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リヒト戦記~辺境の滅んだ小国の再興記  作者: スタジオぞうさん


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59話 皇帝の危篤

帝国歴225年3月 シューネヴァルト辺境伯政庁 リヒト・フォン・シューネヴァルト


 帝国歴225年は何事もなく明けた。

 海賊の来襲以来、大きな紛争もない。この冬は旧男爵領も飢えの心配はなかった。シューネヴァルトは領内の食料は自給できるようになっている。

 だがアダムズ護民官と相談して、念のためにステアノット伯爵領から麦を購入して備蓄している。ステアノット伯爵が皇女派に入ったお陰で安く食料を買えるようになったのはありがたい。

 南方諸島群王国との交易は盛んになり、胡椒などの香辛料やドライフルーツを輸入して帝国各地に高値で転売することで大きな利益が出るようになった。

 相変わらず商談ではジョバンニが活躍しているようだ。そのことをコトルリ殿に報告すると「まだまだやけどな」と言いながら嬉しそうにしていた。


 このまま平穏な日が続くと良いなと思っていたが、春を迎えたある日、不穏な情報がもたらされた。

 執務室で書類仕事をした後、レーナと妹と一緒に紅茶を飲んで寛いでいると、妹の表情が厳しくなり、少し遅れてレーナも警戒態勢になった。

 どうしたのかと思ったら、猫人の諜報隊長のシャッテンが姿を現した。

 「突然お邪魔して恐縮です。」

 「いや、緊急の要件ならいつでも知らせてほしいと頼んであるんだから問題ない。それで、何があった?」

 「どうやら帝国皇帝は危篤状態になったようです。先ほど帝都に忍ばせている者から連絡がありました。」

 それは確かに重要な情報だ。

 老齢の皇帝は健康に不安があり、いつかはこの日が来るとは思っていた。

 問題は、皇帝が後継者を定めていないことだ。

 最近は皇子派貴族に失敗が多かったことも影響していて、皇女派貴族は増えつつあった。

 まだ皇子派が優勢ではあるが、ほぼ帝国貴族は二分されている。

 皇帝が崩御するとなれば、帝国は大きく揺れるだろう。

 「帝都の状態はどうなっているの?」

 エルナの問いかけにシャッテンは答えた。

 「はい。皇子と皇女は急いで帝都に向かっています。両派の重鎮の貴族も帝都に集まりつつあります。」

 「そうか、僕も帝都に行く必要があるのかな。」

 「どうだろう。辺境伯は帝国の端にあって外敵に備える役目がある。おそらく皇女殿下はアルを帝都に呼ばないだろう。」

 レーナの言葉に僕は頷いた。

 「そうだね。そして僕が本当に備えるのは帝国の外じゃないね。」

 「ああ、皇帝陛下の葬儀が終われば皇女派と皇子派は緊張状態になる可能性が高い。あるいは両者で話し会い、皇子殿下が皇女殿下の意見もある程度で聞き入れれば皇子殿下が次の皇帝になることで合意できるかもしれないが。おそらくそうはならないだろう。」

 「そうすると、西部の皇子派貴族の背後から牽制することが僕の役割だね。」


 シャッテンを慰労してから、すぐに外交と軍事を担当する重臣であるトリーア卿とメールス卿、グウィネス、グラットバッハ、シルティカイムを招集した。

 クリスティーナ・シルティカイムは帝国外務省でくすぶっていた女性外交官だ。多くの言語を話す優秀な人だが平民で、帝国外務省は貴族じゃないと出世できないことから、最近シューネヴァルトに移ってきた。

 トリーア卿によると、すぐに仕事を覚えて即戦力として活躍してくれている。

 緊急の会議だと連絡すると、2時間後にはみんな集まってくれた。

 トリーア卿とシルティカイムは長期出張することもあるが、幸いに二人ともグリューネヴァルトにいた。

 改めて諜報部隊長のシャッテンからもたらされた情報を共有した。

 「うーむ、いよいよそのときが来ましたか」とトリーア卿がうなると、「もう少し軍備を増強しておきたかったのですが」とメールス卿は残念そうに言った。

 僕もメールス卿に同感だ。辺境伯になってから、みんなの助けを得て領地の戦力と経済力の増強に努めてきた。それなりに成果は上がってきているが、まだ2年も経っていない。もう少し先だと良かったのだが。

 「確かにシューネヴァルト辺境伯領は成立して2年も経っていない。だが、急速に辺境伯軍は強くなっている。今では帝国騎士団と遜色のない強さだと思う。」

 レーナが辺境伯軍の強さを褒めてくれた。

 帝国騎士であるレーナは本来はシューネヴァルトの重臣会議に出るべき立場ではないが、皇女の腹心という立場もあり、僕ら兄妹とは強い信頼があるので、会議に出てもらっている。

 レーナの言葉にグラットバッハも応じた。

 「ええ、騎士団は日々鍛錬を積んできました。特にグウィネス隊長の率いる狼人の騎士隊は強いですよ。この辺りの貴族の軍なら、たとえ2倍の人数がいても勝てるでしょう。」

 グラットバッハは他人を高く評価できるのが得難い資質だ。グラットバッハに褒められたグウィネスは「貴殿の隊も強いではないか」と言っているが、やはり嬉しそうだ。

 同格の隊長を2人置いたことで心配もあったが、グラットバッハならグウィネスと上手く連携できる。

 「そうだな。騎士団が熱心に鍛錬していることは私も知っている。メールス卿の言うとおり、まだ人数は多いとは言えないが、今でも十分に強い軍になっていることは皆に感謝したい。」

 無いものねだりをしても仕方ない。今の戦力でやれることをするだけだ。



何とか投稿しましたが、仕事も忙しくてストックは残り僅かになりました。

今後、土日と祝日に投稿することにさせて頂きます。

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