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リヒト戦記~辺境の滅んだ小国の再興記  作者: スタジオぞうさん


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80話 皇女の決断

帝国歴226年3月中旬 南部モルビアン公領 皇女カトリーヌ

 リヒト殿からの使者として再び訪れたシルティハイム殿は、良い知らせと悪い知らせを持ってきましたわ。

 良い知らせは、味方だったはずなのに中立になった貴族たちの妻女が皇子派に捉えられていて、リヒト殿が救出できるかもしれないこと。

 悪い知らせは、皇子派諸侯が軍船を海から川に移して、南部の戦いに投入していようとしていること。

 南部には大河があるため、大きな船もかなり上流までのぼってこれるのです。

 そのうえで、リヒト殿は一つの提案をしてきました。

 私は部屋の外に出て、空を見上げました。

 漂う雲を見ながら、考えをまとめようとします。子どもの頃から、難しいことを考えるときの私の習慣です。

 しばらくして、私の考えは決まりましたわ。

 モルビアン公爵、アントルム侯爵、ノルトライン伯爵を呼んで、私は自らの考えを伝えました。

 「何と、シューネヴァルトに帝国からの独立を認めるとおっしゃいますか。」

 リヒト殿の提案とは、救援に向かうのでシューネヴァルトの独立を認めてほしいというものでした。

 「ええ、このままでは兄上の軍を押し返せません。それに陸路は守りを固めていますが、船を使って川から上陸されては守り切れないでしょう。リヒト殿は、帝国に反感を持つ獣人や亜人を説得して南部まで援軍に来るために独立を認めてほしいと提案してきました。味方のはずが中立になった貴族たちの妻女が皇子派に人質に取られていることを掴んだので、援軍に来る際には、その人質たちの解放もしてくれるとのことですの。シューネヴァルトの援軍に加えて中立になっていた者たちも来てくれれば、兄上の軍を押し返せるでしょう。」

 「それはそうかもしれませんが。」

 納得していない様子のモルビアン公に対し、私はさらに言葉を重ねます。

 「もともとシューネヴァルトの帝国併合の経緯を調べて、古代遺跡を手に入れようとした兄上たちが騙し討ちにしたことを知ってからは、いつか独立を認めたいと思っていたのです。

 それに、帝国で内戦が起きたこの機に介入しようと、遊牧民の国や宗教国家が辺境伯に後ろ盾になるから独立するよう働きかけたようですわ。辺境伯は誘いを断っていますが、このままでは領民たちから独立を望む声は強まるでしょう。

 私のほうから独立を認め、そのうえで同盟関係を結んだほうが得策です。」

 「そうでしたか。確かに外国の干渉は懸念しておりましたが。」 

 「ブレイザー伯の軍をリヒト殿が壊滅させてくれましたのに、なお兄の軍は魔法師を多く抱えていて強く、私たちはむしろ押されています。このままずるずると内戦を続ければ、帝国は弱体化しますわ。

 父上が征服した土地には独立運動がくすぶっていて、兄上の帝国人至上主義への反発から動きは強まっていました。そうしたところにも外国勢力の手は及んでいると考えるべきでしょう。

 外国の介入を許せば、民に多くの犠牲が出ますわ。東の遊牧民たちが占領地で何をするかは皆さんも知ってのとおりですから、その土地の民は酷い目に遭うでしょう。それは皇族として避けなければならないと思っています。

 シューネヴァルトの独立を認め、内戦を早く終結させることが重要なのです。

 独立を認める際には、かつて兄上とブレイザー伯が暗躍し、古代魔法の知識を得るためにシューネヴァルト王家を騙し討ちにしたことを公表しましょう。帝国騎士団に所属すべき古代魔法師を隠匿していたこととあわせ、兄上の非道な行いを公表すれば、帝国騎士団や中立の貴族たちも兄を見限る可能性があります。」

 「殿下がそこまでお考えであれば、私は従うのみです。」

 アントルム侯は賛成してくれました。

 「レーナからは、リヒト殿は皇女殿下のお考えを領民に広めて、獣人や亜人の帝国への反感を和らげようとしていると聞いています。多種族・多民族の共生という理念は殿下と共有していますし、独立しても我らと共に歩めるものと思います。

 それに、騙し討ちでシューネヴァルト王国を併合したことは、領主をしているときから心苦しく思っておりました。皇子殿下たちのしたことを公表し、彼の地の独立を認めることは帝国の在り様を正道に戻すことにもなります。」

 ノルトライン伯はシューネヴァルトの事情に詳しい者として賛同してくれました。

 「分かりました。私も賛成いたします。」

 最後にモルビアン公も頷いてくれましたわ。

 そして私からリヒト殿に独立を認める際の条件を話しましたら、皆さんは再び驚きましたが、その理由を説明すると、納得してくれましたわ。

 その条件は政略として必要なことですし、私個人にとっても望ましいことです。それに、私だけではなくレーナたちにも悪い話ではないと思うのです。

 私は早速、シューネヴァルトに使者を送ることにしました。


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