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第13話 おっさん、異世界で冒険者になる

―翌朝―



アイリスさんの宿屋で目を覚ましたオレは真っ先にレベルアップ後の状況を把握した。


レベルアップの諸々から、AIが入ったオレの分身とヤったことまで、鮮明に、体感したレベルで記憶にある。


出勤して仕事して帰宅して家族と団らんした記憶もしっかりある。


改めて分身スキル(並列思考もか)のすごさを実感している。


この辺の(くだり)はもういいか。


異世界の俺として、ちゃんと冒険者をやることにする。


宿の食事を食べ終わるとちょうどリックたちとの約束の時間が近づいていたため、支度をして冒険者ギルドに向かうことにした。


ちなみに、異世界(こっち)の時間は都合のいいことに日本と時差なく1日24時間、1年365日らしい。


AI曰く、これは異世界(こっち)の太陽にあたる恒星と地球にあたる惑星が距離もサイズも一緒だかららしい。


昨日飛ばした分身の鳥が集めた星の位置などの情報や、AIが学習した地球(むこう)の宇宙科学の知識を総合して導き出しており、ほぼ間違いないとのことだ。


さすがに異世界(こっち)の時計が24時間だったり、時計が普及しているわけではない。


この街では日の出の鐘(だいたい6時)、2の鐘(だいたい9時)、昼の鐘(正午)、4の鐘(だいたい3時)とだいたい3時間置きに夕方6時まで鐘がなる。


だが、地球基準の時間の間隔で過ごすことはできるようだ。


リックたちとの約束は2の鐘のあとにギルド前だが、言語理解先生は朝の9時過ぎと翻訳してくれている。


俺が24時間基準の何時と誰かに言ったつもりの場合も言語理解先生が何とかしてくれている。


要は細けぇことはいいんだよってことらしい。


などと考えながら歩いているとギルド前に着き、ちょうど9時の鐘が聴こえてきた。


リックたちはまだ来ていないようなので、ギルド前が見通せる場所に広場があったためそこのベンチで待たせてもらうことにした。


少し待つと後ろから


「わるい、待たせたか?」


と声をかけられた。


振り返るとすぐ後ろにリックと少し離れて女子2人が歩いてくるのが見える。

俺を見つけて駆け足できてくれたようだ。


リックいいやつか。


「いや、俺も丁度来たところだ」


リックに追いついてきた2人にも挨拶をして、早速ギルドに入っていく。



―おっさん冒険者登録中―



結論。テンプレ展開などなく冒険者になることができた。


変な水晶を触らされてめっちゃ輝いてしまったり、なんなら壊したり、スキンヘッドで世紀末な先輩に絡まれることもなく、受付嬢が美人で可愛い巨乳の猫耳お姉さんなんてこともなかった。


そう、美人で可愛い巨乳の猫耳お姉さんはいなかったのだ。


美人で可愛い巨乳の猫耳お姉さんに受付してもらえるなら、世紀末な先輩に絡まれることなんて何でもないことだと思い知ってしまった。


まあ、絡まれたからといって受付が美人で可愛い巨乳の猫耳お姉さんになるわけでもないから警戒するに越したことはなかったわけだが。


異世界ものの小説なんかはそういったイベントがないと盛り上がらないもんな。


俺(読者)もどうせテンプレだろと思いつつも、たしかにそんな展開を期待してた記憶はある。


今はネタにされたり、なんなら害悪扱いの「俺、何かやっちゃいました?」系の展開も最初はワクワクして読んでたし好きだったなぁ。


おかげで俺が今そうならないようなムーブを心がけることができているんだから感謝しないとな。


それでも美人で可愛い巨乳の猫耳お姉さんへの未練は捨てきれないわけだが。


現実は大したイベントは発生しないものなんだと身を以て思い知らされてしまった。


ちょっと落ち込んでいるとポンポンと背中を叩かれた。


見るとセティ(杖の子)だった。


「……………」


無言。

ただ、彼女の表情を見るとなんとなくだがおれを元気づけようとしているのが伝わってきた。


「わるい、ちょっと期待してたことがなくてな、大したことはないぞ、ありがとう」


言うとセティの表情がすこし、ほんのすこしだがやわらかくなった気がした。


見るとリックとフェイ(弓の子)はすこし驚いた様子だった。


後でリックに聞いたら笑っていたらしい。

相当珍しいとのことだが、俺はそんなに落ち込んで見えたのだろうか?


というかリックめ、すでにパーティに無口な美少女キャラを抱えてるとは。

もしかして主人公か?

いいやつだし。


まあいい歳のおっさんは今さら主人公やるつもりもないんで、羨ましくなんて全然ない。

ないったらない。


チートバレしないようにそこそこ楽しむぐらいでいいのだ。


とりあえず、無事(美人で可愛い巨乳の猫耳お姉さんはいなかったが)冒険者登録も終わったところで、なんだかんだもう昼近くになっていたので、ついてきてもらったお礼として、リックたちに昼メシをおごることにした。


「リック、礼をしたいんだが、どっかで飯でもおごらせてくれ」


「別にこれくらいのことで礼なんていらないぞ。

なあ?」


女子二人もウンウン頷いている。


パーティぐるみでいい奴らか。


「でも3人の時間を半日ももらってしまったからな、なんか礼をしたいんだが」


「別に今日は休みだったからな、気にしなくていいぞ」


このあと何度か遠慮されたが行きつけの店を教えてもらうことを条件に一杯だけおごられてくれることになった。

酒も出てくる店らしい。


リック、マジでいいやつか。


リックに紹介された店は、ギルドから10分くらい歩くが、南門からギルドまでの間にある路地を入って少し行ったところにある小さな店だった。


その路地は飲み屋通りみたいな感じで飲食店が多く、店はその少し奥まったところにあり、安くて美味いとのこと。


実際出てきた酒も料理も美味く、リックたちが行きつけるのも納得の味だった。


ちなみに俺とリックとセティ(杖の子)はエールを飲んでいたが、フェイ(弓の子)は果実水を頼んでいた。


飯を食いながら親睦を深めつつ、冒険者についてあれこれリックたちに聞いたがどれも快く教えてくれた。


それだけで一杯奢る程度じゃぜんぜん足りないほどの借りができてる気がしたので昼は全部奢らせてもらった。


ちなみにここでも俺(俺)が払う、いやリックが、いや私(エールを2杯おかわりしたセティ)がのやり取りが発生し、フェイが言ったときに「どうぞどうぞ」したくなったのは秘密だ。


ちなみに、セティが飲んでるのを少し意外に思ったがもちろん秘密だ。

追加でもう2杯頼んでいたのに驚いたことも当然秘密だ。

顔にも出していない。はずだ。



作者のモチベーションになりますのでいいね、お気に入り登録、感想など、よろしくお願いします。


カクヨムでも連載中の作品になります。

https://kakuyomu.jp/works/16818093080286722080

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