最終章 僕たちの失敗
このオーガとの戦いは激戦となったが、
結果は無事に貴族の娘を救い出ことができた。
「皆様、ありがとうございました」
と、娘の父親からは、
多額の報酬の支払いがあったようだ。
だがマユは、オーガに棍棒で頭部を殴られ、
重傷を負う。
「大丈夫か、マユ」
僕はマユを家に連れ帰り、必死に看病した。
鎧の男も、町一番の名医を連れ来たが、
それでも、マユの容態は日に日に悪くなる。
「先生、ごめんなさい」
ベッドに寝たままのマユは、
弱々しい声を漏らした。
僕は、そのマユの手を握り言葉を返す。
「マユ、謝ることはないよ」
この時、僕はマユとの出会いを思い出した。
それは一年前の春の日のことだ。
新しいクラスで、マユは笑顔を見せる。
「よろしくね。イケメンの先生」
それから二人は禁断の恋愛関係になり、
「僕はマユの父親を殺した」
その理由は、
「マユと父親が不適切な関係で、あったからだ」
僕は、その関係を知った時、
マユを父親から引き離すために、
彼女との駆け落ちを決意するのだが、
「一番の問題は、マユも父親を愛していたことだ」
だから、
マユを、この倒錯した愛から、解放すためには、
僕は、父親を殺害するしかなかった。
そして、
「ナイフで滅多刺しにして、マユの父親を殺す」
その後、僕はマユを連れて地方の田舎町に、
逃れたのだが、
警察は、殺人犯の僕を執拗に追って来た。
「もう、逃げられない」
と、考えた僕は、マユを道連れに、
「崖から身を投げて、心中した」
こうして死んだはずの僕とマユだが、なぜか、
この異世界に転生してしまったのだ。
「これで、お父さんのところへ行ける」
最期にマユは本音を漏らし、
安らかな永遠の眠りに堕ちた。