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追憶の章 モノローグ

 それからの僕は、毎日を泣いて過ごしていた。

 思い出すのは、この一年のマユとの想出。


「そう、たった一年間なんだ」


 僕とマユの時間は、あまりにも濃密で、

 まるで、悪い夢のように時が流れる。

 一度は心中した二人が、なぜか、

 この異世界に転生してしまって、


「今度はマユが、一人で死んでしまった」


 この異世界に残された、


「僕の人生に何の意味があるのだろうか?」


 人はだれもが罪人で、

 贖罪のために生きている。


「僕はマユの父親を殺した」


 それは愛ゆえの罪だ。

 その罪を背負った僕が、まだ生きていて、

 マユだけが、なぜ、死んでしまったのだろう?


「すべての世界は残酷な楽園だ」


 僕とマユは、二人だけの楽園を生きていた。

 僅か一年間の失楽園だったが、

 すべては儚い、一瞬の白昼夢のようだ。

 

「それでも僕は、この異世界に転生したのだから」


 二人で、

 久遠の時を、

 愛し合って生きたかった。


「だが、それは、今は叶わぬ願なのだ」


 あの日、春の木漏れ日のなかで出会ったマユは、


「春の木漏れ日なかで死んだ」


 彼女の優しさに依存して生きていた僕は、

 本当に弱い存在なのだろう。


「そうだ、これから僕も死ねばいいんだ」


 と、ポケットからナイフを取り出す。

 その刃を手首に当てた時、


「先生、死なないで」


 と、マユの声が聴こえた。

 これは幻聴なのだろう。


「僕たちは、一度、崖から身を投げているんだ」


 今さら、躊躇(ためら)うことはない。


「この異世界で、私の分まで生きて、先生」


 本当にマユの声なのだろうか?


「僕は、何のために生きればいいんだ」


 マユに問いかけたが、答えはない。

 たぶん僕は、この異世界で、

 

「愛の罪を償うために、生かされているのだろう」

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