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第39話 おっさん、自分のスキルにひく

「ところで、各作業の進捗なのですが、」


「おう」


「現在、研究を行っているものは全て、目標の性能を達成できる見込みです」


「マジか、最近始めたばかりだろう?」


「はい、現在の想定では3ヶ月以内にテストが完了します」


「想定より、だいぶ早いんだが」


正直なところ、年単位で考えていた。


「はい、研究を開始して分かったのですが、マスターの『鑑定』スキルがすこしオカシイですね」


「なんか想定外の能力だったか?スキルに不具合なんてある?」


「いえ、不具合はありません。

想定外は想定外なんですが想定以上の能力です。

チートもチート、ぶっ壊れ、ヤバいという意味のオカシイ(・・・・)です」


「は?

まあ、『鑑定』先生は定番ではあるがチートの代表だからな。

そりゃあ『壊れ』だろうけどオカシイって具体的にどうオカシイんだ?

以前(まえ)検証したときは当選発表前の宝くじとか値上がりする株とかはわからなかったよな?」


「はい、投資は『鑑定』ではなくAIで収集した情報や過去の統計結果を元に行い利益を出しています」


「ああ、未来の価値なんかはわかんないんだよな」


「はい、確かに鑑定対象の現在の(・・・)ステータスを鑑定できます。状態、状況、品質などですね。

さらに、その『もの』としての欠陥や不足、不備まで判別できることが判っています」


「そこまでは聞いた気がするな」


「はい。ここからが新事実なのですが、研究に際し、参考にした論文を鑑定してみた結果もやはり不備を検出できました。

物体の不備ではなく、文書の内容の不備を検出できたのです。

これが相当なことです」


「ん?何か違うのか?」


「物体の不備はその物体の状態に過ぎませんが、文章の不備を検出するということは文章化できる事象全ての不備を検出でき不備がなければ正しいということになります」


「おう・・・んん?」


「例えば「ダイヤモンドより硬い物質は存在しない」という文章を書いたとします。

実際、ダイヤモンドより硬い物質は存在するので、鑑定するとこの文章が誤っていることがわかります。

「異世界が存在する」や、「スキルが存在する」等と書いても恐らく判定できるということです」


「おぉ、なんとなく分かった。

地上に恐竜がいるか聞いてみたくなるな」


「地底にいるかも知れませんよ?」


「AIのくせに生意気だな」


「話を戻しますが、これがチートすぎるため、研究がはかどります。

例えば2元素の合金で最も硬い元素の組み合わせを総当たりで試すだけで割り出せます。

その後最適な割合を出しますが、これも五割以上か以下かを繰り返せばいいだけです。

まあ、作成方法が鋳造か、加工か、熱処理かなどありますが、これも最初に指定すればいいだけです」


「そうか、そうやって使えば・・・」


消去法とか真偽判定で網羅できる系の事象は何でも分かるってことか。


未知の法則がいきなり判明したりはできないだろうがそれでも十分壊れている。


今ある技術は限界まで発展させることができるわけだしな。


「はい、なので既存の技術を参考にしたうえで『鑑定』スキルを使用していけば容易に研究が進みます」


「なるほど。時間の壁は越えないが、世界の理には触れられるってかんじか。

アカシックレコードでも参照してんのかね、んなのがあるかどうかも分からんけど。

それも鑑定で分かるってことか。

ん?もしかして世界の理を覆すことも?」


「「世界の理を覆すことができる」と書いて鑑定してみますか?」


「いや、しなくていい。

女神にちょっと釘刺されたからな。

何してもいいけど世界の理に影響を与えようとしたら干渉するかもって」


「なるほど、だから聞いたんですね?」


「ああ、で、女神が釘を刺してくるからには恐らくできるんだろう。

やらんけどな。

お前もやるなよ。好奇心でついとかだめだぞ。

猫が死んじゃうらしいからな」


「はい、心得てます」


「某幕府の埋蔵金の有無や場所なんかも割り出せそうだな」


「はい、鉱石や宝石、貴金属やレアメタルなんかも割り出せますね。

採掘しやすさやコストの問題はありますがそれも条件次第でしょう」


確かに歴史的価値はともかく、そっちのほうが利益的にはエグいかもな。


素材系はいくらあってもいいしな。


しかしそれなら地震とかいつ起きるかわかんねーかな。

未来のことではあるけど、大陸プレートのひずみのはなしだろ?

だったら物理現象じゃないか。


「そうですね、できるかもしれません。

が、信じてもらう手段がありません。

何度か大地震を的確に予知しておけば、次第に話題になるかもしれませんが。

的中させたらさせたで炎上しかねません。

「株価が下がる」、「パニックを煽った」、「死神だ」などと」


「確かに、科学的根拠が無いんじゃ、オカルトの域を出ないよな。

政府に匿名で通知を送って丸投げがいいところだな」


「そうですね、あと一度的中させると、今度は的中させ続けることが求められます。

一度でもサボればそれこそ「人殺し」と」


それはいやだな。面倒くさいし要らん恨みは買いたくない。

悪役で行くつもりではあるがそんな恨まれ方はゴメンだ。


「よし、地震の予知など思いつかなかった」


「はい」


これは大量の誰かを救わないって選択になるかもな。


だが仕方ない。


俺だって自分が可愛いし、今までだってそんなことはいくらでもしてきた。


金で救える命があることは現代日本に住んでれば大抵の人は知っているだろう。


貧困、飢餓、疫病。そんなものは世界中に転がっている。


だが金など送らない、募金しない、行動しない。

嗜好品を買う。娯楽に費やす。


そんな奴が大半だろうし俺だってそうだ。


まあ、論理の飛躍なわけだが。


実際政府がイロイロ払っているし、つまり税金払っている俺も払っているってことだ。


うん、問題なしだな。








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