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第31話 おっさん、意外と深刻だった

問題ないと言っていたネツァリも、パーティーメンバー全員からねちゃり呼ばれるのは辛いらしい。


「ちょっとマジか、お前ら。

冗談きついぞ。

え、マジ?」


「待って、大丈夫すぐ治ると思うから。

えーっと、ネ、ツ、ア、リ、だもんね、待って」


と言ってシールズは一文字ずつゆっくりと、徐々に早くしながら言っていき、


「ネツァリ!はい、なおったー」


エライザもそんな感じですぐに治った。


トゥーヴァは、ちょっと深刻で、


「ほら、シールズがやってるの見てただろ、やってみろよ」


とネツァリに言われても、


「え、ちゃんとネチャリって言えてるからいいだろ?」


と自覚がないようだった。

それでもいいからやれと同じことをさせたら治った。


治った自覚もないようだったが。


そんな様子を他人事のように見ていたら、さて、といった感じでネツァリとシールズが俺の方を見た。


「え?」


「なあ、シン。

まあ、悪気がないのはわかるが、ちょっとまずいかもしれない。

たかが名前をうまく言えないだけかもしれんが、俺たち烈焔は一応Cランクパーティーだ」


Cランクと言えばこの街でも数えるくらいで、ベテランの割合が多いらしい。

Aランクなんて誰も見たこと無いし、Bランクは大きな街に2、3人いれば多い方らしい。


そういえばエミちゃんの言ってた宿に泊まってるお姉さん冒険者、Bランクって言ってたけどすげー人なんじゃ・・・

そりゃ俺への脅しに使うよな。


「そうね、あまりナメられるわけにはいかないの。

あ、シンに対して制裁とかそういうのじゃないんだけど、ただ今のがあんまり広がると調子乗っちゃうやつがでてくるかなって」


お前、トゥーヴァの時めっちゃデカい声で笑ってたじゃん。

とは口に出さない。


「ああ、別に強引な手段や卑怯な手でランクを上げてきたわけじゃないがな。

それでも比較的若い俺等がCランクってのが気に入らない人らや、ごろつきに近い冒険者などにはあまりいい感情は向けられていない」


まあ、そういうのあるんだろうなとは思うが。

それが嫌だから目立たないペースでのんびりやってるわけだし。


「そんな状況でウチの前衛2人をからかうネタをあんまり提供したくないわけよ。

烈焔の(つーば)ねちゃりなんてね」


ネツァリとトゥーヴァの頬が引くつく。

俺はそこまで言ってないぞ。

2人合わせるとヤバいな。絶妙なハーモニーというか相乗効果で最強のタッグまである。


「ああ、たしかにそうだな、わかるよ。

本当にすまない。2人の名前は呼ばないようにするよ」


「そうか、わかってくれて助かる。

だがせっかく知り合えたのに呼んでもらえないのも寂しいな」


「そうね、悪気ないのも分かったし、ちょっと話した感じいいやつな雰囲気も感じたわ。

リックが仲良くなるのもわかるわね」


現代日本(むこう)で悪役目指してるんですが。

人を見る目大丈夫か、シールズ。


「なぁ、シンもさっきシールズがやってたの見ただろ。

ネ、ツ、ア、リ、を早く言っていくやつ。やってみてくれないか?」


「そうだな、やってみるか。

ネツアリ、ネツアリ、熱あり、ネツアリ、ネツアリ」


どうしても『ネ』に力が入るし、変な日本語混じったし、ネツアリの早口にしかならないが、


「いいんじゃない?

確かにまだ『ツァ』じゃないけど聞いてる分にはそんなに違和感ないわ。

本人的にはどう?ネツァリ」


「ああ、ちゃんと俺の名前を呼んでくれているってわかるよ。

全然問題ない」


「まじか、よかったよ」


とホッとしていると、


「おいおい、俺のもなんか良い感じにやってくれよ」


と烈焔のトゥーヴァ。


てかトゥーヴァにだけ付けてるけどこいつら全員『烈焔の』なんだよな。

気をつけよう。


「そうか、ツーバもだよな、あっ、わるい」


「いや、もういいんだがよ」


エライザがまたツボっているのをトゥーヴァが睨む。


それを見て俺はツーバって言えば揺れるというか揺らせることに気づいてしまった。

その度、トゥーヴァもちょっと傷つくが。


「『ト』は言えるでしょ?トウヴァならどう?」


「トウバ」


「あ、いいんじゃない?『ヴァ』が『バ』だけど。

トウーヴァの早口は?」


「トウーバ、トウーバ、トウーバ」


「どう?トゥーヴァ」


「おう、いい感じだけど、最初のトウヴァ言おうとしたときの方がよかったかもな」


「おぉ、ならよかったぜ。

悪かったなトウバ、もっとうまく言えるように練習しておくよ、ネツアリも」


「ああ、そうしてくれ」


やっとネツァリに不自然じゃない爽やかイケメンスマイルが戻った気がする。


しかし、俺には翻訳スキルがあった気が、ん?正しくは『異言語理解』スキルか。


え、理解だけ?でも話せてるよな?今までも会話成立してたし。


じゃあ、発音おかしいってことか?


リックに聞いてみるか、ってこれどう聞けばいいんだ?

既に会話できてるのに「ちゃんと話せてるか?」ってのも変な気がする。


発音正しいか聞けばいいか。


「なあリック、俺って発音おかしいのか?もしかして田舎訛りひどい感じか?

ちょっと今ので心配になっちまった」


「いや、そんなこと無いぞ。普通だ」


「気ぃ使わなくていいんだぞ?むしろホントのところを教えてほしい」


「マジで普通だって。今まで全然違和感なかったぞ」


「そっか、わかった。ありがとな」


「おう」


じゃあ、大丈夫なのか・・・

ただ2人の名前ちゃんといえなかった疑問は残るな。その辺だけ日本語脳が悪さしたんだろうか。


まあ、他の発音がおかしくないのは良かったな。

リックに確認が取れてホッとしていると、


「リック、シン、俺たちはそろそろ行くぜ」


とネツァリ。どうやら帰るようだ。


「なんだ、飲んでいかないのか?」


「ああ、移動が長かったからな、今日はもう休むぜ」


「そうか、そんな時に変なことで時間とって悪かったな」


「気にすんな、今度は飲もうぜ、またな」


「おう、またな」


その後少し飲んで俺とリックも解散した。


ちなみに「ねちゃり」の時、リックは俺が終わったと思ったらしい。


終わったってなんだよ。死かな?


まあ、俺もあの時の空気は忘れられない。


あそこからよく円満に収まったものだ。


こんなのも『雨降って地固まる』と言っていいのだろうか。



作者のモチベーションになりますのでいいね、お気に入り登録、感想など、よろしくお願いします。


カクヨムでも連載中の作品になります。

https://kakuyomu.jp/works/16818093080286722080

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