第4章 静穏の森、永遠の夜
その夜、鎧の男がゴブリンを狩りに出た後、
小屋に残された僕とマユは、
お互いを庇い合うかのように抱き合った。
「先生、私たち、この先、どうなるの?」
「わからない。僕だって不安さ、だけど」
春の夜は、まだ寒く、
暖炉の火が、室内を暖めてくれている。
「キスして、先生」
マユにせがまれ、僕は唇を重ねる。
「先生、私のこと好き?」
「当たり前だろう。僕は」
マユが、この腕の中に、いるのなら、
地獄の底に落とされてもいいと思う。
「愛しているよ、マユ」
「先生、私、今、幸せ」
夜の森は静穏だった。ただ小屋の中で、
ギシ、ギシ、ギシ、ギシ。
木製のベッドの軋む音だけが響いている。
「先生は、この世界でも、元気がいいね」
「うん、マユがいれば、どこでも元気さ」
そう囁きあって裸のまま、
毛布に包まった僕たちは、その後、
深い眠りに落ちた。だが夢のなかで僕は、
「この化物があぁぁーっ!」
ナイフでゴブリン刺さした。
そして滅多刺しにすると、血塗れのゴブリンは、
マユの父親に姿を変える。
「う、うあっ」
悪夢に、うなされて目を覚ますと、
眠っていたマユも起きたようだ。
「先生、どうしたの?」
「い、いや何でもない」
僕は、ただ、そう答える。
真夜中、今頃、あの鎧の男は、
ゴブリンを退治しているのだろうか。
「先生、嫌な夢でも、見たの?」
「いったい何が夢なのだろうか」
人生そのものが悪夢のようだった。
高校教師の僕が、生徒と恋愛して、
その父親を殺害したのだから。
「大丈夫、ここまでは警察も追って来ないよ」
マユの言葉には、
弱い僕の心を守ろうとする優しさがある。
そして、マユは言葉を続けた。
「朝が来ないで、この夜が永遠に続けばいいのに」




