第27話 おっさん、色々聞かれる
なんだコイツと思っていると名刺を出してきた。
「こういうものです」
読読新聞のスポーツ担当の記者さんだった。
「はあ」
生返事を返してみる。
「それで、今日のレース内容なんですが、」
なんか話し始めたぞ。良いと言った覚えはないんだが。
「良いと言った覚えはないんだが」
思ったことをそのまま口にしてしまった。
そんなことをしているうちにもう数人、集まってきた。
毎毎新聞のスポーツ部
ヘラヘラ動画の取材部
首都新聞のスポーツ課
朝朝新聞のスポーツ部
・・・
・・
ダルそうだったので、脳内でAIを呼ぶと近くに居たのか、すぐ来てくれた。
「ゴメン、聞いといて」
と言って俺は帰ろうとする。
「ちょ、ちょっと待ってください」
「お願いします、取材を」
「今日のレースについて一言!」
マジでダルいが取材対応で嫌な奴ってのもやっておくか。
「っせーなぁ、分かったから、ちょっとまってろ。
これでも会社の代表だから、変なこと書かれっとたまんねーんだわ。
目的と用途、そいつに伝えといて。名刺も。
あと人増えたから場所も何とかして」
と、だるそうに対応するが、内心では言ってみたい言葉「っせーなぁ」を言えたことに満足していた。
舌打ちが足りない?何のことだ?
場所はすぐに用意された。
なんでも、こういった事は結構あるらしく、何ヶ所か取材できる場所は用意してあるそうだ。
だいたいは上位入賞者や実績ある五輪候補者とかが使うらしいが。
準備できたとのことで行ってみると、なんか記者は倍くらいに増えており、それこそ記者会見のようなというかまさにそれの光景だった。
えぇ。
結構マジで引いてしまった。
まあ、それだけ注目されるようなことをしてしまったってことか。
ま、死ぬわけでもなし、始めるか。
俺は記者たちの机を挟んで反対側の椅子に座ると会見?を始めた。
進行はAIがやってくれるらしい。
どうでもいいがこいつ人前に出してよかったかな。まあ良いか。
最悪戸籍も作れるしな。
そして最初の質問。
挙手でAIに当てられた記者が所属と氏名を言い質問を始める。
「転倒の際に負った怪我の具合は大丈夫でしょうか?」
「別n・・・特に」
「今大会の結果が棄権という結果に終わりましたがどのように受け止めていますか?」
「特に」
「大会出場の目的は?」
「特に」
「仮装のコンセプトは?」
「特に」
「カメラや観客への挑発するような行為について問題があったというお考えはありますか?」
「猛省してまーす」
「そういった態度での取材対応されますと炎上と言うか、社会的に非難される恐れがありますが・・・」
両手を耳に当ててよく聞こえないのポーズをする。
「「「「・・・」」」」
「・・・」
「マスター、あまり記者の方々をからかうのはよくないかと・・・」
そろそろ限界かといったところでAIがそんなふうに諌めてくる。というかそんな感じで言ってくれと念じた。
ってかマスター言うなよ。
「・・・まあ、そうだな。
改めて、伊座間だ。
順番に答えてやる。
まず怪我だが、右手だな。転けたときに突いてな。すげー痛かったんだが、もうなんともねーな。
次、棄権についてだが、「受け止め」って言われてもな。悪いが何を聞きたいのか分かんねー。
んで、出場目的か。会社の宣伝と気分転換だな。割合で言うと気分転換8割だな。会社の製品開発が大変でなぁ。
でもすげー電池作れたんだよ。宣伝していい?従来の1.5倍だ。市場に出てるレベルと比べると倍近いかもな。すげーだろ。スマホが軽くなるぞー、あるいは電池が倍持つようになるぞー。気になる奴は伊座間製作所にメールしろ。あ、HPに連絡フォームがあったか。そっから頼む。
次は仮装のコンセプトか。俺高校行ってねーからな。ってか中学も行ってねーんだけどよ。だから憧れ?みたいな。
たまに学校来たヤンキーが体育の授業で無双するってイメージだ。まじめ君たち涙目。みてーな?
あ、まだ仮装続けてっからな。
終わったらちゃんと敬語使えっから。そこんとこヨロシク。
次なんだっけ?ああ、挑発かー。やりすぎだったか?仮装の範疇だと思ってたんだけどアレだ、真ん中の指立てなかっただろ?さすがに。気ぃ使ったんだよ。これだけココだけの話にしてくんねーかな?
あー、最初の給水所のスタッフさんにはいちゃもんつけちゃったなー。アレってどう映ってたかな?」
「やりとりは流れてませんが、いちゃもんつけてた情報は解説まで流れてきて読み上げられてます。
スタッフの皆さんには私の方から仮装の一環であることを説明の上菓子折りを納めております。
ご納得いただけない場合は会社まで連絡いただけるようお伝えしています」
と、AIが補足をくれた。
「だそうだ。
そんなとこか。他には?」
「すいません、棄権についてあいまいな質問をして申し訳ありません。
改めて、世界記録の更新が目前だったことは聞き及んでると思うんですが、棄権してしまったことへの悔いなどはありますか?」
「悔いとかはねーな、別に記録も欲しくねーし。また走ればいいし、っつってももう走んねーだろうけど。
ただ、棄権っつったときスタッフのにーちゃんが、結構確認してくれたんだよ。
まだ世界新でゴールできそうだってのもそこで教えてもらったんだが。
まあ1回棄権っつっちゃったし、それ聞いてやっぱっつって取り消すのもダセーだろ?
だからマジで悔いとかはねーな。
はい、他」
「走行中の態度や足をけがしたわけでもないのに直前であっさりと棄権してしまう態度が真面目に走っている選手をバカにしているとの声もありますが?」
「・・・」
「あの?」
「ん?まだ質問の途中だろ?「ありますが」、なんだよ?続き言えよ」
「えっと、ありますが、えっと、どう思いますか?」
「なんとも思わねーな。
つーか、「声もある」って誰が言ってんだ?」
「いや、えっと視聴者やSNS等で・・・」
「そうか。なんかダセーな。
自分の考えとか自分の言葉で質問しろよ。
要は「お前の態度は真面目にやってる選手を馬鹿にしている。申し訳ないと思わないのか?」ってことだろ?
ききづれーことを居るんだかわからねー視聴者とかネット住民に言わせて責任を曖昧にしてるようにしか聞こえねー。記者やめろよ。
他は?」
「先ほど、もう走らないだろうとの発言がありましたが、今後マラソン大会に出場するつもりは無いということでしょうか?」
「無いな。
次」
「はい、今回の伊座間選手の一連の走り、というか行動がどうもしっくりこないというかですね、えーとこれだと回りくどいですね。
えー、わざと棄権したということはないですか?」
「!
ふっふふ、直球で来たな。ずいぶん失礼な質問だぞ。分かってるか?えーと、ヘラヘラ動画の後藤さんか。いいぞ回答してやろう。
ただし、この質問の答え、他の会社は記事にするの禁止だ。人の功で飯食うようなプライドねぇことすんなよ。
といっても『いい質問だ』としか回答できねーけどな、十分だろ。
しかしその質問が出てくるってことはお前、相当性格悪いな。
覚えておくよ、ヘラヘラ動画の後藤さん。
あとアホな質問した日日スポーツの安田さんも」
その後いくつか質問に答えて、会見?はお開きとなった。
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カクヨムでも連載中の作品になります。
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