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リヒト戦記~辺境の滅んだ小国の再興記  作者: スタジオぞうさん


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66話 苦戦する皇女派

帝国歴225年7月 モルビアン公爵領 領都サン・ブリュー 皇女カトリーヌ

 北部からの攻勢は激しいものでした。

 モルビアン公爵をはじめ南部の諸侯も最善を尽くしてくれていますが、劣勢なのは否めません。

 南部の騎士や兵たちが北部の者たちに劣るわけではありませんわ。

 けれども北部諸侯軍は多くの古代魔法師を擁していました。

 特に火の魔法は強力な攻撃魔法ですので、味方は苦戦を強いられています。

 さらに、帝国の中央に位置する帝都と南部の間に領地を持つ侯爵と伯爵が、味方のはずでしたのに中立を宣言しました。

 そのために北部諸侯軍の侵攻は予想よりも早くなりましたし、戦力は互角のはずが、こちらの方が兵数においても劣ることにもなったのです。

 どうやら兄上は、最初から戦争で片を付けるつもりで準備していたようです。

 しかし、同じ帝国民同士で戦うのは愚かなことですわ。

 帝国は強国とはいえ、周辺に敵がいないわけではありません。

 もし私が降伏したとしても、国内に禍根は残ります。

 やはり簡単に内戦という選択肢をとる兄上に帝国を委ねるわけにはいきません。

 公爵たちに止められても、私は前線に出て騎士や兵士を励まします。

 何とか持ちこたえていれば、戦況が変わることもあると信じて。


帝都の南方 皇子シャルル

 予定どおり妹の派閥の者どもを押している。

 彼らはずるずる下がるしかなく、もうじき南部諸侯の中心であるモルビアン公爵の領地に攻め入ることになる。

 前線では古代魔法師が活躍しており、特に火の魔法は強力だ。

 魔力の限界があるために一日に何発も撃つことはできないが、戦況を変える力がある。

 やはり古代魔法の力は素晴らしいな。


 十二年前に古代文明の遺跡の発掘に立ち会ったところ、ちょうど古代魔法師の訓練方法について大きな発見があった。

 発掘を担当していたブレイザー伯は「これは偶然とは考えられませぬ。シャルル殿下は帝国中興の祖となるべき運命を持っておられるのです」と言ってきた。

 そのような発言を簡単に信じるほど愚かではないつもりだ。

 だが、当時、十六歳になった私は成人したにも関わらず立太子してくれない父に不信感を抱いていた。

 父が寵愛していた側妃の生んだ弟が十歳になり、その弟を皇太子にしようとしているのではないかと周囲は噂をしていたのだ。

 母は正妃であり、北部の有力な公爵家であるイル・レンヌ家の出身である。

 それまで自分が次の皇帝になることに疑問を持っていなかった私は大きなショックを受けていた。

 ブレイザー伯は「もしも皇帝陛下が弟君を皇帝にしようとするなら、私は殿下のために戦います。正妻の子である殿下を差し置いて強引に弟君を皇帝にしようとすれば、反発する帝国貴族もきっと多いでしょう。その際、帝国騎士団に対抗できる古代魔法師の部隊を擁していれば、勝ち馬に乗ろうとする貴族をも取り込めます。そのために、この発見を皇帝陛下に知らせるべきではありません」と言ってきた。

 皇帝への叛意を示すリスクのある発言だ。優秀で野心家のブレイザーは、私の側近になって栄達するための賭けに出たのだろう。

 そして、将来に不安を感じていた私はブレイザー伯の言に乗った。

 母の弟であるイル・レンヌ公爵は、最初は私を止めようとしたが、最後には共犯者になってくれた。

 古代魔法師を独自に養成することで私は強大な戦力を密かに得た。その自信と父への不信感から、父に反抗的な態度を取ることも増えたように思う。

 やがて寵姫の生んだ弟は流行り病で死んだが、それでも私が皇太子になることはなかった。

 父は最初から私を後継者にする気が無かったのか、それとも私が反抗的だったから皇太子にしなかったのかは分からない。

 今となってはどちらでも良い。

 私は実力をもって帝国皇帝となる。


 このまま南部まで攻め込もうかというところで、ブレイザー伯が相談に来た。

 「味方の勢いは強く、このまま南部に攻め入ることは可能かと存じます。しかし、南部に入れば皇女派諸侯の地元であり、土地勘のある彼らも今よりは抵抗してくると思われます。そうなりますと問題になるのは西部の状況です。」

 西部ではシューネヴァルト辺境伯の軍勢がカミン伯らの軍を破り、カミン伯爵領の領都バデノッホを占領しているという報告を受けていた。

 「我らが南部で戦っている間に西部をシューネヴァルト辺境伯が平らげて、南部諸侯と挟撃されると厄介です。別動隊を率いてシューネヴァルト辺境伯を討つことをお許しいただけないでしょうか。」

 ブレイザー伯は内務卿代理の辞職に追い込まれたことで、シューネヴァルト辺境伯に恨みを持っていたな。

 「辺境伯の軍勢は5千程度でしょうから、アーレン子爵の騎士団1500の援兵があるとしても、私が1万ほどの軍を率いて行き、西部の皇子派諸侯の残党を糾合すれば、兵力は約二倍になります。」

 ブレイザー伯が私怨にかられて判断を間違える可能性はあるが、もともと冷静な判断のできる男だ。

 確かに南部を攻めている間に西部をシューネヴァルトに獲られるのは面白くない。

 「良いだろう、ブレイザー。では西部を平定してくるが良い。兵は1万2千連れていくと良い。」

 兵を預けると決めたなら、けちるのは誤りだろう。

 圧倒的な兵力で早く片を付けさせるほうが良い。

 皇女派の兵力は帝都南方の侯爵と伯爵の動きを封じたことで約4万程度しかいない。

こちらの兵力は5万2千ほどいる。古代魔法師がいることを考えれば、同数になっても優勢を維持できるだろう。


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