全だと思うぞ」


なるほど、それなら・・・とも思うが、リックはいちいちフラグ立ててる気がするんだよなぁ。


「あと烈焔から声かけられたときに、シールズがシンも誘ったらどうかって言ってくれたんだ。

だから新人云々(うんぬん)は気にしなくていいと思うぞ、俺たちも似たようなもんだしな」


「そうか・・・」


ちなみにシールズは烈焔の斥候(シーフ)っぽいおねーさんだ。


烈焔とはネツァリとトゥーヴァの名前言えない事件の後、そこそこ仲良くはなっていた。


会えば挨拶や立ち話くらいするし、また今度って言ってた飲みの約束も果たせた。


まだ、ネツァリとトゥーヴァの名前はちゃんと言えないがそれでも上達はしている。

間違っても『ねちゃり』、『つーば』などと言うことはなくなった。


トゥーヴァを呼ぶときにエライザ(魔法使いっぽいおねーさん)から何か期待に満ちた視線が送られてる気もするが気のせいだろう。


そんな感じでまあまあ良好な関係の烈焔からの声掛けと言うのなら、参加してもいいかもしれない。


いや、参加したほうがいいだろう。


実際こういった機会は多くないし、「また誘ってくれ」と断ればおそらく次はないか、しばらく先になりそうだ。


護衛依頼があり、しかもその規模が烈焔の他にも数名が必要な規模となるとごく少数だろう。


烈焔以外が受けてしまえばそれこそ俺みたいなのに声はかからないはずだ。


かといって少人数の護衛依頼でメインのパーティがDやEランクだとして、俺が入れるかどうかもあるし、危険度も今回の依頼よりは高くなる。


うん、受けるべきだな。


「よし、受けることにする。ほかに急ぎの用事もないしな。

話持ってきてくれてありがとうな、リック」


「お、ほんとか。

礼ならシールズたちに言ってくれ。俺は伝えただけだからな」


やはりリックいいヤツ。


その後俺は護衛依頼の詳細をリックに聞き、ギルドにも受ける旨を伝えておいた。

これで烈焔にも伝わるだろうし、会えばその時に話せばいいしな。


依頼主はこの街のそこそこ大きな商会で、結構な隊列を組んで移動するらしい。

出発は明後日早朝で、隣町のツヴァイクロスまで一日かけて向かい、1泊。

2日目と3日目はフリーで4日目に同じ商会の隊列を護衛して帰ってくる予定らしい。

移動中の食事と宿代は出るとのことだが、要は2、3日目の宿代以外は自分で出さなきゃいかんらしい。

だいたいそんなもんらしいが。


その日は俺はいつも通り常設依頼をこなし、翌日は準備と休息に充てることにした。


普段は飯などは人目を確認してから『収納』でなんとかしているが、1日中一緒となるとそれも使えない。

万が一のために1日分程度の食料、野営道具ぐらいは持っていったほうがいいだろう。


水は生活魔法の『給水(ウォータ)』で大丈夫だしな。


ちなみに生活魔法の威力で「あれ、俺なにかやっちゃいました?」にならないことは調査済みである。


そういえば、この街を離れるのは来てからは初めてだな。

アイリスさんにも言っておかないとダメだな。4日目の夜は帰ってきてアイリスさんの宿に泊まる予定なわけだしな。


まああの宿が全室埋まってることなど、俺が来て以来一度も見たことはないが。


などと失礼なことを思いながら俺は宿に戻って、アイリスさんに3日ほど依頼で空ける旨をは伝えた。


「そうなんですね。

かしこまりました。シンさんのお部屋はそのままにしておきますので、安心していってらしてください」


とは、アイリスさんだ。


「ありがとう、アイリスさん。助かるけどいいのか?」


実際は全部収納にぶち込めばいいだけなんだが、いろいろそのままでいいのは助かるからな。


「知ってのとおり、ウチがいきなり繁盛して全室埋まるなんてことは無いから、心配しなくていいわよ」


と、若干自虐気味なのはエミちゃんだ。


「お、おう」


頷くわけにもいかず曖昧に返事をしておく。


「はい、シンさんのお留守の間、お部屋はしっかりと管理しておきます。

ですので、ちゃんと帰ってきてくださいね。

くれぐれもご無理はなさらないように」


アイリスさんは俺の手を取り優しい言葉をかけてくれる。

近い、近いです、アイリスさん。


照れてる俺を見て楽しんでいるような雰囲気もあるが、本当に心配してくれてるのも伝わってくる。


なんだかんだもう一月以上滞在してるからな。

こんなふうに言ってくれるのは本当に嬉しい。


「シンみたいのでも長期滞在のお客さんが減っちゃうと痛いから、ちゃんと帰ってきてよ」


「ああ、ちゃんと気を付けていってくるよ。

ありがとう、アイリスさん。エミリアも。」


エミちゃんのツンデレもとても愛おしく感じてついニヤついてしまう。

見るとアイリスさんもエミちゃんを見てニヤニヤしている。


「べっ、別に―――

もう!なんでもないわ!」


俺たちにニヤニヤと見られてなにかを言いかけたがやめてしまった。


もしかして

『べっ、別に、あんたのこと心配してるわけじゃないわ!

宿の収入が減らないか心配なだけよ!』


とでも言おうとしてたのだろうか。


だとしたらニヤつくべきじゃなかった。


とんでもない損失だ。後悔してもしきれない。


今からでもちゃんと言ってくれないだろうか?


「別に、何かしら。言い掛けてやめるものじゃないわよ?」


おっ、アイリスさん、ナイスアシスト。

これは外せない。絶対にゴールを決めなければ!


「『別に私がシンをいっぱい心配して早く帰ってきてほしくてもいいでしょ』ってとこじゃないかな?

素直に言ってくれていいんだぞ?」


言うなよ、むしろ逆を言ってくれ(懇願)


「そんなわけないでしょ!

別に、あんたのこと心配してるわけじゃないわ!

宿の収入が減らないか心配なだけよ!」


ゴォーーーール!!

俺は脳内でピッチを爆走した。

ジャンプして半回転して仁王立ちだって決めた。


大好物です。


ああ、この宿に決めて本当に良かった。




作者のモチベーションになりますのでいいね、お気に入り登録、感想など、よろしくお願いします。


カクヨムでも連載中の作品になります。

https://kakuyomu.jp/works/16818093080286722080

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