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第24話 おっさん、マラソンで無双する!?

ちなみに給水所の件はこんな感じに中継されていた。


「さっきのリーゼントの彼は給水所で止まってしまいましたけど大丈夫なんでしょうか。

給水していないようですが・・・」


「やはりここまでの全力疾走が(たた)ったんじゃないでしょうか。ここまであのペースでこれたのが奇跡みたいなもんですよ。

あ、二位集団が追いついてきましたね。

無事給水できたようですね、これでまた先頭集団となりました」


「あ、どうやら彼も給水するようですね。ただその場で凄い飲んでます。

・・・・・・。

えっと、合計4本くらい飲みましたかね、走れるんでしょうか。

あ、走り出しました!またすごいペースですが大丈夫なんでしょうか」


「あ、なんかつらそうですよ彼。路肩に寄って行きま・・・ちょっ!?」


俺の嘔吐シーンは一瞬だが中継されてしまった。


よしよし。


俺の行動はアホで情けなくてどうしようもない方がいいからな。


そんなシーン流しちゃって怒られちゃうかもしれない人にはちょっと同情するが。


「えー情報が入ってきました。

リーゼントの彼ですが、給水所でいちゃもんを付けていたそうです」


「いちゃもん・・・ですか」


「えぇ、なんでも、給水所自体を知らなかった様子で、飲んだら失格じゃないのか?罠じゃないのか?毒なんだろ?と」


「・・・」


「その後二位集団が給水する様子を見て、そして無料(ただ)で飲めることを確認すると喜んで飲んでいたそうです」


「それで4本も・・・そりゃあ吐きますよね・・・ハッ!失礼しました」


「ですがまたすごい勢いで先頭集団を追い上げていますよ。

どんなスタミナしてるんでしょうか。もう視界に捕らえています」


「ですが、まだ10キロを通過したところです。

このペースではやはり持たないでしょう」


「あ、ですがまた先頭集団を抜きそうですよ。

彼がまた先頭に立ちました。

あ、やはりカメラに向かってメンチ切ってますね。

やらないと気がすまないんでしょうか。走りながらベロ出すのなんて疲れると思うんですが・・・」


といった感じだ。さて、ここからどうするかは完全にノープランだ。


給水所でやったこともただの思いつきだけど。


計画と言うならあっさり優勝して世界新を出すってところだが。


それも面白くない気がしてきた。


もう、今の繰り返しでいくか。

給水所で、水飲んだら全力ダッシュして失速ってやつを。


失速と言っても世界新出せるレベルだが。


当然カメラにもメンチ切り続ける。


そんな感じで20キロを過ぎた頃、テレビの方では、


「・・・大槻さん(解説の人)、リーゼントの彼、ちょっとすごくないですか?

今の20キロの通過タイム、今期のマラソン記録に迫る勢いですよ」


「そうですね、沼川さん(実況の人)。あの走り方でどうしてこの記録が出せるか不思議なんですが。

全力疾走して疲れたらペース落として、少し回復したらまた全力疾走の繰り返しですよ。

給水所のあとのダッシュも凄まじいです。

相変わらずカメラ挑発してますし。

マラソンと言うか、長距離走の常識を逸脱しています。

間違いなく長距離走の経験がある人の走り方ではないです」


「えー、今入ってきた情報ですと、彼は伊座間真(いざま しん)選手。高校は記載がないですね。中学校は都内の公立校を卒業とあります。

大会出場の記録はないようです。

っ!

現在は伊座間製作所の代表取締役とあります。

彼社長なんですね」


「会社の宣伝目的で出場したのでしょうか。

確かに目立っていますし、こうして紹介もされましたけど。

ただあの格好やカメラを挑発したりする行為は会社として大丈夫なんでしょうか。

まあ仮装で大会を盛り上げるための演出であると好意的にも捉えることも出来ますが」


なんて言われていた。


流石にここまでトップ走ってりゃ注目もされるか。


微妙に中学を都内の公立校と言ってくれたのは助かる。


たった3年前だから先生や卒業生がそんな奴いたか?ってなってしまう。


と言っても3年間不登校だったことにしているし、3年前の校長、教頭が在任じゃない中学を選んでいるが。


まあ、それはいい。


ほんとにどうしようか。


―――

――


―30キロ地点―


「・・・大槻さん(解説の人)、彼本当にこのまま行っちゃうんじゃないでしょうか。

タイムもすでに世界記録を大幅に更新するペースです」


「そうですね。ただ私も選手時代から現在まで長距離走に携わっていますが、まだ信じられません、というか信じたくないですね。

あの走り方を認めてしまったら私の長距離走人生を否定されちゃう気がして・・・」


「それだけ驚異的な走りということでしょうか。

ただ私の目には彼の元々の身体能力が凄まじく、後は根性でどうにかしているように見えます。

なので彼がしっかり、それこそ大槻さんのような方の指導を受けて技術を身に付けたらとんでもない選手になるんじゃないでしょうか」


なんか自信無くしかけた解説者を実況がフォローしてるぞ・・・


まあそろそろ余裕ない感じで走るか。


カメラの挑発もやめて、顔色もちょっと悪くする。徐々に汗だくにもしておこう。


といっても全力で走ったりペース落としたりの繰り返しをやめて、一定のペースで走るだけだが。


これまでは平均すると世界新をはるかに上回るペース、ここからは世界新よりちょっと遅いペースって感じだ。


ここまでの貯金があるから、これで十分世界新は出せる。


現在の世界記録を5分ほど更新する見込みだ。


―――

――


―40キロ地点―


「ついに40キロ地点通過です。

30キロを過ぎたあたりから、一時(いっとき)よりも少しペースは落ちてますが、それでもこのまま行きますと、マラソンの世界記録を5分ほど更新するペースです。

これはほぼ間違いないんじゃないでしょうか。」


「そうですね、確かにその辺りから無茶なダッシュや無駄な動き(カメラへの挑発)がなくなり、ペースは落ちましたが一定の速度で走れていますね」


「はい。

ただ、顔色がものすごく悪くなっており、表情もかなり苦しそうです。

ちょっとその辺り、彼の体調の方も心配になってきているところですが」


「そうですね。

最初のあの走り方ではいつ倒れてもおかしくないというのが正直なところなんですが、ここ10キロほどはペースも一定ですし、なんとか頑張ってほしいですね」


なんか応援されてきているぞ。


最後はしんどそうにしながらも世界新達成みたいに考えてたが、こうなってくると俺の天邪鬼な気持ちがむくむく膨らんできてしまう。


さて、どうやって終わらせようかな。



作者のモチベーションになりますのでいいね、お気に入り登録、感想など、よろしくお願いします。


カクヨムでも連載中の作品になります。

https://kakuyomu.jp/works/16818093080286722080

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